新しい活動(19)
このときの話は、かなり尾ひれがついて、
大行寺キャンパスでも、
本キャンパスでも、
ものすごい勢いで広まった。
いわく、「吉井さんが、リコ様にボコボコにされて泣かされた。」
いわく、「吉井さんが、リコ様に議論でもボコボコにされた。」
いわく、「吉井さんが、バスケの1on1でもチンチンにされた。」
いわく、「吉井さんが、リコ様の『愛人』になった。」
まあ、最後のは本当で、未だに納得がいかない。
翌日から、さらに奇妙な登校風景が始まってしまった。
華菜さんが、朝、大行寺キャンパスまで、ついてくるようになったのだ。
一度は下火になっていた『大名行列』、また数が増えたみたい。
「なんでアンタがこっちに来るのよ。
アンタは反対方向でしょ? 」
さすがに私はムカムカしている。
しかも華菜のヤツ、リコさんの左手にしがみつきやがった。
「おい、しがみつくな。」私が毒づくと、
「あらあら修道女様、お口が乱暴でございますわよ。
それに、リコ様の右手が空いているではございませんか。
『正妻』のアナタは右手、
『愛人』のアタシは左手、
よろしいじゃございませんか。」
私、意地になって、リコさんの右手にしがみつく。
周囲の声も嫌になるほど、うるさい。
「今、『愛人』って聞こえなかったか? 」
「聞こえた。噂は本当だったんだ。
あの吉井さんが、リコ様の『愛人』になったって。」
「吉井さんって、天才かもしんないけど、
荒っぽいのでも有名だったじゃん。
リコ様の『愛人』って、大丈夫なの? 」
「今のところ、大人しくしてるみたいだけど、
どうなることやら。」
私、華菜さんに挑む。
「ほーらごらん、みんな心配してるじゃない。
いちいちごもっともだわ。
いつまで猫かぶっていられるものかしら。」
「うるさいうるさい、
絶対、アンタから『正妻』の座を奪ってみせるからね。
覚悟しときな。」
周囲の雑音、さらにうるさくなる。
「今、『正妻』って言わなかったか? 」
「大野さん、リコ様の『正妻』だったんだ。」
「面白くなってきたぁ。」
私のスローキャンパスライフ、どこに行ったのよぉ。




