アタシの、本当の、気持ち(3)
月曜の『辺境クラブ』、
通常は、リコさんのログハウスで、それぞれの進捗についての報告会だ。
ただし、今回だけは、特別だ。
京香ちゃんには、特別に休みをとってもらった。
初めての『ボクシング教室』の休養分として、休んでもらったのだ。
そして、私、リコさん、陽子さん、執事シュウさんの4者の話し合い。
ここまでの情報の整理だ。
私がシュウさんに尋ねる。
「リコさんのお父さんの会社のこと、何か聞いてる? 」
「特にはありません。
私は、ほんのたまにですが、
社長秘書のかたから下働きのような書類作成を頼まれるだけです。」
私はさらに、確認する。
「あなたを企業グループ全体の後継者にするという話は? 」
シュウさんは、即答する。
「ありえません。
グループ内には、有望な人材が溢れかえっています。
私は、末席もいいところです。」
「そうすると、あなたとリコさんを結婚させて、
後継者にするという線も、薄いわね。」
シュウさんは、眉ひとつ動かさず、答える。
「全く、ありえません。」
私は、内心、安心した。
この4人の、誰一人として嫌な思いをすることは、まずないはず。
ただし、それだけに、リコさんのお父さんの真意がわからない。
少なくとも、離婚した妻とその息子をそのまま屋敷の敷地内に住まわせ、
決して見捨てなかったことは事実。
だが、後継者にと思っていたであろう娘は早世し、
息子には帝王学を授ける気配もない。
なぜ、リコさんを放り出すこともしないのか。
いくら実の子とはいえ、
一度は見捨てた女の、その息子だ。
離婚した妻への、罪滅ぼしのつもりなのか。
リコさんが口を開く。
「情報が足りなさすぎる。
もっと根本的なことから洗い出す必要があるかもしれないな。」
「そのことなんですが・・・」陽子さんが、ようやく発言する。
「あの、お恥ずかしい限りなのですが、
そもそも、御当主のお名前は、何とおっしゃるのでしょうか? 」




