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アタシの、本当の、気持ち(35)
「俊作さんたちがしたことは、決してほめられたことではない。
でも、あの人たちなりに、その失敗の埋め合わせを何とかしようと
今までしてきたの。
律子さんたち母子を敷地内の別宅に住まわせ、
生活を補償してきたのも、
S高に監視カメラのシステムを設置させたのも、
そして冴子さんの志望校の高校が、
実咲の志望校が決まってから急遽S高に変えさせたということも、
全部、俊作さんと圭子さんが配慮したことなの。」
「つまり、全てはアイツらの掌の上だったのか。」
「リコさん。」私は言った。
「ただ、母さんは寂しさの中で死んでいった。
葬式は、アタシと、先代の執事の2人だけで行った。
アイツらは、顔も見せなかった。
やはり、アイツらを許す気にはなれない。
だが、冴子も死んで、アイツらも同じ『痛み』は感じたと思う。」