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隠滅の森  作者: 箕宝郷
小学校生活と事件
3/27

逃げる卒業式

 その日の放課後、その人は私の下駄箱で待ち伏せしていた。「スソナガって言うんだ」彼は私の名前を堂々と間違えて読んだ。

「違うスエナガだ。」と少し頬を赤らめて言うと


「ワリィ、ワリィそんなにキレるなよ。俺はカイよろしくな」


「...」


「ちょっ、お前無視するなよ」


「ごめん、ちょっと信用できなくて...」


「なんだよそれまぁ2組にいれば人間不信にもなるか」


「えっ?」


「だって、あのクラスヤバいって噂だよ。担任もちょっとおかしいし」


「そうなんだ。全然そう言うの分からなかった。でも前のクラスでもいじめられてたしやっぱ僕...」


「そんな事無いから、お前面白いじゃん。今日俺の友達紹介するから遊びこいよ。」


 そうして放課後、カイ君と遊んだ。カイ君の友達も紹介されて夕暮れまで遊んだ。こんなに楽しく遊んだのは地元を離れた時以来であった。カイ君の友人も紹介してもらって結構楽しかった。その時、初めて私は「歓迎」の意味を身をもって知ることが出来た。

 日が暮れるころに叔父の家についた。家に入ると叔父が怒りながら電話をしていた。


「だから、姉貴が死んだのはエレベントが絡んでるって何度言えばいいんだよ!」


「....だから、事件性がないって...お前、本気で言っているのか?」


「くそっ、俺は認めないからな...」


「おっ、浩太。お帰り学校どうだった?」


「うん、今日は友達が出来て楽しかった。」


「そうか、それは良かった...浩太。」


「何?おじさん」


「今まで仕事忙しくてごめんな...今日気づいたんだ。お前を守ってやれるのは俺しかいないって」


「おじさん。いつもと違うね。」


「ったくジンジって奴は人を変えるな」


「ジンジって何?」


「うん?おじさんの職場でよく使われる言葉だよ」

 その日以降、叔父は自宅にいることが多くなった。その日までは、叔父の家ではインスタント麺や冷凍食品など栄養バランスが整っている食事をとれていなかった。しかし、叔父はこの日以降、食事の準備をするようになった。今思うと感謝の気持ちでいっぱいなのだが、当時の私は「お母さんの料理の方が美味しい」と言うなど心無い言葉をかけ続けていた。でも叔父は「俺も姉貴の料理もう一度食えるなら食ってみてえよ」と大きな声で返事された。

 私は次の日からカイ君とその友人たちと頻繁に遊ぶようになった。この時辺りから学校生活の楽しさを知るようになった。叔父からもらった小遣いは服や本に多く使った。そして、小学校高学年になる頃には学校で一番のオシャレ男子と言われるまでになった。

 私は男女問わず、チヤホヤされるようになった。女子からチヤホヤされることはとても嬉しかった。しかし、女子と話すと「アヤさん」の事を思い出してしまうのであった。

 小学校の卒業式予行の日、アヤさんから「浩太君、ちょっと話したいことあるんだけどいい?」と呼びかけられた。しかし、私は「お前、今どんな気持ちで俺に声かけてるの?お前が俺にしたことを考えろ!」と怒鳴ってしまった。するとアヤさんは泣きだしてしまい、私は女の子を泣かせた悪者扱いされることになった。

 そして卒業式の日、叔父はどうしても外せない仕事の用事があるとの事で出席していなかった。体育館で卒業式が終わった後、教室で保護者への感謝の手紙を読んでいた。しかし、私には保護者(叔父の姿は無かった。)担任の先生が「んじゃ据長くんは帰って...」と言いかけた時、叔父が教室の扉を開けて「はぁ、はぁ浩太、間に合ったか?」私は嬉しさのあまり泣き出してしまった。当時の先生も涙を流して「それでは、据長さん。発表をどうぞ」

 この時、初めて私は叔父の事を「お父さん」と呼んだ叔父はとても嬉しそうにしながら涙をこらえていた。私は「お父さん」と呼ぶと叔父に叱られるのではないかとビクビクしていたが、とても嬉しそうな姿を見てホッとした。

 その後、クラスで記念撮影を行った時、カイ君とすれ違った。カイ君は尽かさず「お前、いつまで意地を張っているんだよ」と言ってきた。私はアヤさんの事だと分かったが「何の事?」とぼけると。

「タテちゃんが浩太と話したいって言ってるんだよ」と強く言うと「ごめん、アヤさんとはもう関わりたくないんだ。」と言うと「そうか、でも浩太後悔するなよ。」と言ってカイ君は集合写真の撮影へと向かった。

私はこの時、アヤさんに遭遇しないように逃げるように叔父と帰宅しようとすると校門の前でアヤさんの声で「コウ君」と聞こえたが聞こえないふりをして私は立ち去った。

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