ほんとに、もう! (10)
「それにしても、さっ! 」
スピーチの感動の余韻に浸れず、
私は、はっきり言って、不機嫌だ。
となりの席に座っているリコさんに
式の最中、小声で話しかける。
「私と同級生になりたいからって、もう一度大学受験したの?
受験会場じゃ、見かけなかったわよ。」
「白鷗大学の受験会場は、小山だけではない。
全国15か所にある。
アタシは、埼玉県の大宮会場で受験した。」
「学費はどうするのよ?
アンタが死ぬほど嫌いなアンタのお父さんに、また払ってもらうの? 」
「勘違いするな。
アタシも全額免除の指定を受けている。
それに、筑波の時も、いくらか減免措置を大学にしてもらっていた。
アタシは、成績トップだったからな。」
「あーっ! 」思わず叫んでしまって、すぐに口をふさいだ。
「『本当は、別の方に新入生代表挨拶を頼みたかったのですが、
固辞されてしまいまして』って大学の係の人に言われてたんだ。
その固辞したヤツがコイツだったんじゃ。」愕然とした。
「ああ。」やっぱりそうかよ。
「あのねえ、アンタら兄妹の代わりに、
何の因果か、私は2回も『新入生代表挨拶』というのをやらされたの。」
「ああ。」
「ちょっとは、感謝しなさいよね。」
「そうか。」