献上品
朝だ……。
昨日よりは幾分、体調がいい感じだ。
シェリーがとなりに寝ていた。
シェリーは我慢してくれたのか、ただ心配してくれたのかわからないけど、一緒に寝てくれるだけで済ませてくれたのは助かった。
「シェリー、ありがとね」と言って、横顔に軽くキスした。
目をパチリと開けたシェリーが抱きついてきた。
寝たフリか……。
仕事に行くまで時間あるし、なでなでを続けよう。
私の平常心の為に……。
しばらく、甘やかしていたら。
「ハジメさん、シェリー。そろそろ起きてください」と、エミリーから呼び出しを受けた。
「「はーい」」
二人で食事スペースへ移動した。
「おはようございます」と、皆に挨拶した。
「今日は、体調良くなったみたいですね」と、エミリーが言ってきた。
「あ、体調悪いのわかってた?」
「はい、流石にあれは見過ごせなかったので、キャリーとアリアには注意しましたよ」
「お兄さん、ごめんなさい」
「ご主人様、申し訳ありません」と、2名が謝ってきた。
「いや、こちらこそゴメンね。いつまでたっても進展できずに……」
「いえ、ハジメさんが頑張ってるのはわかっていますから」
「ちょっと、体調が優れないから一緒に寝るのは問題ないけど。
今のところ、ご奉仕は勘弁してほしいかな……」
「わかりました」と、納得してくれたみたいだ。
食事を済ませて、ジッパーさんに配送完了の旨だけ伝えて、通常業務を済ませたら昼過ぎになった。
昼飯をみんなと一緒に取った後、[転送魔法]でお屋敷へ移動した。
ノルニルさんに、挨拶してから教会に移動するかな。
お掃除の真っ最中で、色々とバタバタとしているリリスの姿が見えた。
リリスが私に気づき、「お兄ちゃん、おかえりー!!」と飛びついてきたが、それを手で止めて回避した。
「今から、仕事だから色々と拙いから。昼間は止めてくれ」
「解ったー!!けど、お掃除頑張ってるから褒めて褒めて!!」
とりあえず頭を撫でてやった。
「無理しない程度に、頑張ってね」
「そういえば、ノルニルさんが昨日から来てると思うけど」
「新しいお姉ちゃんの部屋、聖域になってて私は入れないよ」
あぁ、十字架持ってたし。教会の関係者なんだろうな。
「そっか、そしたらノルニルさんに挨拶してから、仕事に行くから二人とも仲良くするんだよ」と、いってこの場を離れた。
確か、この部屋は元空き部屋だったから。
人の気配もするし……ここだろう。
閉まっている扉をノックした。
「ノルニルさんいます?」
「はい、居ますよ。どうぞ入ってください」
ノルニルの部屋に入る。
なんか明るい部屋だ……。
「物凄く明るい部屋だね。リリスがこの部屋が聖域になってるって言ってましたよ」
「サキュ……リリスさんですか。
魔除けの札を設置していますのでそのせいでしょう」
さっき、サキュバスって言おうとしたよな……。
「あの?ノルニルさん?
リリスがサキュバスって事は知ってる?」
「知っていますよ!!
何度も注意してるのに、二階堂さんがサキュバスの相手を続けているのも」
また匂いか? それとも勘か? 女性は敏感だからな、すぐ気付くからなあ。
「二階堂さんに良いことを教えてあげます。
サキュバスの相手を毎日続けさせて、家族の不仲を引き起した挙句、その相手も衰弱させて殺す拷問もあるんですよ」
「もしかして、私その状態なんですか?」
「はい、そうです。
二階堂さんもあの子を気に入ってるみたいだし、一度あの子を預かったお店で色々と聞いてみたらどうですか?」
「そんなお店があるのも、知ってたんですか?」
「えぇ、この街は庭みたいなものですから」
「ノルニルさんの助言通りに、あのお店に仕事終わりに行ってみるよ。
教えてくれてありがとう」
「力になれて何よりです……」
「でも、なんで口ごもってたの?」
「そんな拷問方法とか知ってたら、変じゃないですか」
「へぇ……そういうものなんだねぇ」「そうなんです」
「それじゃ、新しい武器できたらさ。また一緒に狩りに行こうよ」
「それなら、夜のロックバレーとかどうですか?
スパイクバードの鶏肉はかなり美味しいですよ」
「マジ?」「はい、アイスバードの肉に勝るとも劣らない味ですよ」
「武器完成したら、一緒に行こう!!」
「はい、楽しみにしてます」
ノルニルさんと会話をした後、教会へ向かった。
教会で受付を行い、教皇様に会いに行った。
「やぁ、よく来てくれたね。
それじゃ、国王陛下に献上品を届けに行こうか」
「そうですね……」と言って、教皇様の後をついていった。
それから馬車に乗り、しばらく移動すると城に着いた。
そのまま後をついていくようにして、徒歩で移動し国王のいる部屋に着いた。
「よく来てくれた!!教皇と二階堂君」
「この度は、前々から献上する予定でした。
透視眼鏡が完成しましたので、献上に参りました」と、教皇が言った。
「良い良い、事の顛末は全て聞いておる。
今回も、そこの二階堂君がやってくれたのだろう」
「はい、丁度二人組みで東の砂浜で狩りをしていたところ。
シースルーという。人真似をする悪魔型のボスモンスターに出くわしました。
ただ、苦戦の末なんとか手に入れた魔石にてございます」
「ほぅー!!詳しく聞きたいところじゃが、教皇よ、先に例のものを……」
教皇は透視眼鏡を国王に献上した。
眼鏡をかけて、あえて男は見ずにメイドの女性を見始めた。
まぁ、国王があえて男を見ないのもわかる。
「ふむふむ良い出来じゃ、教皇よ大義であった」
「二階堂君、今から教皇と話があるので娘の話し相手をしてやってくれないか、入り口の所で今か今かとソワソワして待っておるわ」
「ははは、わかりました。
私も王女様と会えるのを楽しみにしてました。
「そうか、そうか」
「ハジメ君、例のものを渡さなくてよかったのかな?」
「あっ、そうでした。
お屋敷のお礼に、私が過去倒したモンスターで一番苦戦したモンスターの魔石を国王陛下に献上したいと考えております。
受け取っていただけますでしょうか!!」
「ほう、面白いの!!マーガレットよ、せっかくだからこちらに来なさい」
「はい、お父様」と言って、国王の横へ移動して来た。
マジックバッグ(仮)から、デスワームの魔石を取り出した。
その後に、討伐した時の話をしてから国王へ魔石を献上した。
「ラッキーインセクトの上位魔石ですので、永続的に使うような魔道具に最適だと思われます」
「なるほど、実用性もあっての献上か? そうか誠に大義である」
「ありがとうございます」「それでは娘の話し相手をしてやってくれぬか?」
「わかりました。
マーガレット様、それでは案内をお願いできますか?」
「はい、着いて来てくださいね」
王女様の後をついていく、しばらく歩いた所で王女様が止まった。
「ココです」「失礼します」
王女様が扉を開けたので、一緒に入らせてもらった。
部屋の中には、この間のメイドさんもいるな……。
「二階堂様、とりあえずそこの椅子におかけください」
「はい、ありがとうございます」と、言って指定された椅子に座った。
その対面に王女様が座った。
「今日は何の話をしましょうか?」
「二階堂様は、ドラゴンという生き物を見たことございますか?
とても強くて、兵士や冒険者では歯が立たないと聞きますが?」
「1匹ですが討伐して原型を残している、アイスドラゴンがこのバッグの中に入ってますよ。
後、枝肉済みのランドドラゴンもこのバッグに入ってます。
メイドのお姉さん、ちょっと来てください」
メイドさんが近づいてきた。
「どうされましたか?」
「ランドドラゴンの肉を、提供してもよろしいでしょうか?
国王陛下と王女様の料理に使って頂ければと思いまして」
「わかりました。
乗せるものを用意します、確認をした後に調理したいと思います」
一度部屋の外へ出て、肉を乗せる受け皿が乗ったカートをメイドさんが持ってきた。
「この受け皿の上に乗せればいいですよね?」
食べやすくて、美味しい所の部位を載せておいてやるかな。
ドラゴンの肉を取り出して、受け皿に置いた。
「二階堂様、コレがドラゴンのお肉なのですね」
「はい、一番美味しいって言われてる部位を選ばさせて頂きました」
「お嬢様、私はコレを冷蔵庫へ持っていきますね」
「はい、お願いします」
王女様との話はまだまだ続いた……。
明日8/19日は5話投稿します。
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5話投稿を行います。