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愚か者たちの結論(後)

「ごめん。……ごめん、ごめん、ごめんなさい、めちゃくちゃなこと言って、ごめん」

 打算で出した答えをゆうに(しの)ぐ輪郭で作り出されたこの状況、取り返しのつかないことを言った悔恨が今さら浮かんできて、それでもまだ遅くないと「ごめん」と尊が同じ言葉を繰り返した。

「俺は、お前と朝陽が、上手く行ったら、……どんな形でもいい、別に、お前がどうしても無理って思うんなら、朝陽が思うような形でなくとも、いびつであっても」

「無理だなんて思うわけねーだろ。あいつ、あんな、可愛い、……めちゃめちゃ可愛くねーか、あいつ、何で……、十二歳だぞ、お前、俺が十二歳のときどんな顔してたか覚えてるか」

 尊は顔を覆って、悲嘆に暮れる。「お前……、なあ、毎日、あんなん、あんな可愛い生きものが俺の生きてる空間にいるんだぞ? 俺のさ、洗濯して、パンツ畳んで、風呂のとき、持ってきて、タオルと一緒に、靴下も……。あんな可愛い生きものが、俺のこと好きなのかな、俺だってめちゃめちゃ大好きだもんって……、でも……、でもさあ」

 それはほとんど泣いているに等しい。髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜて、

「そんで……、悩んでる、困ってるとこに、お前、ああいうこと言うんだもんよ、そんなん、キレんなっての無理だろ!」

 獣の声を尊は上げた。

「地獄かよって。ここ、地獄じゃねーのかって思ったよ。でも、どんだけ不幸だって思っても、俺の隣で寝てんだよ、つるっつるの顔した朝陽が寝てんだよ、可愛くって可愛くって仕方ないのが……」

 尊は笑える獣であった。途方に暮れて、救いを求めて両手を夜空に掲げて、「……地獄にしちゃ幸せすぎるって、めっちゃ困った」

 清継を思って自身の置場所を地獄に定めたはずでありながら、そこを恋しく思うその場所も、どこもかしこも幸せな場所なのだと尊は気づいてしまったらしい。

「……『他人の不幸は蜜の味』って言葉があるだろ」

「ああ……、うん」

「俺は、お前一人が不幸になるつもりなのかって思って、それが、許せなかった」

「……そういう意味の言葉じゃないけどな」

「でも」

 煙草を吸いたいのではないか、思って投じたライターを待ちわびていたように受け取った尊がすぐに火を点けた。ライターが投げ返されて、暁李も煙草に火を点ける。

「……長生きして、朝陽と先輩のこと守って行くんなら、お前煙草やめたら」

 シンプルな気遣いとしての言葉とは受け止められなかった。尊はじろりと暁李を睨んで、「やめねえ」と答えた。暁李一人長生きさせるつもりはないのだ。暁李が煙草に火を点けるまで、彼はいつまで経っても指に挟んだ煙草に口を付けないつもりに違いない。

「……のぼせそうだ。もう上がっていいか」

 レヴィルヴィアのほうは途中から足が冷たくなってきたのだろう。洗面器におかわりの湯を汲んで、また小さな両足を浸しつつ暁李の話を聴いていた。

「むう……、なんだか今の話では、ちっとも仲直り出来ておらぬように思えるが……」

「そうかもしれないな。……まあ、元々そんな仲が良かったわけじゃない。お前だって言ってたろ、俺は『やなやつ』だって」

「それは、まあ、そう言いはしたが」

 くるん、くるん、と指であっち向けと命じる。レヴィルヴィアは肩をすくめて素直に顔を背けた。その背中をすり抜けて、バスタオルで身体を拭きつつ、

「あいつと俺は、友達だ。仲良くなくたって、友達なんだ。……同じ人のことが好きで、同じことを考えて、だから、幸せになっちゃいけないって思って……」

「ふむ。……確かにのう、尊までもそなたのようなこどもっぽい遊びをしておるとは思わなんだ。ぴゃ」

「こっち向くな馬鹿」

「す、すまぬ……、ごめんなさいなのじゃ……」

 レヴィルヴィアにはまだ理解できないかもしれない、と考えつつ、……いや、俺だって今日まで全く知らなかった、と暁李は思い直す。尊と自分は、決して仲が良いわけではない。良くないところに色々と共通点があるものだから、きっと相性も悪い。

 それでも一緒に居て、解り合うことが出来る、これからも同じ相手を共に守るという、誰に求められたわけでもないことに不必要なほどの使命感を燃やして行くのだろう。ただ、守りたい対象に「幸せになれ」と命じられてしまった以上は、尊が大好きで大好きで仕方のない弟の思いを受け止めることにはも躊躇いはなかろう。

 ジャージに着替えた暁李に背中を向けたまま、

「晩ごはんのとき、朝陽と妾はキヨにたくさん褒められたのじゃ」

 と言った。「仲直りを出来て偉くて、いい子ゆえ、たくさんたくさん褒められて、妾はとても嬉しくて誇らしかったし、きっと朝陽も同じであったはずじゃ。でもって……、その後で、のう、もう一本動画を撮ったのじゃ」

 もう振り返っていいぞ、と言ってやったら、ほっとした様子で洗面器の中身を流して出てきた。「動画って、また公開するためのものか」

 レヴィルヴィアは首を振る。

「朝陽も一緒に撮ったのじゃ。あやつは恥ずかしがっておったから、まあ、どこかに出すためではなくて、ただの記録じゃ。しかし、……ンフフン、暁李、そなたが見たいと申すならこっそり見せてやらぬでもないぞ」

 朝陽はきっと見られたくないと思っているのだろう。何を撮ったのか知らないが、少年の許可なくこの幼女の思いに任せていいとも思わない。

「腹減ったんだけど」

「おお、そうじゃったな。しばし待っておれ、ん、そなたまだ髪がびっちょびちょではないか、ちゃんと乾かしておる間に支度して来よう」

「靴下履け、風邪ひくぞ」

 清継が作ってくれたのは(かぶ)の挽き肉餡掛けと焼いた赤魚であった。レンジで再加熱しても全く衰えぬ旨さで、「んー……、美味そうじゃのう……」「お前さっき食べたんだろ」「しかしまだ歯は磨いておらぬぞ」「何を偉そうに……」多少レヴィルヴィアにつつかせてやってもなお、腹は大いに満ちた。あるいは、清継はそこまで見越した量を作ってくれたのかもしれない。

「そなたもまだ歯を磨いてはならぬぞ」

 レヴィルヴィアは言った。殊勝なことに暁李の食べ終えた茶碗や皿を洗うと言う。心配になって見に行くが、「あーあーちゃんと洗っておるから見に来ずともよい。おりこうさんで座って待っておれ」なんて追い返された。何なのだと訝って座っているのに、三十秒に一回は「ちゃんとそこにおるか」「歯は磨いてはならぬのじゃぞ」と声が飛んでくる。家事をしている姿は車掌として働いているときよりもメイド服が似合っているのだが、あんなのにメイドとして同居されていては落ち着かないなと暁李は思った。メイドどころかいまは時限的な「嫁」として同居を許していて、これほど落ち着かないのだから、全くたまったものではないだろう。

 幸いにして皿を割ることはなかったようである。

「暁李、ウイスキーを出すのじゃ」

 エプロンがずいぶん濡れていた。明日もそれで仕事をするんだろうお前は、と呆れながらも、突拍子のない言葉のほうが引っ掛かった。

「……お前のいた世界でも、こどもは酒呑んじゃダメだろうがよ」

「妾は呑まぬ、あんなへんなにおいのするもの。妾はあったかーいミルクを飲むのじゃ。……そなたと尊はキヨから酒の飲みかたを教わったのじゃろう」

 呑まずに寝てしまうつもりでいたが、レヴィルヴィアの手にはもうグラスがある。グラスを見ると、何となく、まあ、一杯ぐらいいいかなんてことを思ってしまう。

「妾ももうちょっと大人であったなら、キヨから教えてもらえたのかも知れぬが……、まあ、それは仕方あるまい」

 レヴィルヴィアでは届かない戸棚の高いところから安ウイスキーの瓶を出して、計りもしないで注ぎ、冷蔵庫のミネラルウォーターもとぷんと入れる。清継が教えてくれたのはもっとずっと繊細な嗜みかたであるが、自分には似合わないと思って大雑把なトゥワイスアップで十分だ。

「きっとそなたはキヨや尊と呑むこともあるのじゃろう」

 いいや、と首を振ると、レヴィルヴィアは意外そうに目を丸くした。尊と清継がいるということは、そこは清継の部屋の食卓であるから、当然朝陽もいる。男児の見ている前で大人三人が飲酒をする図というのは、一度も実践したことはなくとも相当に問題があることは想像に難くない。女児と一対一ならばいいのかという話であるが、酔いというものはその場の人数の増加によって階乗するものであろう。

「ふーむ、よう判らぬ。いまは妾もおるのじゃ、明日の夜にでも三人で酒を飲んだってよかろう、妾と朝陽はすみっこのほうでどうなるのか観察しておるゆえ」

「そうされるのが嫌だからしない」

 ミルクをレンジで温めてテーブルに置き、座るのかと思いきや、またレヴィルヴィアは台所へ取って返す。

「ンフフフフン」

 後ろに、何かを隠している。それが何であるか、暁李はそれほど鈍感なつもりもないのだが、全く想像していなかった。

「先ほど、妾と朝陽で一緒に動画を撮ったと言うたじゃろ」

 ああ……、なんか、そんなこと言ってたな。しかし朝陽まで一緒になって何を撮ったのか、想像力を働かせるには空腹のほうが勝っているタイミングであった。

「じゃーん! なのじゃ!」

 背中に隠していたのは、小箱である。

 彼女が朝陽への思いを詰め込んだのと同じか、もう少し小さな、紙製の白い箱である。

 我ながら間が抜けていると思った。「ああ」と驚きの声が出て、「ええ……」ともうひとつ、困惑の声が出て。

「ンッフフーン」

 見事なまでのドヤ顔を見せつけられることとなった。

「キヨに教わりながら、朝陽といっしょに作ったのじゃ。ほれ、そのウイスキーという酒にはチョコレートが合うのじゃろう」

 この少女が清継と買いものをしている間、暁李は別行動でぼんやりと煙草を吸ったり、散歩をしたり……。だってバレンタインデーの製菓商品売り場や包装材売り場はあんまりにも女子らしい空間であって、そこに女児と可愛らしいお兄さんと一緒になってきょろきょろしているのは耐えがたく思われたのである。

 これは清継のアイディアであったに違いない。彼はレヴィルヴィアと朝陽が、暁李と尊が、百二十パーセント「大丈夫」であると確信して、こども二人がそれぞれの相手にチョコレートをプレゼント出来るよう、支度を整えていたのである。

 ハチミツと生クリームで練って固めたものではない。色はあれよりも黒く、かちっとしている。四角くて男らしくも小粒。

 向かいに座った少女の顔には、もう怒りや涙は欠片もない。小麦色の整っていながらも、少しばかりの小憎らしさの伴う顔である。すっかり見慣れたレヴィルヴィアである。

 尊は今ごろ、どんな顔してこのチョコレートと相対しているだろう?

「ほれ、早う食べて見せよ、そしてひとつでもふたつでも気の利いた感想を述べよ」

 味は、……きっと清継の監修のもと作ったのだから問題ないはずではある。家庭科室でも作る前にはちゃんと手を洗っていたし、腹を壊すことにはならないはずだ。しかしどうしても恐る恐るの趣になる指先でつまみ上げて、口の中に放り込むときは内心で「どうとでもなれ」とか、「でぇい」とか、やけくその言葉を(つぶや)いていたことを暁李は否定しない。

「ん」

 舌に乗せても容易くは溶けない。つるりと仕上げられた表面はとらえどころがないが、香ばしさが薄く広がった。緊張しながら奥歯で噛んでみれば、こりっ、という心地よい歯応えに遅れて、まず柑橘系の爽やかな香りが立ち上る。

「んー? どうじゃどうじゃ、ンフフー」

 砂糖のかたまりのように甘いものであっても吐き出さない覚悟でいたのだが、それは決して甘すぎるということはなく、寧ろややほろ苦い。しかしどっしりとした重みが伴い、じわじわと蕩け始めたところで暁李は、細かく刻んだオレンジピールが練り込まれていることに気付く。恐らく、少量ではあるがキュラソーも混ぜられているはずだ。

 まだチョコの味がふんだんに残った舌に、生ぬるい水割りを流し込んだとき、レヴィルヴィアはきっと暁李の両目が珍しいぐらい大きく見開かれたところを見ただろう。酒気を帯びた吐息とともに、

「……うまいな」

 と呟いてしまってから、しまったと思ってももう遅い。

「ンッフー!」

 ずいぶん近くに顔を寄せたレヴィルヴィアの鼻息をもろに浴びることとなった。

「そうじゃろうそうじゃろう、ニャハハハハー、妾はチョコレート作りの天才なのじゃ、恐れ入ったか!」

 暁李はごく手早く水割りを飲み干して、戸棚の奥に隠してある大事なアイラモルトの栓を抜いた。去年の誕生日に清継が贈ってくれた十二年ものだ。一滴の水も足さず、ほんのわずか、新しいグラスの底に垂らして、目を閉じてチョコレートと一緒に味わう。なんと言うのだったか、こういうの、ソバージュではなくて、フロマージュでもなくて。

「ちゃーんとキヨに教わったのじゃ、ウイスキーが美味くなるようなチョコレートの作りかた、決して甘過ぎぬ大人の味じゃろう、こうゆうのをコラージュと言うのじゃ!」

 たぶん違うのだが、もうそれでいいか、という気がする。

 しかし、では妾もひとつ、とつまみ上げて、噛み締めたレヴィルヴィアの顔はみるみるうちに曇った。「ニャー……、なんじゃこりゃ、めっためたに苦いではないかぁ……」

 慌ててカップのホットミルクにすがるが「あちゅい!」と悲鳴を上げる。噴き出さなかっただけ及第点とするべきか、そんな程度で及第点をくれてやっては、このこどもはいつまでもぽんこつなままになってしまうだろうか。

 いいや、

「……まあ……、うまい、すごい、よく出来てる」

 今夜ぐらいは、このチョコレートに免じて褒めてやっていいか、という気もした。

「んむ……、まことか。……そうか、大人はこういう苦いチョコレートを美味いと思うのじゃなあ……、ンフフ、では暁李よ、次のバレンタインデーにはまたこのチョコレートを拵えてやろう! して、ホワイトデーと申すのはいつ来るのじゃ? 明日か?」

 そんなしょっちゅう来てたまるか、「ホワイトデーは来月だ」と答えて、そのままバレンタインデーは来年だ、という言葉まで繋ぎかけたところで。

 ふと、……このこどもが来年までいるはずはないと、暁李は気が付いた。

「ふむ、では、ンフフン、暁李よ、三倍返しを楽しみにしておるぞ」

 レヴィルヴィアはその当たり前のことにも気付いていない様子である。そもそも、来月までいるつもりなのかお前は……、と、「では歯を磨いておしっこして寝るのじゃ。妾は良い子ゆえな!」と意気揚々と洗面所へ向かう後ろ姿に少しく呆れる。暁李に言わせれば、来なくてもいい異世界に来てろくでもない騒ぎを起こして動画配信まで始めて、すっかり根を生やしたレヴィルヴィアではあるが、清継が学校に説明した通り、あくまでホームステイでしばらく滞在しているだけ、この部屋に間借りさせているに過ぎない。

 来月の今ごろは、きっと静かな夜が舞い戻っている。

 悪いことばかりではなかったなとは思うのだ。確かにここ数日は気が休まらなかったけれど、尊と朝陽がきっと好ましいはずの道の上を歩き始めるに至るためには、レヴィルヴィアの存在が必要だった。無論、そのプロセスで朝陽を傷付けたことを無視して評価するわけにもいくまいが。

「ん! そうじゃ!」

 歯を磨いてトイレを済ませて、あとはもう着替えて寝るだけのレヴィルヴィアがぱたぱたと駆けて戻ってくる。充電コードに繋いでいたスマートフォンを起こして、

「寝る前にちょびっとだけ収録するのじゃ。昼のチョコレート作りだけでは寄せられた質問に答えきれておらぬからのう」

 などと言い出した。

「俺もう寝るんだけど」

「五分だけじゃ、五分だけ」

 清継なら何と言って嗜めるのだろうか。あいにく、暁李は清継ほどの言葉も持っていない。呆気に取られているうちに、「じゃーん! 夜更けに鮒月村からこんばんはなのじゃー妾の魔皇女ちゃんねるー!」レヴィルヴィアは撮影を始めてしまった。うっかり映り込むことになってはたまらないから、暁李はそっと席を外す。歯を磨いてトイレに行って戻って来たときには、メイド服からパジャマに着替える途中でありながらたった今撮ったばかりの自分の動画を満足げに見直しているところであった。

「ん? そなたも見るか?」

 ズボンは太腿まで上がったところで止まっていて、上は頭に被っている。清継に「女の子なんだから」と言われても、どうにも動きの一つひとつがいい加減である。

「遠慮せずともよいぞ、顔が見たいと申しておる」

「……じゃあ、見るから、そんな中途半端なカッコでいるんじゃない」

 せいぜい五分ほどの動画である。布団が温まるのを待たずに終わるだろうと「魔皇女チャンネル」の下撮り動画の試聴を、撮った本人を隣でする羽目となった。「ンフフー、妾は自撮りを撮るのが上手じゃ」などと言う、当人がよければそれでいいかという気もするが、他愛もない質問にせっせと答えていって、再生時間残り一分に至ったところで、

「ん、では最後の質問じゃな。なになに? レヴィルヴィアちゃんのパンツは何色ですかカッコわらい。えーと、ちょっと待つのじゃさっき風呂で穿き替えたゆえ……、ん、白じゃ!」

 思わず、背中に引っ付いて肩越しに覗き込んでいる少女を振り返った。

「ん? なんじゃ、どうした」

 びっくりした顔の声と、スマートフォンから届く「というわけで今宵はこの辺でなのじゃー、それではまた近いうちに会おうぞ皆の衆! ばいばーい!」という声と。

 レヴィルヴィアは翌朝また泣くことになった。よりによって大好きでいつだって自分を甘やかしてくれるはずの清継からきつく叱られたのだから、泣くのも無理からぬことではあった。暁李よりももう少しインターネットの世界には詳しいらしい尊は「あー、そういうのいるらしいから気を付けねーとなあ……」と言いつつ、視線はレヴィルヴィアを呆れた顔で見る朝陽のポケットに向いている。そこには彼が朝陽のために買い与えたスマートフォンが入っていて、安月給の彼がなぜそれを朝陽に持たせているかと言えば、「だって、離れてるときに何かあっても連絡取れんじゃん」ということで。持たせていなければ心配、持たせていれば今度は別種の不安に駆られるのは、もう趣味の範疇と言ってよかろう。

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