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第2話 今日からこいつも転入生?

 にきび学園高等学校。

 にきびとは、若者の証。若者とは、その青春の1ページの中で努力し、笑い、時に涙し、悩み、葛藤する・・・そして、その先に得るものが「にきび」である。

 という、学長の独断と偏見の元に名付けられた学校である。


 その校訓も「にきびを愛せよ。にきびを得てこそ青春。」というものである。

 つまり、青春を重んじている学校である。


 そこに通う生徒はもちろん、教員に至るまで個性的である。

 個性とは己であり、個性とは名を示す。

 この学校では、個性で名前を呼ばれることが多いのである。


 ◇


 職員室――。


「じゃあ、今日、転入生が来るから、よろしく頼むよ!」

「わかりました!失礼しましたー」


 職員室から生徒を見送る教員。

 白のタンクトップに赤色のジャージ。常に首から下げているホイッスルとGショックがトレードマークの男。彼が熱血先生だ。


「あれー・・・そろそろ転入生が来てもおかしくないころなんだけどな。おーっと、いかんいかん。まだ時間もあるし、イメージトレーニングでもしておかないとな・・・ごほん・・・はい、みんな聞いてください!今日からこのクラスでみんなと一緒に過ごすことになった転入生を紹介します!・・・これじゃあ普通すぎるなぁ。インパクトがあったほうがいいよなぁ」


「熱血先生、イメトレ中すみませんが転入生がきましたよ~」

「あ、はーい!今行きます!」


 ◇



 佇む白い校舎――。

 吹き荒ぶ風に舞う校庭の砂――。

 部活動の活躍する横断幕――。

 いわゆる学校、という感じの学校だが、そうか、ここが――。


「ここが、今日から通うにきび学園高校か。」

「なんでお前が言うんだよ! それ俺のセリフだよね?」

「うわーそういうこと言われると傷つくわーHP減るわー」

「もう尽きてるだろHP!瀕死の癖に生意気な!」

「・・・MPも減るわー」


 全く、何なんだよこの女勇者。

 瀕死だからどこでもいいから連れて行けって言われたから連れて来たものの、何で今日から転入生感出してんの?

 さっぱり意味がわからん・・・。

 まぁ、それもこの校門までのこと。

 ここから生徒玄関を通り、職員室へ向かえば、そこからが俺の新しい学校生活!

 今度こそ手に入れるんだ――刺激的な日常を!!


「失礼します!」

「やっときたかー! 転入生!」

「先生・・・おはようございます! 今日からお世話になります!」

「それにしても、約束の時間より遅いじゃないか。転校初日から遅刻か?どうして遅れたんだ?」

「いや、その・・・えっと・・・話せば長くなるんですが・・・」


 うわーどうしよう。

 まさか街角で美女とエンカウントしようと企んでいたら、なぜか勇者っぽい不審者にエンカウントしてしまい絡まれたから遅れましたーなんて言えないし・・・。


「すみません、ちょっと体調が悪くなってしまって」


 ――なんで勇者おまえがここにいるんだよ!


「そうだったかぁ。災難だったな」

「先生!? なんで反応してるんですか!? どう見ても不審者ですよこいつ!」

「ん、君、HPゲージ真っ赤じゃないか。大丈夫か?」


 ――ゲージ見えてんのかよ・・・!


「とにかく、早く来なさい。みんなに紹介しないとだから」


 そういうと、先生は足早に教室の方へと向かっていった。


「なんてことだ・・・こんなことなら、平凡な日常とおさらばするんじゃなかった・・・」

「まぁまぁ、そう気を落とすなって。ところで、教室ってどう行けば良いのだろうか?」

「あー・・・教室・・・? 多分そこの廊下をまっすぐ行って、階段を上がったところじゃないかな」

「か・・・階段・・・だと!?」


 勇者らしき不審者は、その場に急に倒れこむと、妙な演技を俺に見せつけて来た。


「ぐ・・・階段め・・・この私のHPゲージが真っ赤であることを悟ったか・・・策士め・・・ふっ・・・どうやら私もここまでのようだ。くっ・・・殺せ!」


「・・・」


 俺はそそくさとその場を離れようとした――。

 が、やはりこの不審者が俺の足にまとわりついて来た。


「お願いだぁぁぁ!! 階段なんて上りたくないんだよぉぉぉ!! 次のフロアになんて行きたくないの!! 魔物めっちゃ強くなるじゃん! ボコボコなのボコボコ!」

「そうか、学校と言う名の不思議なダンジョンで空腹で野垂れ死ぬことだな」

「殺生なことを言うな! 私だってな、私だってプライドがある! 頼むから私のプライドを守るために背負って連れて行ってくれ!」

「歩くのが面倒なだけってこと!? 守れないよそんな安いプライド!」

「瀕死なんだよ、ひ・ん・し! これで階段の段差につま先でも打ち付けたら私棺桶に・・・!」

「わかったよ!」


 結局、自分で歩くのが面倒なだけの瀕死の不審者を背負って行くことになった。

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