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紅の魔導書  作者: 遮那王
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-第一章- 【港町】

日が暮れようとしている。


遺跡から出たクレルは、うしろでやる気なさげに浮遊する紅魔を引き連れ街を目指していた。


「ふぅん。つまりあんたの姿が見えるのはそこそこの修練を積んだ聖職者や黒魔術師ぐらい。一般の人にはあんたが姿を見せようとしない限り見えないってわけね?」


「ああ……」


暗い。


その様子に、やれやれとファラは肩をすくめる。


「イヤなら契約なんてほっぽって帰んなさいよ。あたしは別にかまわないわよ?」


「んな事してみろ。俺はお前の孫が人生を終えるまでと同じくらい、長い期間の独房行きだ」


「へぇ……。そっかぁ、帰れないのかぁ……」


ファラがそう呟くのを聞いて、紅魔はしまったと思った。


帰れないと知れればどんな無理難題をふっかけられるかわからない。


後悔が、これから送らねばならない途方もない年月の束縛と相まって絶望へと変わっていく。


「よりによって……」


紅魔は恨めしげな視線をファラに投げかけた。


「……この性悪を絵に書いたようなやつが俺を召喚して、しかも死ぬまで仕えろだって? 冗談にも程があるだろ……」


「紅魔」


悪態をついてしまってから、ハッとする。


「い、いや! 今のナシ!」


「そのまま頭から地面にダイブしなさい」


慌てて弁解するも無惨な結果に終わった。


振動に驚いて、脇に立つ木々から鳥が数羽、飛び立っていった。


その羽音を警戒するように顔を上げたファラが、少しホッとした表情に変わる。


「あ、見えた。あのアーチをくぐれば目的地、港町トーリアよ」


細かな細工が施されたアーチと高くそびえる十字架が、天地の逆転した紅魔の視界に飛び込んでくる。


「教会があるのか……」


「心配しなくていいわ。あたしだってこの格好の時はお尋ね者なんだから。わざわざ死地に飛び込んだりしないわよ」


教会はある程度大きな街には必ずと言っていいほど存在する、街の支配機構であり治安警察だった。


教会には聖騎士(パラディン)と呼ばれる憲兵が常駐し、犯罪者の確保や悪魔祓いなどを行っている。


彼ら自身、騎士である前に修道士である。紅魔の姿を見る事など造作もないだろう。


「そんなに心配しないの! あの街にはちょっとしたツテがあるから、少なくとも他の街よりかは安全だわ」


そう言いつつも大事を取ってか、アーチをくぐってすぐに大通りを避け脇道に逸れるファラだった。

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