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機械音痴の底辺探索者、配信切り忘れに気づかずに悪名高い探索配信グループのいじめをちからずくで収めたら鬼のようにバズってしまう  作者: マグローK


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第1話 天井ぶち抜き女

「今日も視聴者0人か……。おっと、いけないいけない。ふぅ……。さ、探索を続けていきますよー!」


 是近これちかかもめ、17歳。探索者兼配信者。


 そんな肩書きでやってきて、はや3年。未だチャンネル登録者は0、同時接続数とやらも2桁の数字になった瞬間を見たことがない。

 いや、他の配信では見たことあるよ? でも、私のチャンネルでは見たことがない。


 これは、私の世界がバグっているのか、他の人がバグっているのか……、真剣にそんなことを考えてしまうほど、私のチャンネル、私の配信は伸びていなかった。


「……もしかして、配信向いてないのかな」


 一度と言わず、常日頃から考えていることが自然と口から出てしまう。


 笑顔でいることは得意だ。

 それに、探索だって他のバイトをするより楽しく稼げている。連休中は寝ないで探索するのも苦じゃないくらい。


 でも、配信ばっかりはどうにも上手くいかない。


 特に辞める理由はない。配信はついで。そうやって自分に言い聞かせていてもやっぱり心に重くのしかかってくる。


「あ」


 と、スキルによって視界に表示される配信画面に変化があった。


 視聴者が1人。


:そこ何ランクの何層ですか?


 しかもコメントまでつけてくれた。


 こんなことをしてくれた人は何日ぶりだろうか。


 私は少しだけ髪型を整えてから、配信用ドローンのカメラを見た。

 ここはしっかりと受け答えしなくては。


「は、はい。是近かもめです。ここはBランクダンジョンの深層です。あ、あそこのモンスター見えますかね? ドラゴソルジャーなんですが」


:今さら無名の深層探索者なんていないだろ。嘘乙


「ちょっと待ってくださ、あ」


 視聴者数は0に逆戻り。


 また売り込み失敗。

 

「はああああああ」


 こうして淡い期待は打ち砕かれる。


 いいよね。見ているものを知っている内容だけで判断できたらね。


 今は0という数字が先ほどより冷たく感じられる。一度増えたものが減るというのは、最初から0よりもくるものがある。


「今日の討伐目標は達成したし、今日はここまでにしようかな」


 ダンジョン配信というだけで見られた時代はとうの昔だ。


 配信ブームに乗っかった探索者たちは、今よりスキルが世界に浸透していなかったこともあり、探索だけでなく、配信でも名声を手にしていたという。


 しかし、先天的にスキルを持つ人たちが多くなった現代では、ダンジョンも探索も義務教育で通る道となり、当たり前の日常となってしまった。


 当然、危険であることに変わりないため、探索者としての実力があれば稼げはする。


 だが、そんな中で頭角を表すには、確実に人との差別化が求められる。

 ただ探索ができるだけじゃ埋もれてしまう。

 帰ったら反省会かなぁ。


「それではまた次回の配信でお会いしましょう。おつかもめー」


 笑顔で手を振ってから私はドローンを回収し、携帯用のカバンにしまった。


 探索において不便を感じたことはない。努力もしてきたと思っている。

 それでも、認められるというのは大変なんだと身をもって痛感している。


 世間は、思っている以上に自分に興味がないのだと。


「切り替えよ」


 探索の中で一番のお楽しみ時間だ。


 私は少ししゃがみ込んでからジャンプした。


 某アクションゲームの主人公のように右手を掲げて飛び上がると、面白いように天井がぶち抜けて上層までひとっ飛び。


 飛行するモンスターとの戦闘中にたまたま気づいたTipsだが、配信や動画で紹介してみても誰も見向きをしなかった。


 すれ違った人が、爆音鳴らしながら帰っているところを見たことないだけに、あんまり知ってる人はいない気がするんだけど、みんな知ってるのかな?


 まあ、「合成かよwww」とかコメントがついたのは忘れもしない。合成じゃないっての。


「今日はマイナスモードかな。私としたことが……」


 探索はメンタルだ。フィジカルへの影響が大きい。


 着地もなんだか変なところに出てしまった気がする。入り口までまっすぐ飛び上がれなかったか。


 即帰宅とはいかないが、ダラダラもしていられない。明日も学校だ。


「…………よ」


「ん?」


 人の声らしきものが聞こえた気がして、私は目を凝らしてみた。

 すると、通路の先で数人が何かしているのが見える。

 耳を澄ますと、乾いたような音が響いてきた。


「おや、ケンカかな? それはよくないなぁ」

いつも読んでくださりありがとうございます。


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