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紅の魔導書  作者: 遮那王
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-第一章- 【楽園】

世界が複数に別れた理由。


それを話すには、天界で起こったある反乱について説明しなければならない。


かつて人間は、神の創り上げた楽園に存在していた。


神は人間を愛していた。一部の天使たちが嫉妬を覚えるほどに、人間という自らの子を愛していた。


楽園、エデンの園。


そこで暮らす人間は永遠の命を持ち、何も考えず、何もせず、ただただ幸せに日々を過ごしていた。


神をその人間たちの様子を見、愛で、ついに天使たちを集め、ある宣言をした。


「お前たち天使は、人間を幸せにせねばならない。人間を守れ。守り続けよ」


天使が、人間を守る。それはつまり、人間を天使より上位に置くということ。


この宣言を聞いて、人間に嫉妬を抱いていた天使たちの不満はさらに高まった。


そしてついに、反乱は起こった。


反乱の指導者は、天の副王、大天使ルシフェル。神の愛した二人の神子の片割れ。


ルシフェルは神の創り上げたあらゆる生物の中でも最高傑作と言っていい、創造主たる神をも凌駕する力を持った天使だった。


以前からルシフェルを信望する一部の天使たちの間では、神を廃し、ルシフェルを新たな神として立てようという動きすらあった。


だが、ルシフェルが彼らの言葉に耳を貸すことはなかった。


神がルシフェルを愛したように、ルシフェルもまた神を愛していた。


しかし、情勢は変わっていった。


やがて神は、ルシフェル以上に人間を愛するようになった。


その後はあっという間だった。


愛情は嫉妬に変わり、嫉妬は憎悪に変わった。そして神の宣言を聞いた時、ついにルシフェルの憎悪は決意に変わる。


「神は老いた! あの無能なる人間、ただ毎日を無為に過ごすだけの、あらゆる生物より劣るあの劣悪種を、神は我らより高位に置いた! もはや神に往年の能力、判断力はない! 今こそ、私は起とう! 神を廃し、私が新たなる神となる! 私に賛同する者たちよ、共に起とう! 私たちが新たなる世界を創造するのだ!」


このルシフェルの決起に天界の天使の三分の一が従い、天地創造以来初の大反乱が始まった。


この反乱に際し、神は二人の大天使に鎮圧を命じる。


「天軍の指揮者ミカエルよ、汝もゆくのだ! 武勇においてミカエルに次ぐガブリエルよ! 汝も共に……」


神の愛した二人の神子のもう一人、ルシフェルの双子の弟、四大天使の一、ミカエル。


天啓、智恵、慈悲、贖罪、約束の天使、エデンの園の支配者、四大天使の一、ガブリエル。


そしてついに天軍と反乱軍が激突した。


乱戦の最中、双方が疲弊し始めた頃、ルシフェルとミカエルは出会った。


「弟よ、共に来い! なぜ優良種たる我らが劣悪種たる人間に服さねばならぬ!」


ルシフェルの問いには答えず、ミカエルは淡々と降伏を勧告する。


「兄よ、今からでも遅くはありません。再び神に忠誠を誓いましょう」


「……馬鹿がッ!」


ルシフェルは剣を振り上げミカエルに斬りかかる。


目にもとまらぬ剣閃をよけ、横薙ぎに剣を振い反撃する。


ルシフェルとミカエルの決闘は熾烈を極めた。


天は裂け、地は割れ、万物の秩序が狂いだした。


しかし、それでも決着はつく。


ミカエルの振り下ろした一撃は、受けたルシフェルの剣を真っ二つに折り、続けて繰り出した斬撃が、ルシフェルの脇腹をえぐった。


ルシフェルは敗れ、反乱は失敗。


ルシフェル、及びルシフェルに加担したすべての天使は天界を追放され、堕天される。


ルシフェルは“エル”を含むすべての称号を剥奪され、ルシファーと名を変えた。


やがて地獄の王、魔王サタンとなったルシファーは、神からの寵愛を奪った人間に怒りの矛先を向ける。


蛇に化けたルシファーは、エデンの住人イヴを唆し、禁断の果実を口にさせた。


人間は永遠の命と引き換えに考えることを覚え、感情が生まれ、やがていがみ合うようになった。


そのことを悲しんだ神は楽園を解体し、いがみ合う人間たちを隔離する目的で、世界はいくつかに分断された。


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