『辺境クラブ』は、楽しいよ(5)
「それと、」リコさんは続ける。
「大学受験と、大学院受験は、
発想が異なる。
簡単に言えば、勉強ができる、テストが高得点なだけでは、
合格できないこともある。」
「どういうこと? 」と、私、
「大学院は、教育の場であるとともに、
研究の場でもある。
立場を変えて、考えてみればいい。
自分が大学院の教員としたら、
どんな子に院生として、来てもらいたい? 」
「うーん。」私、考え込んでしまう。
「難しく考えなくていい。
京香君をこの『辺境クラブ』に入れる時、
実咲は何を考えていた? 」
「そうか、
無茶なことをしないで、
こちらと協調しながら、
研究する真面目さが必要なのか。」
「その通りだ。
だが、そんなこと、
大学院試験のわずかな時間で
試験官が把握できると思うか? 」
「そうね。
できれば、少なくとも、
自分の専攻する分野を担当する教員に、
顔くらいは知ってもらう必要があるわね。」
リコさんは私の答えに満足したようで、
「そうだ、だから、少なくとも
大学院受験の1年前くらいには、
研究室にアポイントをとってから、
顔を知られた方がいいということだ。
大学院は、小学校や中学校のような生徒指導の場ではない。
研究の場なんだ。
気が合わない学生を置いておくほど、
余裕はない。」




