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アタシの、本当の、気持ち(33)
「圭子さんは、当時の社長の娘。
すぐに社内でも噂になったわ。
仕事の成功がありながら、
精神的に追い詰められていった俊作さんにとって、
圭子さんの存在は大きかったんでしょうけど。
お父さん、あれで頑固だからね。
しばらく、俊作さんとは絶交状態だったわ。」
「そんなことが・・・」リコさんはそう言って、口をつぐむ。
「でもね、お父さんはよく言っていたのよ。
『オレもあいつも、
家族のために、と思ってしたことなのに、
真逆の方向に行っちまった。
お金なんて、生活できる程度に持っていればいいんだ。
財産なんて、墓まで持っていけるわけではないのに。』
アンタが生まれたのと同じ頃、冴子さんも生まれたと聞いたけど、
『アイツはただでさえ人生を複雑にしているのに、
ますます面倒にしちまった。』
って、嘆いていた。」
そして、母さんは一言言った。
「そして、俊作さんと圭子さんは、あの会社を退職したのよ。」




