ゴブリンハンター
ビッグフロッグ狩りが出来ないだ……と。
よし、受付に並ぼう。
この前の受付さんだ……。
「貴方ですか、ビッグフロッグの討伐は受け付けてませんよ」
120匹と記入した時も驚いてたので、なにかをやらかすのか警戒しているようだ。
「ビッグフロッグ狩りができない以上、この近辺で良さげな依頼はないかい」
「それでしたら、北の森で薬草の採取とかは、どうですか?
回復薬の原料になるんで、いつも20ゴールドで買い取ってますよ。
ただし、注意点は森にはゴブリンが徘徊してるので気をつけてください」
「ゴブリンって強いんですか?」
「いえ、それほど強くはありませんが、ゴブリン特有の武器を持ってるので、その分苦戦するくらいでしょうか」
「ゴブリンを討伐した際、買取出来る部分は?」
「ゴブリン自体には価値ありませんね。
強いて言うなら、ゴブリンの持つ武器と魔石でしょうか」
「魔石?」
「魔石は、どのモンスターにも存在しますが、魔力が含まれているので魔道具の燃料に使われます。
ゴブリンの武器は2ゴールド、魔石の価値は、ゴブリンで1ゴールド、ビッグフロッグ・スライムは無価値ですね」
「ゴブリンを討伐した場合、魔石を抜いた後の処理はどうすれば?」
「放っておいて大丈夫ですよ。
他のモンスターや動物達が処理してくれますから」
「薬草というのは、どんな見た目してるんだ?」
ギルドの受付は棚から薬草を取り出し渡して来た。
「コレが薬草です。
コレに似た毒草もあるので一度、[鑑定]スキルを使って、識別してから買取を行います」
手に取った薬草を見てみると鑑定スキルが働き。
[薬草]の文字と効果表示される。
薬草:
回復薬の元となる薬草。
一つの薬草から5つの回復剤が作れる。
上級回復薬は、一つの薬草から1つの上級回復薬が作れる。
超級回復薬は、二つの薬草から1つの超級回復薬が作れる。
ただし、専門の技術が必要になる。
鑑定の結果が出て、薬草の知識が表示された。
薬草の確認ができたので、借りた薬草を受付さんへ返却した。
「それじゃ、北の森に行ってみるとするよ」
冒険はしたくないのに、何故? ギルドの依頼を受けるのか?
そんなのは決まっている。
商人なのに、[魔法使い]の半分チート状態。
ステータス面でも、[魔法使い]の弱点である[体力]が、商人のステータス仕様と二倍効果でよく伸びるし。
お金も稼いで、[異世界取引]のスキル枠拡張も出来る訳だ。
そんなの、やらない理由がないわけがない。
身の危険さえなければ(冒険しなければ)、別に問題はないのだ。
コレは、ある種の先行投資みたいなものなのだ。
流石に異世界でまで、俺は[魔法使い]を続けようとは思っていないのだから……。
そんな事を、1人で考えていたら。
受付さんに、
「最後にもう一つ注意です。
北の森へ行くのなら、奥の方に洞窟があるのですが、そこはゴブリンの巣になってます。
ゴブリンの巣の奥には、ボスゴブリンがいますので注意してください。
ゴブリン達に獲物として捕まった場合は、まずボスゴブリンの所に献上されるようです」
「ああ、そんな所に予定ないんで大丈夫ですよ」と、言ってギルドをあとにした。
北の森ねぇ……。
ビッグフロッグ倒してた時に見かけてはいたが、スルーしてた場所だ。
森だと木が多くて、槍を振り回すにはちとキツいかな。
残念ながら武器を変えないとな、森で使う武器のイメージは弓だが扱えないし。
まず、魔法のランス系が弓と変わらない。
なら、ナイフだが得物が短くなると事故の原因になるし、妥当な所で剣だな。
武器屋へ行き新しい武器を探すことにした。
「この間、鉄の槍を買った、にーちゃんじゃないか!」と、武器屋の主人に声をかけられた。
「この店で、一番高い剣を見せてもらえないか?」
「にーちゃん、何と戦う気なんだ?
ウチで最高級はコイツだねと、1500ゴールドの鋼鉄の剣を提示して来た」
「あぁ、それくらいなら安いもんだ」と言う、俺の発言に主人が困惑した表情をする。
「ちょっと待ちな、にーちゃん。
いや、お客さん。コレが安いと言い切ったな?」
「まぁ、この前の一日分の稼ぎ以下だったしな」
「ならコイツは、どーだ。
ウチの店の目玉のミスリルの剣」と、ミスリルの剣をショーケースから主人が取り出してきた。
鋼鉄の剣とミスリルの剣を見比べた……。
鋼鉄の剣 :攻撃力50
特殊効果無し
ミスリルの剣:攻撃力60
特殊効果 :魔法伝達率が高いため魔法攻撃に使用できる。
「いくらだ?」
「お客さん聞いて驚くなよ、4000ゴールドだ!!」
「よし、買おう(即決)」
先日の2400ゴールドと、ファービレジの村で、稼いだお金があれば余裕で払えるからだ。
1600ゴールド位なら、2~3日狩りをすれば届くだろうし。
最終手段は、ファービレジのギルドにカエル肉を卸せばいけるだろ……と、算段を立てていた。
「お……おう。そうか、 まいどあり」と、主人が驚いていた。
4000ゴールドを店主に渡し、ミスリルの剣を受け取った。
想像していたより、この武器は軽い気がする……。
「にーちゃん、何を倒すつもりで、その武器を買うんだ?」
「ゴブリンだ!!」
「へぇ!? こんな一級品をゴブリン相手に使うっていうのかい!!
てっきり、ドラゴンでも相手にするのかと思ってたよ」
「まさか、俺は商人だからな。
そんな冒険はしないさ……」と言って、武器屋をあとにした。
その後に、道具屋によって回復薬の補充を済ませた。
よし、行こう!! 北の森へ!!
道中、ビッグフロッグを見つけたので防具を外して、ビッグフロッグに捕食の為に近寄らせた。
俺を捕食しようと襲いかかってくる蛙を、ミスリルの剣で斬りつけた。
鉄の槍とかの威力の比じゃなかった。
使い慣れていない剣での戦闘だった為、攻撃は軽くかすったような感じだが、それでもビッグフロッグは絶命した。
この武器は、もしかして鉄製品の強度なら切れるかもしれないと、あまりの威力に思ってしまった。
準備運動(ビッグフロッグ戦)もすみ、北の森へ到着した。
ここからは、MAPを確認しながら進むことにした。
森に入ると、木々が覆っていて少し薄暗い感じがしている……。
ちょっと暗かったので、[ライト]の魔法を使い周りを明るくした。
そのまま、探索を続けていると薬草を見つけることが出来た。
なるほど薬草は、普通に地面から生えてるんだな。
あ、あそこにも!! って、似たような毒草もあった。
[鑑定]スキルが活躍しまくって、薬草集めに精を出していたが……。
俺の近くで、「ギイギイ」となにかの叫びが聞こえる。
近いな……。聞こえた方に視線をやると、茂みがガサガサと揺れ始めた。
ナイフを持ったゴブリンが4匹現れた!!
ゴブリン4匹が俺を囲むように近寄ってきた……。
俺に敵意を持ってきたゴブリンは、間合いを取ってきた。
けど、そこで距離で間合い取るのは、愚策だぞゴブリンども。
剣を構えたままゴブリンに向けて、[ファイアランス]を放った。
炎の矢はゴブリンの体を貫いて、そのまま後ろの木を燃やした。
あっ、やべ……。
ゴブリンと間合いを取りつつ、木に[ウォーター]を使い火を鎮火した。
森で、炎系の魔法は危険だな。
今後、気をつけよう……。
剣を再び構えると、ゴブリン達が後ろに下がる。
下がってもらっても構わないが、こちらが見えてる時点で魔法の射程範囲なんだよなあ。
[アイスランス]を、ゴブリンに向けて放った。
ゴブリンの体を、氷の矢が貫きゴブリンは絶命した……。
一匹は、そのままの位置で間合いを取ってきたが、残りの一匹がこちらに向かって襲いかかってきた。
俺があからさまに構えてんだから、そんなわかりやすい特攻なんかしたら。
武器ごと、斬りはらうだけだよね……。
得物の長さ違うのだし……。
ゴブリンの持つナイフごと、ミスリルの剣はゴブリンを切り裂いた。
えーと、これはつまり背後と頭上さえ取られなければ。
ゴブリンに負けることはないな等と考えてたら。
残り一匹のゴブリンは逃げ出した。
逃げたのなら仕方ない、放っておこう。
そのまま探索を続け、ゴブリンとの戦闘を繰り返し、森で薬草を集めていたら。
順調に、北の森の攻略が進みゴブリンの住処の洞窟を見つけた。
洞窟に試しに入ってみたが、ボスゴブリンを倒すつもりもなかったので、そのまま引き返した。
MAPに洞窟の場所が書き込まれた。
一応チェックを入れておこう……。
そのまま、ゴブリン討伐と薬草集めを続け夜になろうとしていた。
ああ、そろそろ帰らないとな。
もともとが森自体が薄暗いので、[ライト]の魔法を使っていたため、時間がわかりにくかったのである。
ゴブリンの特徴として、単体での戦闘はほぼなかった。
そのせいもあり討伐数がおかしかった……。
魔法で倒した分のゴブリンは、ほぼ魔石が吹っ飛んでおり魔石の回収ができず。
ゴブリンナイフ180魔石100を回収することができた。
薬草も50個程手に入ったので上々の結果である。
レベルは、当然のように上がっていた。
レベル8から4つ上がりレベル12になっていた。
支援系の魔法を三種類とスキルを一種類を覚えた。
・場内転送(町のマップを指定して移動することが可能)
・ホーリーライト(聖属性魔法)
・ヒーリング(状態異常回復)
・MP回復上昇
攻撃系の魔法と二種類とスキルを一種類を覚えた。
・場外転送(場外(通常)のマップを指定して移動することが可能)
・エアカッター(複数の風の刃を作り出す攻撃魔法)
・MP回復上昇
スキルのMP回復上昇が被ってる、もしかして効果二倍?
まぁ、これで[異世界取引]のスキル枠も12になったわけだ。
まだ半分も使ってないし、何かを選ばないとな……。
あと、戦闘で試したことは素手で魔法を放つより、ミスリルの剣を経由して放った方が魔法の威力が出た。
純粋な魔法使いなら、杖という選択もあるだろうが。
商人である自分は、ミスリルの剣のような魔法特性のある武器が相性いいのだろうと考えながら。
覚えたばかりの[転送魔法]を使い、[セカンタ]の町へ帰るのであった……。