ほんとに、もう! (12)
電車に乗っても、
席は空いていても、取り囲まれそうだったから、
私たちは、立っていた。
3駅分、約20分の距離が、長く感じられた。
やっとの思いで、リコさんのログハウスに着く。
「やっと着いた。なによあれは。」
「あんなことになるとはな。
アタシも、世俗での生き方を忘れていたようだ。」リコさんはのんきだ。
「あのさあ、カッコつけてないで、明日からどうするか、考えなさいよ。
もし、アンタ一人だったら、もっと大変だったかもしれないし、
授業の取り方によっては、アンタ一人で登下校することだって
あるんだよ。」
「対策は二重にとっていく。」
「もう、考えてあるの? 」
「準備は常に、1手先2手先、3手先まで
考えておくものだ。」
「どうするのよ? 」
「まず、『運び屋』として、
陽子に同行してもらう。」
「『運び屋』って、なんか物騒ね。
もう少しマシな言い方ないの? 」
「『荷物持ち』と言ったら、
陽子のプライドが傷つくだろう。
『運び屋』の方が、コイツのプライドを保てる。」
横で陽子さんが深くうなづく。
「なんか分からんけど、そういうものなの? 」
「そういうものなの。なあ、陽子。」
「ご明察です。リコさま。」陽子さんはニコニコしている。
「でも、キャンパスの中には入れないでしょう? 」
「心配するな。
もう大学当局の許可を得ている。
ちなみに、陽子の配下のノブとシゲも、
大学内部に潜入する許可を得て、
すでにアタシとキミを見守る活動をしている。
今日もだ。」
「全然気づかなかった。」
「当たり前だ。
セキュリティが目立っても困る。
だから中肉中背のモブキャラ二人にセキュリティを担当させている。
ただ最近、この二人がサボリ気味だという報告も入っているので、
陽子が行くことで、場合によってはシメてもらう。」
「陽子さん、ほどほどにね。」
「心得ております。」
言葉は穏やかだけど、陽子さん、目がギラギラしている。