アタシの、本当の、気持ち(1)
夕暮れになり、おやつタイムもお開きとなってしまった。
今度は、陽子さんや執事シュウさんの話も聞けたらなあと思う。
さて、翌日は土曜。
私がリコさんを独占できる日。(というより、リコさんが私を独占できる日。)
ところが、今日だけは、ちょっと違っていたんだ。
リコさんから切り出した。
「きのうはあんなことを偉そうにいっていたが。」
「あんなことって? 」
「高校の英語教育を変えるべく、教師になるって。」
「ああ、リコさん、すごいなと思ったよ。」
「だが、ひどく矛盾していると思って。」
「何が、ムジュンなのさ? 」
「アタシ一人ではできやしない。
こうして生活して、生きていられるのも、
結局は、あの男の財力があってこそなのだからな。」
「あの男って、お父さんのこと? 」私が訊くと、
「そうだ。」と言って、リコさんはため息。
私は、言ってやった。
「リコさんは、お父さんが嫌いみたいだけど、
お父さん、愛情からリコさんを援助しているとは
言えないかもよ。」
「どうして、そう、言える? 」
「だって、前に、執事シュウさんを
お父さんの後継者にすることもありうるって、私、言ったよね? 」
「ああ。」
「お父さんが、リコさんが思っているような人なら、
シュウさんとリコさんを結婚させようとするはずよ。」
「シュウは陽子の彼女だぞ。ありえない。」
「でも、会社の存続のためなら、お父さん、そうするでしょ?
もし、アンタとシュウさんが結婚しろ、とお父さんに言われたら、
そうするつもり? 」
リコさん、激しく首を振る。
「陽子のためにも、
アタシのためにも、
それだけは許さん。」
「ならばどうする?
ここは、お父さんに服従したふりをして、
大学卒業して教師になるまでは
援助を受け続けてもいいんじゃないの?
そして、最後の最後で、
『大どんでん返し』をやってのけるのよ。」
「『大どんでん返し』とは何だ? 」リコさんが訊く。
よくぞ訊いてくれました。
私は胸をそらして言った。
「アンタ、私と結婚しなさい。」




