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紅の魔導書  作者: 遮那王
11/13

-第一章- 【初陣】

「さっきの誰だ?」


割と大きな船の甲板で紅魔がファラに尋ねる。


「あたしの執事のお兄さん。昔から可愛がってもらってたの」


「執事ぃ? なんだお前、結構リッチな生活してたんだな」


「そりゃそうよ。あたしの親って爵位持ちの貴族だもん」


「はぁ? どんな冗談だそれは。寝言は寝て言えよ。どうやったら貴族の令嬢がこんなならず者になるってんだ」


「ぶん殴られたい?」


握り拳を紅魔の眼前に突き出す。


「お前のうすのろパンチなんか俺が喰らうか」


「紅魔、そこを動くな」


ファラの放った言霊が、紅魔の体を硬直させる。


「な、殴ったら化け物退治やめるぞ!」


「そんな事したらあんた独房行きでしょう?」


「うっ……」


紅魔が反論するより早く、ファラの拳が顔面にめり込む。


「ってぇ! このバカ女、いつか覚えてろよ!」


顔面を押さえながら紅魔が怒鳴る。


「負け犬の遠吠えってやつかしら? 情けないわねぇ」


「てめ……」


「そろそろ危険海域です!」


紅魔の言葉を遮って、操舵室から声がかかる。


「はいはーい。ご苦労様。じゃ、あとはよろしくね」


そう言って甲板を降りて行く。


その後姿を苦々しげに睨みつける紅魔だが、その視線はすぐに外れる。


人間には感じ取れない、わずかな風の匂いの変化。こころなしか船が大きく揺れている気がした。


「早速お出ましか」


黒い、船の数倍はある巨大な影が凄まじいスピードで船に近付いてくる。


「どんな魔物だろうが……」


船の脇に来た影は見上げるほどの水柱をあげ、海水の雨を降らせる。


現れたのは巨大な海竜の首だった。


「“十二枚の翼”を持つ俺様に勝てると思ってんのか」


紅魔がその漆黒の翼をひとつ大きく羽ばたかせると、無数の黒い羽があたりを舞った。


「かつて神をも凌駕した魔族の力、思い知れ小童!」


紅魔が指をパチンと弾くと、羽は刃と化し舞のごとく海竜を切り刻む。


首を振って抗う海竜の目に次に飛び込んできたのは、鋭い爪を持った紅魔の人差し指と中指が自らの目に向かって振りかざされているところだった。


次の瞬間、思わず耳を塞ぎたくなるような海竜の絶叫と共に、大量の血が海を赤く染めた。

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