アタシの、本当の、気持ち(31)
「でも、当時の社長は、よく社員を見ている人でね、
お父さんがアイディアを提供していると知って、
表彰しようとしたのよ。
それが結果として、いけなかった。」
「なんで? いいことじゃない? 」
「経営者っていうのは、利益の追求をどこまでもしたがるもの。
お父さんと俊作さんの給与を引き上げる代わりにノルマを課して、
どんどんアイディアを実現させようとしたのよ。」
「お父さんの性格じゃ、とても続けるのは無理っぽいわね。」
「案の定、お父さんの方がすぐに音を上げた。
毎日、テキトーに仕事をするようになったわ。
だけど、俊作さんは期待に応えようとした。
その頃は、俊作さんと律子さん、私とお父さんが結婚し、
律子さんと私は家庭に入っちゃったけど、
俊作さんの方は連日残業、
いつ休んでいるのかわからない生活をしていたわ。」
「オヤジの方は? 」
「定時にあがるのは当たり前。
『今日は、スポーツ少年団の指導がある』
って、毎日練習があるわけじゃないのに、
定時であがる理由にしていたわ。
会議がある日もその調子。
営業の他に、教育の仕事もあるのに、
後輩に任せて帰っちゃう。」




