地球破壊爆弾を作った男(ショートショート)
ある博士が、ごく少量で地球を粉々に破壊できる特殊な火薬を偶然にも合成した。
この天啓とも言える発明に、博士は科学的探究心を抑えきれず、その火薬を使った爆弾を製造してしまう。だがすぐに後悔し、助手には「爆弾は、もう完成した。在りかは私しか知らない」と告げた。
数日後から、博士は爆弾を狙う悪の組織につけ狙われる事となる。助手が、悪の組織のスパイだったのだ。また情報をかぎつけた、悪に対抗する国際エージェントらも活動を開始した。
博士は自らが発明した様々な品を駆使して魔の手を逃れてきたが、追っ手を振り切った油断から交通事故に遭ってしまう。
そして命は助かったものの、頭に強い衝撃を受け、爆弾を隠した場所の記憶を失くしてしまった。半信半疑の悪の組織やエージェントたちは、今度は爆弾を探し求める博士を秘密裏に追いかける羽目となる。
だが業を煮やした悪の組織は、博士を捕まえて拷問にかける挙に出た。記憶喪失が、嘘だと判断したためである。悪の組織に爆弾を手に入れられては大変と、エージェントたちは組織のアジトに乗り込んだものの、悪の組織はそれを予想し待ち構えていた。
激しい銃撃戦の末、劣勢に立たされるエージェントたち。
「このまま博士が、拷問に耐えられるとは思えない。博士の記憶喪失が本物であろうとなかろうと、悪の組織に爆弾を渡す事はこの世の地獄を意味してしまう、それを阻止するには……!」
瀕死の傷を負ったエージェントのリーダーが、拷問椅子に座っている博士めがけて何発もの銃弾を撃ち込んだ。
博士が撃たれたため、爆弾は永遠に誰のものでもなくなると思われた瞬間、銃撃のショックで記憶を取り戻した博士が呟く。
「……思い出した。私は爆弾を、自分の体の中に隠したのだ……」
博士の最期の言葉に、驚くエージェントや悪の組織の面々。
だが時すでに遅く、銃弾は博士の体に埋め込まれた地球破壊爆弾のシステムを破壊していた。博士は、あと数十秒で爆発する状況となった事を告げ絶命する。
その言葉を聞き、それまで命のやり取りをしていた者たちは、武器を捨て神に祈ったり、愛する者の名を叫んだ。
束の間の……、わずか数十秒の平和が訪れる。
そして地球は、一発の花火の如く燃え上がり宇宙に消えた。
「神様、これで良かったのですか? あの科学者に、特殊な火薬の知識を授けたのは神様でしょう?」
一部始終を見ていた天使が問う。
「うむ。だがワシは知識を与えただけじゃ。人間がそれを上手く使い、世界を平和へと導くためにな」
神は、その目を伏せながら答えた。
「世界を終わらせる爆弾が、世界を平和に導くのですか?」
神の解せぬ回答に、天使がいぶかしむ。
「あぁ、ワシは人間どもに合わせただけじゃよ。既にあやつらは、星を簡単に滅亡させるだけの兵器を大量に持っていたではないか。
”抑止力”と称してな。
ワシは彼らのために、究極の抑止力を与えようとしただけじゃ」
神はそう言うと、神殿へ向かうために踵を返した。
”……理屈では確かにその通りかも知れないが、神はもしかしてこの結末をわかって、あえて天啓を与えたのでは……”
後に続く天使の脳裏に、ふとそんな考えが浮かんだ。
【終わり】




