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プロローグ 旅立ちは、親の指示

『おはなし』


「ねえお母さん、なんかお話しして?」

「そうね――イタズラで言う事を聞かない悪い子がいるとね。階段の下に隠れ棲んでいる妖精が食べてしまうの。ばり、ばり、むしゃ、むしゃって、生きたまま足の先、手の指の先から、少しずつばりばりって。どんなに痛がっても泣いて許してって言っても。そして、その妖精の帽子は、子供達の流した血で、赤く染まって」

「……そういうのじゃなくて」

【完】




『加護』


「ヨ・ツーヤよ、新たなる勇者の魂よ。この世界に転生せしそなたに、一つだけ神の恵みを授けよう」

「恵み……?」

「一つは真なる魔王をも倒す破壊の力、もう一つは魔王をも凌駕する可能性の力……」

「だったら、可能性の方を取るさ!」


「ヨ・ツーヤよ、よくぞ魔王を倒しました」

「……無限コンティニューの能力だったら、最初からはっきり言ってくれませんかね!」

【完】




『勇者の血筋』


「この数十年、魔王により大地は危険が充ち満ちている。これを倒す力を持つのは、神の加護を持つ勇者のみ……」

「夢でそんな事を言われた気がしますが、神官様」

「うむ。ならば村の若者よ、農民ヨ・ツーヤよ、古より伝わるそこな岩に刺さった剣を抜けるか試してみよ」

「どれどれ。お、抜けた」

「おおお、いとも容易く! お主は勇者の血筋であったか!」

「うーん、そうかも。うちの兄も」

「ぬいたどー!」

「父も」

「抜けました」

「母も」

「結構簡単ね」

「……なんで今まで黙ってたの、父母」


「気になって試してみたら、多少の程度の差はあっても、村人全員抜けたんだけど、母さん」

「田舎だもの、元を辿れば全員同じ一族って事、あるわね」

「……判定おかしくないか? オレだけが旅に出る理由が、いよいよ分からないんだけど」

「あのねぇ、ヨ。愛する人を惨殺されてようやく立ち上がるのが三流、他にやる人がいなくて皆に頼まれたてなし崩しにやるのが二流、誰に言われた訳でもないけれど己の正義の為に敢えて茨の道に踏み込んで行くのが一流というものよ」

「……親に言われて旅に出るってのは、そのランク内にどうも入らない気がするんだけどな」

【完】




『ファンタ爺』


 一方、某地方、某集落。

「勇者様、多くのオークが攻めて来ました!」

「わははは、多くのオークとはこりゃまいったね! わは、わはわはははは! こりゃ、勇者がゆうしゃんっとしないとな!」

「……ニセモノか」

【完】




『段取り』


「勇者を名乗る者よ、魔王討伐に旅立つそなたに、路銀と装備を授けよう! その宝箱を開けるが良い」

「……あの、王様」

「なんだ」

「城下の武器屋で売ってるのの方が、マシなのあるんですが……いや、そもそも、そこの近衛兵の装備よりアレなんですが」

「なら聞こう」

「何です?」

「勇者を名乗るお前が、何故裸で丸腰なのだ?」

「いや、それは」

「得意な武器とかないの? 普通、それぐらい持ってるでしょ? それとも何、今まで剣も持った事ないワケ? なのに、魔王を倒しますとか、勇者の末裔ですとか言ってしゃしゃり出て? そうしたら全部王様が最強装備とかくれちゃったりなんかしちゃったりして、剣の先でちょんとつついたら魔王がすんぱらりんっとか倒せちゃったりするとか思ってんの? それは甘いですよ、アマアマのアマちゃんですよ」

「うわあああああああん!」


「なかなか有望な勇者が現れぬな。あーあ、最近の勇者は本当、だらしない」

「圧迫面接は、最近評判悪いですぞ、王様」

【完】




『段取り2』


「勇者の末裔の多分どれかの、勇者よ、魔王討伐に旅立つそなたに、路銀と装備を授けよう! その宝箱を開けるが良い」

「……あの、王様」

「なんだ」

「城下の武器屋で売ってるのの方が、マシなのあるんですが……いや、そもそも、そこの近衛兵の装備よりアレなんですが」

「かつてこの国を救った勇者セン・ダイも、最低装備と小銭ぐらいしか受け取らなかったが、やがて伝説の装備を手に入れ見事魔王を討ち果たした。それに倣った儀式と心得い」

「先祖ぉおおおおお!!」

【完】




『主人公ようやっと現る』


「待遇改善に釣られて現れたな、勇者を名乗る者よ」

「なんか引っかかりますが、そうです。ヨ・ツーヤと申します」

「うむ。この金貨100万枚で旅の装備を整えるが良い」

「うわぁ、こんなに沢山、良いんですか、王様!?」

「ちなみに、金貨1万枚で命の保証サービスが受けられる」

「命の保証?」

「仮にモンスターや魔王に殺されても、探索と蘇生を受けられるサービスだ」

「オレは、死んでも神の加護で生き返れる系ですが。城までの道中でも5回ぐらい生き返ってるし」

「それってその場復活だろう? こっちは探索して城に連れ帰るサービスが付くぞ」

「あ、そっか。じゃあ、必要かな」

「ただ、回収は3回まで」

「えー」

「サブスクも可能だ。1年につき10万枚」

「んー……何年かかるかと思うと」

「永久保証なら、50万枚」

「ぐぬぬ、高い……でも、考えてみると、死ななければ最終的には勝てるんだし、5年で済むとは思えないし」

「その他に、ショップの割引パスや、宿屋の割引についても様々なコースを取り揃えておる。説明を聞くかね?」

「いえ、もう」

「聞くかね?」

「それは別に」

「聞くかね!」

「あ……ハイ」


「――という経緯を経て、今、お前に止めを刺すのだ、魔王! 結果として2万回ぐらい死んだが、永久保証のお陰で、そのまま100万枚を貰うよりもずっとお買い得になったのだ!」

「こ、こんな……賢い主婦発想みたいなのに……後れを取るとは」

【完】




『旅立つ者』


「やれやれ、結局小銭しか残ってねえな」

『あの保険、やっぱりインチキだったんじゃないか? ヨ・ツーヤ』

「んな事あるか。王様がわざわざお勧めしてくれたんだぞ。保険は内容ではなく誰が勧めてくれたか、だ。王様を信用出来なくなったら終わりだぞ」

『カモっぽいなぁ。で、その小銭でどうする?』

「まずは武器だな。勇者に相応しい伝説の武器とかが欲しい。村の選抜の剣は、『次の勇者が必要になった時に使う』って貰えなかったし」

『……酷い事言われてないか。でも、武器よりも先にさ』

「なんだ」

『一緒に旅をする相棒なり護衛なりが必要じゃないか?』

「何言ってるんだ、君がいるじゃないか、ソックスパペット君」

『……あんまりやり過ぎるとマジ病むからな、人間と対話しような?』

「あははは、ただのジョークじゃないか!」

『狂人の真似とてソックスパペットと会話する者、すなわち狂人なり』

【完】


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