表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

熊と神様

で、冒頭に繋がるってわけで――


「バカなこと言ってないで、死ぬ気で逃げなさい!」


「打開案はある?」


「ある。側転さんに感謝ね。そこ、右!」


指示に従ってバイクを曲げるタイミングで、チラッと後ろを振り返った。

ブリッジの姿勢のまま、親の仇を見るような形相で猛スピードで追ってくる女。

いやいや、こっち何か悪いことしましたか?


というか、人間が四足歩行で時速60km出すと、あんな動きになるのか……キモすぎる。

あ、また速度上がった。なにあれ、怖。


「これ、どこ向かってるの?」


「あんまり余裕ないから、そのまま突っ込んでもいい?」


「は?」


「……アンタじゃな――OK出たわ。そこ、左!」


「なんかよくわからんけど、とにかく曲がれb……あれ、鳥居?」


「そこをくぐればゴールよ!」


カブ、堂々の一位でフィニッシュ。

やっぱり積んでる動力が違う。さすが文明の利器。

続いてブリッジ女もゴール。……と思ったその瞬間、ぺしゃんこになって跡形もなく消えた。


「な、何が起きたの……?」


「ここの神様と交渉しておいたのよ」


「はえー……」


「信じてないわね」


「というより、まだ状況が飲み込めてない……」


あまりにも現実離れした光景に、

“幽霊って潰れても血とか出ないんだな……”

なんて、場違いなことを考えていた。


「ここからはクマちゃんの仕事よ」


「何が?」


「交渉したって言ったでしょ。対価の支払いよ」


命を差し出せ、とか言わないだろうな……。

そんな不安げな顔をしていたのか、彼女が呆れたように笑った。


「何その顔。掃除とお賽銭よ」


「ああ……良かった……」


なら、まずはお賽銭からだな。

こういう場合って、いくら入れればいいんだろう?

ググっても出てこなさそうだよなあ。


「命 助けられた時 お賽銭 金額」


そんな検索ワードが頭をよぎりつつ、財布を開いたその瞬間――

今日一番の絶望が、僕を襲った。


「……1万円札と、7円しかない……!」


「1万円入れればいいじゃない」


ワンチャン7円で済むとか、お釣り出るシステムとか……

ないよな。

さらば、今月の食費。命あっての物種ってやつだ。


意を決して万札を賽銭箱に投げ入れた――その瞬間。


「痛っ……!?」


後頭部に何かがぶつかった。

落ちたそれを、彼女が拾い上げて差し出してくる。


「金額が気に入ったから、お守りくれるってさ」


「なぜ勢いよくぶつけてきた……?」


「金額は良かった。でも、直前の葛藤が気に入らなかったんだって」


……全部お見通し、ってわけか。

ごめんなさいね。では、掃除、させていただきます。


しかし――


「ここ、結構広くない? 今日中に帰れる……?」


めんどくさ……

その瞬間、どこからか飛んできた石が頭にヒットした。


「グギャッ」


えらく人間くさい神様だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ