世界で一番の哀しみ
陽希がコクりにいって32分。
外の部活の声が教室に響く。
はっきり言ってこんなこと2度目だ。
中学校のときもあったっけ?
そのころは陽希と同じ学校じゃなかったけど、
大の仲良しな子だった。
そのときも、嘘ついたっけ。
結局付き合うことになったらしく、
うちとは疎遠になってた。
「またか……」
また、好きな人もなくして、友達もなくすのか。
はっきり言って自業自得だよね。
ドタドタガラっっっっ!!!
急にドアが開く。
やはり陽希だった。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆず!おおおおOKだって!!!!」
・・・・・・。
起こってしまった2度目が。
本当に起こってしまった。
「ゆずちゃん?」
「っっっっあ!!おめでとう!やったね!」
間があった。
気づかれなきゃいいが……
でも、なんで遼君のことが好きか聞いたんだろう?
そんなに話さないのに。
「それでね、これから一緒に帰ろうってっっっ!」
………早。
遼君も…………。
「や、やったじゃん!!リア充誕生の瞬間だ!」
なに言ってんだろう、うち
めっちゃ哀しいのに、めっちゃ哀しいのに。
でも、でもでもでもでもでもでもでもでも、
うちには、うちも好きなのに!っていう勇気はない
奪う勇気もない。
ただできるのは、笑顔で良かったねって言うこと。
仕方ない。
だって、うちなんかよりお似合いだ。
でも、哀しい。
「じゃ、ごめんね。当分一緒に帰れない。」
笑顔で、そんなこと言わないでよ。
陽希が行ってしまった教室で、
一人、声を殺して泣いていた。