『辺境クラブ』は、楽しいよ(16)
言われてみれば、そうだった。
私、別にケンカに強くなりたくてボクシングを始めようとしたんじゃない。
運動不足解消、という軽い理由だった。
「軽い理由、結構。
そのくらいが、一番、心に負担をかけないんだ。」と、リコさん。
「闘うのは、リコ様と私がやります。
実咲様には、平和な毎日を営んでほしいのです。」と、陽子さん。
「『辺境クラブ』は、ほどほど真面目に取り組みたいが、
やりすぎは厳禁だ。
部長、ほどほどで頼むよ。」
と、リコさんは笑った。
服装を整えて、
下の階で、みんなでお菓子とお茶をたしなむ。
「私たちは軽いメニューでいいですけど、リコさんたちはそれでいいの?」
京香ちゃんは心配する。
「このくらいのものを、毎日やっている。
時間もかからないし、
可動域が確実に広がっている。」
「1対1の、スパーリング形式はやらないんですか。」
「ミット打ちはやるけど、スパーリングはする必要がない。
どうしてもやりたい時は、
別のことをやる。」
「何をするんですか。」
「トレーニングルームの床に、線が引いてなかったか? 」
「ああ、ちょっと奇妙でしたね。あれで何を? 」
「『カバディ』をやるんだ。」
「『カバディ』、て、
あの、『カバディ、カバディ』とか言いながら、
やるやつ? 」
「ああ、いい反射神経の運動になる。
反射神経と、心肺機能の強化をしたい時にやるが、
せいぜい月に2回くらいしかやらない。
アタシたちは、
別に競技者や格闘家になりたくてやっているわけでないし。」




