幸せとは、なんだ?(8)
「そうなの? 」と、私。
なんか、通りで似た味だと思った。
「お父さんの遺品よ。」母さんは、一枚の写真を取り出す。
「会社で軽井沢に社員旅行に行った時、4人で撮った写真。」
オヤジ、母さん、俊作さん、律子さんが、ソフトクリーム片手に並んでいる。
「お父さん、財布の中にこの写真を入れていたわ。
ずっと、あなたのお父さんとお母さんの心配をしていたのよ。」
「オヤジ、こんな笑い方をするんだ。
初めて見た。」
リコさん、じっとその写真を見つめている。
「この時は、会社もそんなに忙しくしていなかったし、
目標だの、ノルマだのと細かいことを言わなくても、
みんなで自由に意見を言い合って、
でもいい雰囲気でやっていけたのよ。
それが、何が起きたのかわからないけれど、
だんだんギスギスした感じになってきて・・・」
「それで、オヤジたちが追い込まれていった・・・」
「みんな、良かれと思って動いてきたことが、
かえってよくない方向に行ってしまって、
気がついたら追い込まれた感じの心理状態になっていったわ。」
母さんはそう言って、ため息をついた。