『辺境クラブ』は、楽しいよ(12)
「『形から入る』といっても、バカにしたもんじゃない。」と、リコさん。
「『形から入る』ことによって、
その気になる、さあやるぞという気合を入れる意味もあるし、
まずは『形から入る』ことで、
その分野の初級レベルを知ることにつながる。
それと、『形から入る』ことで、
本当は自分にはその分野、向いてないかなとか、
そもそも費用が意外とかかるかとか、
いろいろな情報を知ることもできる。
とりあえず、『形から入る』は、
物事をすすめる基本だと思うよ。」
リコさんが、淡々と語る。
さて、まずは『ストレッチ』からだ。
ヨガマットの上で、
体を動かす。
リコさんが指示を出し、
陽子さんが私たち二人を補助。
「可動域を広げる。
ゆっくりと、息を吐く。
脱力だ。
力を抜け。」
リコさん、こういうところは体育会系だ。
周囲を見渡すと、
トレーニングジムにあるようなマシンの数々。
ランニングマシンもある。
「ところでさあ、リングってないの?」と、私。
「ない。」リコさん、ブッキラボー。
「えーっ、ボクシング練習しに来たのに、リングがないなんて。
スパーリングできないじゃん。」
「パンチングボールと、サンドバッグがあればいいじゃないか。
ミット打ちもできるぞ。
第一、なぜスパーリングが必要だ? 」
「ボクシングといったら、スパーリングで、リングじゃん? 」
そうしたら、リコさん、呆れて言った。
「あのなあ、ケガしちまうじゃないか。
アタシや陽子の美貌が腫れたらどうするつもりだ。
それに、打ちどころが悪くてバカになったらどうするんだ。」
リコさん、こういうところは過保護だ。




