〇豚は異世界に出荷される。
俺、二階堂 始(30)は、ごく普通のサラリーマンである。
俺の数少ない趣味は、アニメBDの収集である。
とあるスレッドで私は貴族と扱われていた。
そのとあるスレッドでは、作品に対して熱い議論が行われるでもなく、その作品の売り上げに対してのみ熱く議論が行われるという、ろくでもない場所なのである。
アニメファンも敵に回し、更に製作者さえも敵に回す。
そんな、はた迷惑なスレッドこそ【売〇スレ】である......。
売り上げを語るうえで円盤の購入者は、アピールするために購入した円盤の写真を証拠として、スレッドにアップロードする。
そのスレッドでいう、貴族というのは、毎年4クール(春夏秋冬)の期間に、沢山のアニメ作品が始まっているに関わらず、欠かさず毎クールごとに新規作を何本も購入しスレッドに、証拠アップロードする連中の事である。
二階堂始は、そんなアンダーグラウンドなスレッドの住人であった。
今日も仕事が終わり家に帰って来たが一人暮らしだ。
当然のように誰もいない……寂しい。
寂しさを紛らわせるように、今月発売分の購入した円盤をスレッドにアップロードする準備を始める。
沢山購入した事をアピールをするため、商品タイトルを立てたり有名タイトルは平積みで置いて、糞タイトルをさりげなく配置したりする。
コレが二階堂流、インスタ映えならぬスレッド映えする配置だ!!
スレッドのユーザーIDも忘れずに円盤の上に紙に書いて配置しておく。
スレッドに【今月の購入分】と、書き込みを残し撮影した写真をアップロードする。
スレッドに、【貴族キター】等の書き込みが流れる。
【おい、この貴族あのクソアニメ買ってんぞ絶対合成だろ。】と、書き込みが来たので。
単品で、わざわざ撮影し【ID】も載せて再度画像をアップロードした。
書き込み者が、【あっ、すいません。】と、書き込むが。
これは許されないよね……という流れになった。
売○スレ的にも円盤貴族的にも、コレは非常に面白い展開だ……。
【そうだねこれは、君が思う最悪の作品でも買って来てもらおうか。】
と、俺は、悪魔のような宣告をするのであった。
(俺を疑ったばかりに、クソアニメを買って6000円をドブに捨てろの意味)
一連の流れで、書き込みが落ちついてしまい。
【逃げたな、逃げたな】等の書き込みが続く中。
【買ってきた......】と書き込みが。
【ID】と領収書付きで累計売上本数が、ものすごく低い作品をアップロードしてきた。
こんな馬鹿な流れが好きで、俺はこのスレッドの住人をしている。
そんな俺だが、これが無駄な事であることは解っている。
こんなクソみたいなスレの評判より、彼女が欲しい。
それでも、貴族生活を辞めれない……。
来期の作品の購入予約を通販でやるかと、通販サイトを開いてパソコンをみていたら。
急に眠気が……仕事明けで疲れてるからかな……?
そのまま、パソコンデスクに突っ伏した。
こうして俺、二階堂始の人生は終わったのである。
パソコンの前で眠ってたはずなのに何処だここ?
家じゃない? やけに明るすぎじゃないかと状況を飲み込めず困惑する。
……。
…………。
しばらくして人がいることに気づいた。
あっ、綺麗なお姉さんがこっち見てる……。
「二階堂始さん。始めまして」
初対面なのに、お姉さんに名前を言われてしまったぞ。
どういう事?
俺の聡明な頭が計算した結果、美人局かなと判断した。
「いや、そういうの結構なんで……。
あと、もっと若い子の方が好きです」
お姉さんがあからさまに、イラっとしている。
「美人局じゃありません」
え? 何も言ってないのに、この人エスパー?
「エスパーでもありません」
「じゃぁ、あなた誰? 俺の知り合いにお姉さんみたいな人いないと思うけど」
独男(独身男性)だし......。
「私は、ノルンと言います。所謂、女神です。
あなたに、単刀直入に申し上げます。
二階堂始さん、貴方は誰もいない部屋で一人寂しくお亡くなりになりました」
「えっ!?」
いやまてまて、30過ぎるまで童貞続けてきてるんだ。
魔法使いになる権利があるはずだぞ、その前に死にましたって冗談だろ。
女神に考えをそのまま読まれてしまい。
「貴方は魔法使いにはなれませんでしたが、それに近い事は提案できますよ。
私は運命を司る女神です、あなたに二つの選択を与えましょう」
続けて女神は提案を話しだした……。
「1つめは、新しい肉体を与え、1からやり直す俗にいう輪廻転生です。
2つめは、貴方の知識を残したまま異世界で生き返る。
この二つの運命の選択をあなたに与えましょう......。
そうですね、異世界だと知識はあってもその扱いに困るでしょうから。
異世界での成人年齢の16歳からのスタートってのはどうでしょう。」
「新しい肉体って、記憶は?」と、俺は聞き返した。
「輪廻転生の流れに乗るのです。当然、無くなります。
新たな個としての人生を送っていただきます」
ちょっとまて、異世界とか転生とか何言ってんだこの人、頭おかしい人かナニカか?
「二階堂さん、あなたの考えてる事は筒抜けなので余計な事は考えないように」
完全に頭に来ている様子だったが、そこはあえてスルーした。
「あなたが仮に女神だったとしましょう。
異世界とか行っても俺は戦えませんよ」
「わかりました、異世界に行く際一つあなたの希望を聞きましょう」
キタキタ、異世界転生あるある。
だが、残念だったな。能力一つ位あっても俺は動かんぞ。
「最初に聞いておきたい、異世界で魔王と戦えとかそういった制約は?」と、俺的重要事項の確認を取った。
「ありません、他の転生者もいますので。
そちらの方があなたより有用でしょう」
さらりと酷い事をいう女神だ。
「酷い事思ってるのは、貴方も同じです……」と、小声でぶつぶつと女神様が言っている。
うーん。俺が戦う必要がないなら異世界もありか?
「それなら女神様、異世界で「日本」の商品を取引をできる能力って可能ですか?」と、俺は女神に質問した。
「可能です。ただ取引をするとしても、異世界の通貨が使えないので無意味ですよ」
と、あっさりと答えられた。
むむむ……。他が思いつかない。
仕方ないので駄目もとで、「能力二つもらえませんかね?」って、聞いてみた。
「それなら、最高レベル99を上限レベル50に落とす事で、2つの希望をかなえましょう」
「じゃぁ、希望二つで【レベル上限50】でお願いします」と、俺は即答した。
「えっ、ホントにいいんですか?」
どうせ、俺は戦わないんだレベルの上限等あってないようなものだ……。
「いいのいいの、一つ目はさっき言った[異世界からでも【日本】の商品を取引]できる能力。
2つ目は、異世界の通貨と日本の通貨を[外貨両替]できる能力だっ!!」
勝った、俺!!最終章......。
「では、レベル1上がる毎に1種類扱える品数が増えるようにしましょう」
「ちょっと、まったぁあああ!! 」
「なんですか、急に……」
「1種類というのは、[漫画]を希望したらどの[漫画]でも大丈夫なのか?」
「そうですね、そのあたりは幅を持たせましょう」
「そうかならいい。
あの漫画の続きが気になって、異世界転生するにできないところだったよ」
呆れた感じに、女神が苦笑している......。
「そのあたりは、あちらに 行ってから 詳しく確認してください。
それでは、異世界転生を希望でよろしいですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
女神が羽衣の一部を切り取り、俺に巻き付けてきた。
「何してるんです?」
「異世界に送りやすいように[加工]してるの......」
グエッ、苦しい死ぬ……って、俺死んでたんだった。
グルグルグル……。(羽衣をひたすら巻いている)
「できあがりー。
売り豚は、異世界に出荷よー」
「(´・ω・`)そんなー!」
こうして俺は、異世界に転生もとい出荷されていくのであった。