静かなる怒り
叔父の家に引っ越して1か月も経った頃にはもう叔父とは口を利かなくなっていた。叔父は常に仕事中心の生活で僕の事などいない存在として生活していた。毎日校門をくぐる時、私はいつもいじめの恐怖に怯えていた。下校して叔父の家に帰っても誰もいない。この寂しさは前住んでいた家では一度も感じなかった。叔父は帰りが遅かった。
その間、僕は暇だったので叔父の部屋にあった。本を読んでいた。小説や図鑑、歴史書が置いてあった。どの本も内容が難しかったが何度も何度も読んでみると次第に理解できるようになった。なぜだろうか?不思議と漢字の読み方が分からないけど意味は何となく分かったりしていた。だけど読み方が分からないので、学校の友人たちに自慢することが出来なかった。いや、自慢などする余裕もなかった。毎日、僕はいじめられていたから。
叔父と生活して半年が経過すると新年度に入り私は小学校3年生になった。クラス替えも行って、引っ越した先で初めての友人が出来た。「あや」さんと呼んでいたのをよく覚えている。異性の友人であったが、私は女の子として見ることは無かった。「あや」さんは常に一人であった私の相手を良くしてくれた。他の人には話せなかった叔父の本についても話すようになっていた。昼休みは2人でよく遊んだ。次第に「あや」さんの友人たちと仲よく遊ぶようになって生活は充実した。
ある日の昼休み「あい」さんと仲の良い友人が会話しているのを聞こえていた。「アヤちゃん。まだ、クマと遊ぶ罰ゲームを続けてるの?もしかしてクマさんの事が好きなの?」
「据長くんの事?嫌いだよあんな奴。だって服ダサいし、臭いし....」私はこの言葉にグサッと来た。唯一信頼できるアヤさんからの悪口は耐え難いものであった。耐えきれずにその場から立ち去った。
翌日からアヤさんとは距離を置くようになった。正確に言えば私がアヤさん拒絶した。しかし、罰ゲームの義務感からか?アヤさんは執拗に私に話しかけようとしてくるが、私は「あや」さんを無視し続けていた。
「あや」さんの「服がダサいし...」この発言は私が今の彼女と交際するまでのトラウマであった。それからと言うもの、私は美容に興味を持ち始めた。週末に少ない小遣いで帽子を買い月曜日学校へと向かった。校門に入る時から視線を感じた。
教室に入ると途端に笑いの的にされた。「何?その服ダサっ」とか「変なセンスしてるよねあいつ」な多くの人が心無い言葉を出していた。それもそのはず、当時初めて買った帽子を私は自慢したかったので、室内に入っても帽子を被っていたからだ。
昼休みになり、机で寝たフリをして落ち込んでいると隣のクラスの人が来て「えっ、これ結構いい帽子じゃんセンスいいね!」といって生きた人がいた。しかし、私はアヤさんの件があったのですぐにその言葉を信用することが出来なかった。