アタシの、本当の、気持ち(19)
しょうもない記述があったものの、読み進める。
私が高校2年になった7月、
あの『事件』が起きた時の日記だ。
「7月 ×日
信じられないことが起きた。
娘がプールで襲われ、溺死させられそうになった。
シュンとその娘、シュンの顧問弁護士が中心となって、
対応してくれたことに感謝。
本当は、シュンの娘のために、
監視カメラとその運用システムが作られたのに、
ウチの娘のために運用されるとは。
今日はバタバタしてヤツには何も言えなかったが、
後で礼の一言くらいは言わなければ。」
「7月 △日
定例報告も兼ねて、シュンに一言、礼が言いたかった。
あのシステムは、基礎構想と運用についてはシュンが発案し、
ハード面と、それに伴うコストダウンはオレが手を入れて修正した。
特許権は、アイツと会社が持つことになった。
シュンの持つグループは莫大な利益を得た。
特許については全面的にアイツ側が持つことになったとき、
『いいのか、オマエが半分以上作ったようなもんだぞ。』
『オレはカネが欲しくてやったんじゃねえぞ。
純粋に、作るのが楽しかったからやったんだ。
だから、オレを管理職にするなよ。
オレの楽しみを奪うな。
代わりに、
ほんのちょっとのベースアップと、
ほんのちょっとの自由をくれ。』
それでオレが、
こんなにのんびりやっていてもよい状態になっている。
アイツは『もともと、こういう立場の人間が必要だった。』と言う。
『楽させてもらってありがたい。』とオレが言うと、
『働きアリばかりではダメなんだ。
社長・管理職以外で、現場に入り込むことができる、
オマエのような存在は、組織に必要なんだ。』」




