表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外の子  作者: 山田太郎
1/3

 金山正夫は大量の睡眠を経た後、洗顔もせずにいきなり外出しようとした。今なら外に出られそうな気がした。ぐずぐずしているとまたすぐに外出する気が失せてしまいそうな気がした。最近はめっきりと出不精になっていた。いつもぐずぐずと家にいて、まったく外出をしない日が多い。

 適当に服をひっつかみ、服を着て、大急ぎで靴を履き、玄関の扉を開けた。外気が顔に吹きかかった。いそいそとドアの鍵をしめ、せこせこと鍵を財布にしまった。そして真っ白な顔つきでうつむいたまま足早に歩き始め、自分のアパートから遠ざかった。

 とにかく近所の人間の誰とも顔を合わせたくない。

 金山正夫は己の禿げ上がった頭髪や汚い身なりを極度に恥じながらコソコソと歩き始めた。夕方の時間帯で、あたりはうっすらと暗くなり始めていた。

 特に行く当てはない。

 とにかく歩いて、外の空気になれることが先決だ。現在借金は百三十万円ほどあった。消費者金融からである。そしてこの九ヶ月ほどはずっと無職である。

 最初の三ヶ月間くらいは求職活動をしていた。職安から失業給付を貰った。ずっとコンピューター関係の勉強を独学でしていた。そしてそういう仕事を求めてその三ヶ月間はほとんど毎日職安に通ったり、面接に行ったりした。

 そして、ことごとく不採用であった。

 面接担当者は彼がコンピューター関係の仕事は未経験であることや、その年齢がもう三十歳を超えている事などを理由に採用を断った。

(実力があれば未経験とか年齢とか関係ない)

 彼はそう考えて、その後すっかり求職活動はやめてしまい、一時はますます熱心にITの勉強をしたものだが、それも長くは続かなかった。

 勉強しても無駄なような気がした。自分は未経験とか年齢とかよりも、むしろ人間性を見られて不採用になったという考えが頭にこびりついていた。

 恐ろしく人間嫌いである。IT系の仕事につこうとしたのも、あまり人間と関わらずマイペースに仕事が出来そうだと思ったからだ。

 あまり人と喋りたくもなかったし、とにかく与えられた仕事を誰からも邪魔されずに黙々とこなす感じにしたい。人と喋らずにすむならば、人の三倍でも平気で頑張れそうな気がした。

 そういう彼の内面の姿がやはりにじみ出る雰囲気として面接官に伝わってしまうのはやむを得ない話である。

 嘘も苦手である。短期間の仕事ばかりの職歴である。職場にて幾たびも口論のようなトラブルを起し、いきなり勝手に退職したりなどもしていた。

(そうだ、ITの勉強うんぬんよりも、人間関係だ。今もこんなにも外が居づらい。今すぐ家に飛んで帰りたい。人の目が気になって仕方ない。自分の姿とか表情が恥ずかしくて仕方ない。もうほんと嫌だ)

 金山正夫は顔をゆがめながらそう考えていた。

 ひたすら歩きに歩いた。あたりはじきに暗くなった。

 顎関節症のような症状にも悩まされていた。喉や顔に不快感がある。首も肩もひどくこっている。そのため、ひっきりなしに鼻すすりや咳払いをしていた。ひどく疲労感もあり、何もする気にならない。

 ここ数ヶ月はほどんど家に引きこもり、酒を飲んで酔っ払い、がぶがぶコーヒーばかりを飲んで、マスターベーションばかりをしていた。

 それ以外の欲望はほとんどない。

 映画を見たいとか、音楽を聴きたいとか、どこかに旅行に行きたいとか、スポーツを楽しみたいとか、何かを食べたいとか、そういう事はほとんど思わない。

 食事はいつも適当で、カップメンやお菓子などが多い。

 引きこもって酔っ払ってマスターベーションばかりをしているため、彼はますます己が恥ずかしくなっていた。自分が人の目には触れてはいけない人間であるように思えた。ただただ汚らしい人間なように思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ