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アルフとアデン  作者: ローズウィンドウ
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砂浜

俺は渋々目を開けた。今思えば、この時目を閉じたままずっとここに横たわり、打ち寄せる波の音をきいて、海蟲が体中を這い回るのに身をまかせ、ただ太陽に体中を焼かれるままにしていた方がましだったのかもしれない。でも俺には未来が見えなかった。

なにより、吐くほどお腹が空いていた。



俺の国【ライズ】が兄であるアルクの国【ザクル】に滅ぼされてからまだいくつも経っていない気がする。正直、俺はどれくらいここで気絶していたのか分からないが。

俺が横になっている浜には大量の木屑が打ち上げられていた。多分、逃げるときに乗せられた船だったものだろう。あたりに人気はない。この様子だと船員はあの嵐で全員死んだようだ。…驚くほどに感情が湧かない。俺は妙な気分に襲われた。王であった時もこんな気分だったか…?

混乱する記憶を整理しようといったん目を閉じた…途端に瞼の裏に何かが映り込み、叫んで飛び上がる。

頭がガンガン鳴っている。だが気分はそこまで悪くなかった。俺は照らす太陽を仰ぎ見た。その時はじめて青い空に違和感を覚えた。雲が描かれた青い紙の下で何か巨大なものが動く気配がする。そう思ったとたん、俺の足元の砂浜が緑に染まった。海は血のような赤、島に生えた木々は黄色の単色になる。さっきまで照っていた太陽はどこにもない。そのかわりに深淵の空にはまるで絵本に出てくるような、眩しい光を放つアスタリスクが飛び回っている。急に恐怖心が全身を這いまわった。幼い時によく感じたものより何十倍も気持ちが悪い。奥歯を噛み締める。

自分の体が自分のものでないようだ。手先、足先から段々と感覚が消え始める。どこも少しも動かせない。

数十個のアスタリスクの動きに合わせ、世界の時間がめまぐるしくまわる。


聴覚が消えた。何も聞こえないとはこういうことなのかー。自分の心臓の音も聞こえない。

味覚と嗅覚が消えた。口の中に広がっていた血の味も消える。

触覚が消えた。宙に浮いているようだ。

視覚が消えた。暗闇が視える。




ー最後に意識が消えた。

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