アタシの、本当の、気持ち(26)
土曜日、いつものリコさんがウチに来る日。
ただし、いつものように2階には行かず、
母さんの話を聞くことにした。
もちろん、リコさんのお父さんとウチのオヤジについての話だ。
「だってお父さん、アタシ、リコさんのお母さんの律子さん、
そしてリコさんのお父さんの俊作さん、
みんな同じ、バネ工場の同僚だったんだから。」
えーっ。
「なんでそんな大事なこと、今まで隠してたのよ。」
「だって、訊かれなかったら言わないでしょ、そんなこと。」
「じゃあ、リコさんがウチに来たのは、
デレスケのタケくんの噂を聞いたお母さんの招きじゃなくて・・・」
「そりゃさ、もともとウチに来るように、
吉田さんから言われてたのよ。
タケちゃんとこの方が、ウチに来る前についでにやってもらっただけ。」
「なぜ、そんな回りくどいことを・・・」リコさん、つぶやく。
「吉田さん、もともとわかりにくい人だからねぇ。
一緒に働いていた時にも、無口で、
何考えてるんだか、分からない人だったから。
何も言わなかったけど、リコさんのことを心配してたみたい。
アルバイト料だって、あの人が出していて、
ウチは1円も払っていないよ。」
「ウソでしょ? 」私とリコさん、同時に出た。
「ウソついて、私が得する? 」
そりゃそうだ。




