『辺境クラブ』は、楽しいよ(13)
「なあんだ、強くなるための練習だと思っていた。」
私がそう言うと、リコさん、真剣な顔で言った。
「強さなんて、求めたらキリがない。
単純に強いのは、
カラダがバカでかくて、
常人離れした腕力があって、
しかもとんでもなく逃げ足が速いヤツだ。」
京香ちゃんも尋ねる。
「体が大きくて、
腕力があって、というのは分かりますが、
『逃げ足が速い』とはどういうことでしょうか。」
リコさんが答える。
「ルールがあって、審判がちゃんといる『格闘技』と違って、
街中での『実戦』では、1対1の対戦はありえない。
1対多数が当たり前なんだ。
いくら腕力や技術があっても、多勢に無勢ではやられる。
その時、『逃げ足』が武器になる。」
「逃げろ、ということですか。」
「違う、追いかけられたら、とにかく追いつかれないようにする。
集団で来ていた連中も、だんだんバラバラになるだろう。
そこで向きをかえ、一人ひとりやっつける。
だから、鈍足ではダメなんだ。
せめて、持久力、走り続けられるスタミナがなくては。」
リコさん、私たち、『実戦』まで考えていません。




