セバスチャン
夜中に、執事風の男を自宅へと招き入れた。
「どうぞ、お入りください」
「はい、ありがとうございますハジメ様。
一刻も早く、この手紙に目を通して下さい」と言って、私に手紙を渡してきた。
様呼びは、やめてくれと言おうと思ったがこの状況なので注意しなかった。
手紙は、予想通り貴族の息子ボルグからの手紙だった。
主な内容は、あのクソ貴族に対して、意見を言ったら投獄された。
ボルグが投獄された以上、アレを止めれるものがいない。
全ての結果は、ギルドの依頼での約束通り。
父を討伐した責任は、息子ボルグが責任を負うという旨の内容だった。
手紙を読み終わり、男に質問した。
「ボルグ様が投獄されたのはいつですか?」
「ハジメ様が、当家に挨拶に来られて3日目の事でした。
坊ちゃんは、貴方が寄越した高額の贈り物には、注意を呼びかけているものだ。
と、旦那様に意見をされまして」
「それが通じなかったみたいですね」
「はい、このような多額のものを贈り物として出せる。
商人ならば金は、いくらでも持ってるから施設の建設を急がせる。
更に脅して娘三人奪うと宣言されまして」
「うわ、酷いな……。それで、どうなりました?」
「坊ちゃんは、あの贈り物は我々に対する脅しだと意見された後に旦那様に投獄をされました」
「ということは、ボルグ様が投獄される前から、こっちに嫌がらせに来た兵士達は先にサドタの街を出てたんですね」
「はい、それに気づいて坊ちゃんも考え直すよう動かれておりました」
「えっと、あなたはボルグ様の執事なのかな?」
「はい、私はボルグ様の執事を務めるセバスチャンと申します、セバスとおよび下さい」
「セバスさんね、これが本題なんだけど。セバスさんが、こちらに来るときにリストア様は、どれくらいの兵を用意してました?」
「城にもともと配備している、兵2000と、外部から3000を用意している様子ですね」
「外部ってのは、ギルド?」「いいえ、街の警備兵とかそういう連中です」
「そっか、なら仕方ないね……セバスさんが、こっちに来る時は、リストア様は、兵士は動かしてない状態だよね」
「はい、ボルグ様二度目の投獄で、これは危ういと思いましたので手紙を持ってまいりました」
「セバスさん、良いタイミングで来てくれたと思うよ。リストア様が出立して、その日の夜にボルグ様を救出に入る予定だ。手伝いをしてもらえるかな?」
「はい、喜んでお手伝いさせていただきます」
「そこまで、状況が進んでるなら。
明日か明後日には、リストア様は大軍率いて私を、脅しに来るんじゃないかな。
そこから到着までに、5日〜6日かかるがな」
「セバスさん、長旅でお疲れでしょうし。お風呂にでも入って今日はゆっくりやすんで下さい」
「ありがとうございます」
「アリア、セバスさんを風呂に案内して、風呂を沸かして来てくれ」
「はい、ご主人様」
アリアが、セバスを案内して風呂に連れて行った。
「さて、みんなも状況を聞いたと思うけど。
現状はこんな感じだ」
「何か質問ある人いるかい?」
「あの?お兄さん一つ聞いて良いですか?」
「どうぞ」「貴族の息子さんを、助けにいく理由は?」
「それは、簡単な事だよ。役に立たない貴族を、それを見かねた有能な息子が処罰したという形にしたいだけさ。こっち側にいてくれるだけで立場が変わるさ」
「ハジメさん、気になったんですけど、どうやって? サドタの街から兵が出たことを確認するんですか?」
「それね、最初は私が様子を見ようと思ってたけど、ギルドに協力してもらうことにしたんだ。
だから兵が動けば、ギルド長のマルコさんが、扉のノックもなしに飛び込んで来るさ」
「そうなんですね……」
「お兄ちゃん、この前、高台作るって言ってたけど? どういう事?」
「うん、この町は防壁がないからね。
守るとすると色々と大変なんだ、なんで魔法で壁を作るついでに高台を作って、相手の様子を盗み見てやるわけ、見える範囲なら魔法打ち込めるし……」
「「「あっ」」」
三人ともに、何かに気づいたみたいだ。
「三人とも、砂漠でのシェリーのアレを思い出したみたいだね。
そう高い所が、先も見通せて有利なんだよ。
だから、相手が見えてなくてもこちらは見える、まず戦闘になるわけがない」
と、3人の質問に答えた。
「他に質問はあるかい? ないみたいだね。
私としても、あまり人を殺める事は、したくない。
貴族の私兵に関しては、ある意味仕方ないかもしれないけど、一般の警備の人達とかは出来れば見逃したいんだよね。
それに私兵でも、逃げてくれれば追うことはしないから。
それの説得する人間として、ボルグ様に利用の価値がある」
「物凄い大事に、なってきましたね、ハジメさん」
「貴族と対峙するという事は、こういう事だからね。
民心も人心も掌握してこそ、一般人が勝てるってわけさ」
「「一般人の、考える事ではないと思います」」と、2名にツッコミを入れられた。
「エミリー、申し訳ないんだけどセバスさんの為に、夜食を作ってあげてくれないかな」
「はい、いいですよ。胃に優しいものが良いですよね」
「うん、そうしてあげて、きっと彼は疲れてるはずだから」
……。
…………。
それから、2日後の朝。
案の定、朝から騒がしい声が響いていた。
「ハジメ君!!ハジメ君、緊急事態なんだ」
と言って、ノックもせずに、食事中のセバスさんを含めて6人がテーブルについている時に、マルコさんが血相を変えて部屋に入ってきた。
「あー、マルコさん。おはようございます」
予想通りの反応だったので、皆落ちついていた。
「貴族の、兵士達が動き出しましたか?」
「なんで、それを? まだ伝えてないのに」
「そこに居る、ボルグ様の執事さんが手紙を届けてくれたので、そろそろ動くだろうと予想してました。
一つ確認したいのですけど、リストア様が指揮執ってる形です?」
「あぁ、そうだ……」
うんうんと、私は頷いた。
「だそうですよ、セバスさん。
今日の夜にでも、ボルグ様を迎えにいきましょうか」
「ハジメ君一体何を、考えているのかい?」
「囚われの貴族様、救出作戦ですよ。
囚われのお姫様じゃないのが残念ですけどね」
先日エミリー達と話をした作戦を、ギルド長に簡潔に説明をしてあげた。
「ハジメ君が、城壁を作ってくれるのか。
それは安心だな、ギルドで集めている人員は、どう配置しようか?」
「んー、そしたら1枚目の壁は薄めに作って、破らせて2枚目の壁との間にでも濠を掘って水を入れときましょう」
「内側の壁の城壁から、弓を打ってもらえれば勝てるかなと。
あと、そこまでは破らせるつもりはありません、その手前で終わらせますよ」
「いいね、君は本当に商人にしておくのが勿体ないよ」
「いいえ、商人が性に合ってるんで……。
そしたら、今日は壁作り始めますね。
ファービレジ方面には通路開けてますけど、極力サドタの街への移動は控えるようギルドから呼びかけてください。
あとミルコさんにも、同様に伝えておいて下さい」
「ギルドに、何かできる事はないか?」
「そしたら、城壁と濠が完成したら、濠に魔道具使って水入れといて下さい。」
「セバスさん、今日の夜に作戦決行ですよ。準備しておいて下さいね」
「はい……」
と、セバスと最後に話をして、皆解散した。
朝方は、いつも通り色々と回ってから、昼過ぎに、三号店の施設へ移動した。
金物屋に、プリン作りの際に注文していた、金樽をまず屋上に置いた。
その次に、配管室に配管と新しい金樽を置いて、配管室の野外側の壁を壊して[アースウォール]で、地面を底上げして高さを確保しつつ配管室の金樽置き場の広さを広げた。
壁は後でつけるからとりあえずは、解放しとこう。
最後に、男湯と女湯に人が入れるサイズの壺を三つずつ置いといた。
道具さえ揃えとけば、設計図はあるし、ドワルド達なら仕上げてくれるだろう。
さて、余った時間は壁作りだ。
まずは、内側の頑丈な壁を作ろう……。
上に登りやすいように、階段も内側に作っておこう。
町を囲むように、丈夫な外壁が出来上がった。
(一箇所は、通路を開けている、魔力視もあるし北の森の抜け道の兼ね合いもあるので問題ない)
しかも、四方に四箇所階段付きである。
次は、濠を掘る……。
城壁を囲むように、地面を「アースウォール」で削っていく。
ぐるっと、城壁の周りを回ってきた。
いつものお約束で、閉じ込められた……。
階段を片方くらいは作っておくか、ここは、ファービレジ方面だし問題ないだろう。
残りは、外壁のハリボテ壁だ。
自分が立つ場所だけは、頑丈にして置いてあとは、脆くしておこう。
狩りにも行かず夕方まで作業をしたせいかもあり、あっさりと城壁を完成させた。
濠の水はギルドの人たちに、任せるとしよう。
それじゃ、いい時間になってきた事だし、すこし休憩してから。
セバスさんと一緒に、貴族の息子救出に向かいますかね……。




