表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

熊とデート

全ては我が天使の一言から始まった。


「どこか楽しいところに行きたい」


「楽しいところ?」


朝ご飯を用意しながら、漠然としたお願いに思わず聞き返す。

今日の朝食はスーパー産の半額パンと、プライベートブランドのまずいコーヒー。まさに質素倹約、というか、単に金がないだけとも言う。


「別にお金がかかる場所じゃなくていいの。無職の甲斐性には期待してないし」


「無職じゃありませーん! WEBライターでーす!」


「どこが違うのよ……」


「今、全国のWEBライターを敵に回したな!?」


というか、「甲斐性」なんて言葉どこで覚えたんだ……? 漫画を自由に読ませてるのは教育的にどうなんだろう。


「うーん、大丈夫かなぁ。またいつもみたいに……」


「クマちゃんも、ネットで聞きかじった浅~い記事ばかりじゃなくて、たまには外に出て取材でもしたら?」


なかなか痛いところを突いてくる。

ちなみに彼女は僕のことを「クマちゃん」と呼ぶ。由来は、名前の“態”を“熊”と読み間違えたところから。四亜態志しあたいし、この名字もなかなかクセが強いけど、あだ名はもっと適当だ。


「でもそれって、片田舎での聞き込みとかになるよ?」


僕が普段書いているのは、田舎の因習や都市伝説を題材にしたホラー記事が多い。これにはいろいろ理由があるが、一番は“怪談のピント”の問題だ。


都会の怪談はピントが合っていない。関わる人間が多すぎて、話がボケてしまうんだ。

ノイズが多ければ多いほど、話の信憑性は下がる。僕はそう考えている。

僕自身、善良な小市民なので、自分が信じてないもので読者を騙すなんて器用なことはできない。

登場人物全員が「AといえばB」と言うような、明確で筋の通った話でないと、僕は怪談に没入できない。――持論だけどね。


そういえば少し前にこの話をモモちゃんにした時、


「あながち間違いじゃないわね」


というお言葉を頂いた。

オカルトの権化みたいな天使が言うんだから、僕の考えもまんざらじゃないんだろう。


(……正確には「順序が逆だけどね」って前置きがついてたけど)


「どこでもいいわよ」


でもなぁ……。2人で出かけると、いつも散々な目に遭うんだよなぁ……。


「デートよ」


「行こう!」


――行こう。

――行くことになった。


……僕は、ロリコンなのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ