アタシの、本当の、気持ち(34)
母さんは、「あの二人は、しばらく私たちの前に現れなかったの。」
私は、「次に現れるのは、いつだったの? 」
母さんは、
「3年前、リコさんがウチに来る直前よ。
お父さん、決して俊作さんを許してんかったわ。
『律子さんと息子がたとえ許しても、オレはオマエを許さない』
でもね、俊作さん、もうあの頃のような、
野心に満ちた表情も、イライラした感じも、疲れ切った姿も、
全く感じられなかったの。
全く、静かだとしか言いようのない態度だった。
そして一言、こう言ったのよ。
『オレはアイツらを苦しめるだけで、
大したことはしてあげられなかった。
本当は、オマエたちのような家族を作りたかった。
うらやましかったんだ。
だけど、もう後戻りできない。
せめて、オマエと、オマエの家族で、
家族の温かさというものを教えてもらえたらと思ったんだ。』とね。」
「お父さん、ますます怒ったのよ。
『身勝手すぎる。
それともこれも、業務命令なのか? 』
俊作さんはすぐ否定したわ。
お父さんは、
『オマエが言わんでも、律子さんの息子は何とかしてあげたいと、
以前から思っていた。
だけどな、オレはオマエのためにやるんじゃないぞ。
口出しなんぞしてきたら、ぶん殴るぞ。』
強がってた。
お父さん、実咲が生まれたとき、ものすごく喜んだけど、
息子も欲しいなって、ときどき言っていたのよ。
実咲に良い兄ができたと思ったんじゃないかしら。」