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第169話「代わり身の術」

「休みの日のぽんた王国、知ってる?」

「はぁ、たまにお手伝い行きますね」

「パン屋の比じゃないよ」

「お客さん多いですけど、そんなにキツイですか?」

「豆腐屋を手伝った事あるけど、忙しい」


 今日の天気は「晴れ」。

 お外ではスズメがチュンチュンさえずっているの。

 ひまわりはゆらゆら揺れていますね。

 そして今日は日曜日なんですよ。

 観光バスは来ないんですが……

 パン屋さんからは「ぽんた王国」にお手伝いを出す事になっています。

 レッドとみどりは「決定」していますが……

 わたし・コンちゃん・ミコちゃん・シロちゃん・店長さんでジャンケンして二人行くんですね。

 日曜……パン屋さん大変です。

 でも、ぽんた王国はもっと大変です、なにせあっちは「お豆腐屋さん」「ニンジャ屋敷」「おそば屋さん」「みやげ物屋さん」をやっていますからね。

 毎週日曜日はジャンケンでお手伝いを出す事になっていますが……

 このジャンケンにいつになく「本気」な人が一人いるんですよ。

「店長さん」です、店長さん。

 表情こわばって、固めた手がプルプル震えているの。

 目も、どこか泳いでいるというか……

 店長さんに直に聞くのもなんなので、まずコンちゃんに、

『ねぇねぇ、コンちゃん』

『なんじゃ、ポン』

『店長さんマジな気がするんですけど』

『むう、確かにのう』

 ふむ、コンちゃんも知らないみたいですね。

『シロちゃんシロちゃん』

『ポンちゃん、何でありますか?』

『店長さん、本気も本気みたいなんですけど』

『たしかにであります、何かあったのであるでしょうか?』

 むう、シロちゃんも知らないみたいです。

『ねぇねぇ、ミコちゃん』

『何? ポンちゃん?』

『店長さん、マジな気がするんだけど』

『あら、店長さん、本気みたいね』

『ミコちゃん、何か知ってますか?』

 ミコちゃん、力なく笑いながら、

『店長さん、朝からパン焼くじゃない』

『ですね』

『だから、それから先はゆっくりしたいのよ』

『ぽんた王国に行きたくない、と』

『多分、ね』

 ミコちゃんニコニコして、拳を振り上げると、

「ジャーンケーン……ポンっ!」


 そしてぽんた王国には、わたしと店長さんで行く事になりました。

「やったー! 店長さんとデート!」

「うう……」

「デート……店長さん、暗いですね」

「休みの日のぽんた王国、知ってる?」

「はぁ、たまにお手伝い行きますね」

「パン屋の比じゃないよ」

 わたし、ぽんた王国のお手伝いに行きますが、今までやったのは「ニンジャ屋敷」ばっかりと思います。

 ニンジャ屋敷は中を探検してハンコを集めて、地下室でラスボスと戦って~みたいなアトラクション。

 最後はみんなで戦って、景品もらって終わりなんですが、ラスボスなんかはポン太やポン吉・長老がやるの。

 わたしがお手伝いできるのって、大体入り口・チケット売りですね。

「お客さん多いですけど、そんなにキツイですか?」

「豆腐屋を手伝った事あるけど、忙しい」

「むう、お豆腐屋さん手伝った事はないです」

「ニンジャ屋敷だって繁盛するじゃん」

「まぁ、人気ですしね」

「おそば屋さんだって、たくさん人、来るよね」

「ああ、おそば屋さんは経験済み(5c)だからへっちゃら」

「ポンちゃん強いなぁ~」

「店長さんが弱いんですよ~」

「俺、朝、パン焼いてるんだよ」

「ほらほら、笑って笑って、お客さんですよ」

 家族連れがやってきました。

 わたしと店長さんでチケットをちぎるの。

 って、子供が「3級」のバッチを見せてきました。

「3級」……10から減っていくから、常連さんですよ。

 新しい「2級」のバッチをあげて、中に入ってもらうの。

「さぁ、始まりますよ~」

「うーん、日曜なんて来なくていいのに」

「店長さん、日曜なかったらパン屋さんもピンチです」

「そ、そうなんだけどね」


 ニンジャ屋敷、お客さんを決められた人数入れたら、時間を見てわたし達も中に入るんです。

 中は迷路になっていて、あちこちにスタンプが置かれているの。

 そのスタンプをコンプリートしたら、地下室でボスとの決戦なんですね。

 スタンプの場所を教えるのに中に入って、あとは地下室に誘導するのがわたし達のお仕事。

 今日のお客さんは常連さんが多かったので、すんなり地下室に行ってくれました。

 わたしと店長さんでフロアを確認して、一緒に地下に入ります。

「今日のお仕事は楽チンですね」

「今回のお客さんだけかもよ」

「そうですね~」

 わたし、地下室のドアを閉めながら、

「店長さん、つくづくネガティブですね」

「ほっといてくれ~」

 地下室に全員集ったところで、ポン吉からテレパシーです。

『ポン姉、上は大丈夫?』

『OKで~す』

『手裏剣なくなったら、どんどん売ってな~』

『は~い』

 うん? ポン吉が裏方みたいですよ、って事はボス役は……

『今日のボスはポン太?』

『アニキだぜ』

 わたしと店長さんは、追加の手裏剣とか刀を持って後ろの方で待機です。

 飽きちゃったお父さんお母さんにお茶やおせんべいを売ったりもしますよ。

 部屋が薄暗くなって、正面ステージ、ポン太がスポットライトで浮かび上がるの。

「我を倒さんと訪れた勇者達よ、ここが貴様らの墓場となるのだ!」

 ポン太が刀を振るうと、子供達が手裏剣を投げるの。

 飛んでいった手裏剣、ポン太にどんどん当たります。

 手裏剣はですね、新聞紙で作って、色を塗ってるだけなの。

 でも、それが刺さるのは、ポン太の着ている服が「そう出来てる」から。

 今日の子供達は常連だから、投げるのも上手です。

 どんどん刺さって、ポン太はそろそろ「やられる」頃ですね。

 あ、ピカピカ赤く光り始めました。

「ぬおー! 勇者よ、なかなかやるな!」

 って、ポン太の姿がゆらいだと思ったら、丸太に早替わりしちゃいました。

「おおーっ!」

 みんなびっくりしてます。

 別の所にスポットライトでポン太が浮かび上がるの。

 ポン太、邪悪な笑みを浮かべて、

「勇者よ、お前達の手裏剣などではやられんっ! 伝説の刀でなければ我を倒すことはできないのだっ!」

 商売上手ですね、伝説の剣は地下室でしか売っていないの。

 伝説の剣は、普通に売っている剣と違って刀のところが光るんですよ。

「はーい、伝説の刀でーす」

 わたし、売りまくりです。

 伝説の刀は500円。

 入り口で売ってる普通の刀は100円です。

 500円はぼったくりな気もしますが、ま、いいでしょ。

 それに、どうも500円でも安いらしいですよ。

 伝説の刀、売れまくりです。

 子供ら、ポン太に向かって切り掛かり。

 会場がまた赤く点滅して、ポン太やられました。

「ぐおー! やられたー!」

「わーっ!」

 会場、大盛り上がり、無事に今回も終了で~す。


 イベント終ったら撮影時間。

 ポン太、ポン吉、長老がお客さんと一緒に写真撮影とかするんです。

 写した写真は受付のプリンターでどんどん印刷されてる頃。

 子供達はさっきやっつけたポン太と一緒になって写真写っています。

 親達も一緒に写真を写したりしていますが……

 真剣な表情で店長さん、それを見守っています。

「どうしました?」

「あ? ああ、うん、ちょっとね」

 写真撮影を見守る店長さん。

「パン屋さんでも写真、やってみます?」

「パン屋でどうして写真を?」

「だって店長さん見てるし」

「パン屋で写真ってどうなんだろ」

「わたしと一緒に写真、500円!」

「えー!」

「店長さん、『えー!』ってなんですか、『えー!』って!」

「いや、本当だし」

「むー!」

 怒ってるフリして腕を組んじゃうんだから。

「でもでも、どうして見てるんです?」

「うん、いや、さっきのイベントすごかったからさ」

「イベント?」

「ポン太、代わり身の術」

「あー! はいはい!」

「何?」

「店長さんは知らないんですよね、ポン太とポン吉は本物のニンジャなんですよ」

「本物! ニンジャ!」

「そうなんです、長老が手塩にかけて育てたリアルニンジャなんです、あれでも暗殺者なんです、アサシンなんです」

「そ、そうだったの!」

「タヌキが人間を皆殺しにするために育てられた、暗殺者なんです」

「うわ、いままで用務員さんが殺し屋だったのは聞いてたけど、ポン太とポン吉の方がずっとやばいじゃん」

「そうなんですよ」

 わたし、ポン太とポン吉にテレパシー。

 二人は頷いて、印を結びます。

 ドカンと爆発して巨大ガマ(ポン太式神)&巨大アマガエル(ポン吉式神)登場です。

 会場大盛り上がりで、写真撮影大繁盛。

 カメラ係のみどり・長老焦ってますね。

 ポン吉、わたしを前に、

「ふう、ポン姉のアイデアに感謝だぜ、写真から開放されたぜ」

「ガマの術は見た目も派手だからみんな喜ぶよ」

「みたいだな」

 って、店長さん、いつの間にか腕を解いて……ポン太を捕まえて部屋の隅で何か話していますね。

 ポン太はちょっと困った顔をしていましたが……一瞬考える顔になって……引きつった顔になりました。

 ブンブン何度も頷いて、なにかを了解したみたい。

 なんなんでしょうね。


 月曜日はのんびりです。

 昨日はぽんた王国のニンジャ屋敷で大忙しだったんですが、月曜日は途端にのんびり。

 だからって、お客さんが全然ってわけでもないんですけどね。

 でもでも開店したばっかりだから、まだお客さんは来ていません。

「昨日が忙しかったから、今日はなんだか気が抜けちゃいますね」

「だね」

 今日は店長さんと一緒に店番です。

 コンちゃんは配達で、そのまま老人ホームのお手伝い。

 シロちゃんもパトロールで出ています。

 ミコちゃんは家事をやってて通常運転。

 む……

 わたし、店長さんと二人きり……

 チャンスじゃないですか!

 見れば店長さん、ポヤンとしてるの。

 店長さんは今日もいつも通りパンを焼いていたから、朝からお疲れなんでしょう。

 いつもなら店長さんはソファの上なんかで寝ている時間な気がしますが、今日はなぜだか店番ご一緒。

 今ならキスの一つも奪っちゃえる気がします。

 この草食男子は逃げてばかりですから、こっちから捕まえて一気にいただくのがいいでしょう。

 そう、今からわたしは「女豹」になるんです、タヌキですけど。

 まず、店長さんと腕を組みましょう、逃げられないように!

「えいっ!」

「わ、なに、ポンちゃん」

「店長さん、結婚しましょう!」

「……」

「結婚です、結婚、決定なんだから!」

 って、店長さん、「どよーん」とした目でこっちを見てます。

 ここでビビッて引いたら負けなんだから。

 それ、腕にしっかり力、込めちゃうんですよ。

「今日は逃がしません、キスくらい覚悟してください!」

 わたしだって負けないくらいにらんじゃうんだから。

「ポンちゃん、本気だね!」

「店長さん、あきらめましたか!」

 って、店長さん、ニヤリとして、

「キスできるとでも?」

「あ、店長さん、逃げられるとでも?」

 わたし、腕に力を込めて、店長さんに顔を寄せます。

 あ、ひきつってますよ。

 ふふ、あきらめてキスされるのだ!

 それ、むちゅーん!

「!」

 キスする瞬間はこっぱずかしいので目を閉じていましたが……目を見開いてみたら、店長さんじゃないです!

 何故かレッドのホッペにキスしてます。

 腕を組んでいた筈の店長さんは正面に立っているの。

 店長さん、わたしを「ビシッ」っと指差して、

「ポンちゃんなんかに捕まってたまるかっ!」

「ななななんでレッドになってるの?」

「さらばっ!」

 店長さん、さっきまでの「お疲れ」を感じさせない勢いで逃げて行っちゃいました。

「ちょ、店長さん、待って!」

「ピュー」って感じで姿が小さくなってしまう店長さん。

 わたし、取り残されて「ポカーン」

 って、そんなわたしの頬に手をやって、

「ポン姉もしかたないですね、チュウ」

「むー!」

 レッド、いきなりキスしてきます。

 でもでも、どうしてレッドになっちゃったんでしょ?

 どうして?


 レッドを連れて学校です、店長さんを探すのもあるんですが、こんな時の店長さんの草食男子っぷりはスゴイから、捕まえる事はできないでしょう。

 校舎に入ったら、みどりとポン太がプリントを運んでいるのに遭遇です。

 みどりが、

「ちょっとアンタ、どうしたのよ!」

「うん、レッドを連れて来たの」 

 みどり、持ってたプリントをポン太に渡してからレッドを抱っこして、

「どうしてレッド?」

 みどり、頭に「?」マーク浮かべてます。

 って、ポン太はレッドとわたしを交互に見ながら、

「ポン姉、もしかしたら店長さん?」

「?」

「店長さんとレッドが入れ替わったんじゃない?」

「あ! ポン太、なんでわかるの?」

「み、代わり身の術だ! すごい!」

「代わり身の術って……ポン太教えたんですか?」

「昨日どうしても教えてくれって」

「教えたんですか!」

「教えたって……使えるなんて思ってなかったから!」

 ポン太びっくりしてます。

 店長さん「代わり身の術」を習得したみたいですね。

 これは困りました。

 これからずっと、この術で逃げられまくられそうですよ。

 って、教えた本人が目の前にいますね。

「ね、ポン太、わたしにもなにか、教えてくれない?」

「え!」

「ね!」

「えーっと……」

「えいっ! 捕まえたっ! 逃がしませんっ!」

「うわぁ!」

「教えるまで放しませんよ~!」

「むうっ!」

 ポン太が印を結ぶと……

「けのいろがあかいからレッドー!」

「うわ! レッド!」

「ポン姉すきすき、チュウ!」

「むー!」

 ポン太がレッドと入れ替わっちゃいました。

 教えた本人のポン太が術を使えるのはあたりまえですね。

 見ればポン太、ダッシュで逃げて行っちゃうの。

「待てー!」

「チュウ!」

「むー!」

 レッドが邪魔で追っかけられません!

 代わり身の術は迷惑ですっ! 



「シロちゃん、どうしたの、落ち着かないみたいだけど」

「わかるでありますか」

「うん」

「実は、駐在さんから呼び出しであります」

「ふうん」


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