ほんとに、もう! (5)
「念押ししておくが、
これら2冊は、大学院試験のための
基礎学力でしかない。
実際の大学院試験は、
過去問で出題形式と傾向を見ておく必要があるが、
今はまだ気にすることはない。
この2冊だけ、徹底的に取り組めば、
大学院入試の対策もしやすくなるはずだ。」
とりわけ、勉強にかけては、リコさんはこれだけ流暢である。
試験という魔物退治のスペシャリストたる、
異世界物のベテラン冒険者みたいな物言いである。
まあ、それがいいんだけど。
異世界転生や転移なんてしなくても、
現実世界で冒険することは、まだまだあるんだなと
気づかせてくれる。
「ところでさあ、肝心なことをわすれちゃいないかい?」
「1月から3月の家庭教師の代金は取らない。
アタシのミッションは、
キミを志望大学に合格させることであり、
これは完遂された。
だから、ここから3か月の料金は取らない。
そのことは、キミのお母さんにも話してあるから安心しろ。」
「そこじゃなくて、もっとあるでしょ、肝心なこと。」
「他にあるのか? 」
「先週の続きはどうするのさ? 」