演奏会と音楽の魅力
会場に入りプログラムが渡されて内容を見ると、最後の演目に(バッハのメドレー 演奏凍川 留美)と書かれていた。心の中で(留美先輩の苗字って凍川って言うんだ)そう思いながら、演奏が開始されるのを待っていた。ブザーが鳴り、ホール全体に響き渡ると、演奏が開始された。最初の演奏はベートーヴェンの交響曲第五番「運命」であった。その後、休憩時間がありハイドンの弦楽四重奏曲第77番 「皇帝」と続いた。準備のため、再度休憩時間を挟んだ。休憩後、留美先輩がステージの真ん中でお辞儀をしてこれから、演奏する曲の解説を始めた。留美先輩の完璧な解説に「先輩すごい立派だなー」と感動して声に出してしまった。曲の解説が終わり、先輩の演奏が始まると私の音楽に対する世界観が一変した。
ピアノの曲なので無論、歌詞など入っていない。なので、感情を込めることはできないと思っていた。しかし、その考えを留美先輩はその考えを覆したのだ。私は感動のあまり叫びたくなった。しかし、ここで叫ぶと先輩の晴れ舞台を台無しにしてしまう。私はバッハの織物を織る旋律に感情を込める留美先輩の演奏してしまった。留美先輩の演奏は10分程とかなり短いものであったが、今後の高校3年間の楽しみを増幅させる出来事であった。演奏が終わり、先輩がお辞儀とともに盛大な拍手が響き渡った。私は先輩に対して尊敬した。
アンコールにモーツァルトのアヴェ・ヴェルムコルプスを歌った。暖かなお湯に浸かって癒される様になった。歌詞の意味は分からなかった。しかし、別世界に引きずり込まれるような感覚もあった。
すべての曲目が終わり、私は会場を早く出ようと頑張った。留美先輩に早く感想を言いたかったからであった。私は人ごみの先に留美先輩が観客が握手しているのを目にした。私は留美先輩に「音印高校合格しましたよ」と伝えたい思いで留美先輩の元へと向かった。しかし、人波に飲まれてしまい最終的に留美先輩の近くにさえたどり着くことが出来なかった。
私はホールの入り口で誰もいなくなるのを待った後、留美先輩のところへ向かうと誰もいなかった。(留美先輩。会いたかった。)家に帰る途中そんな思いがこみ上げてきた。
留美先輩に何も伝えられなかった悔しさは私の心の中を次第に蝕んでいった。
翌日の登校日、カイ君が微笑みながら「お前、音印高校の演奏会行ったの?」と唐突に質問された。嘘をつく場面では無かったので私は「んまぁ、行ったけど。」と答えると。「それで、どーだった?」と聞かれてダルがらみをされたが私は素直に「イヤーすごかったよプロ並みだったね。俺も、高校進学したらあの場で演奏してみたいよ。」と答えた。カイ君は「お前変わったな。」と言い始め私は「急にどうした?」と聞いてみると「中学入学したときお前音楽に興味なんか無かったのにびっくりしたよ。」と言われた。
カイ君は県立高校である。方波見高校を受けるらしい。幼馴染と離れてしまうのはとても寂しいことであるが、カイ君と過ごせる時間を大切にしながら過ごしていきたいと考えている。




