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お約束は重要

「おはよう」

「あ、もう大丈夫なの?」

「ああ、すこぶる快調だよ」

「それは何よりね。じゃあ朝食もうすぐ出来るからテーブルに着いて待ってて」

「ありがとう」

「どういたしまして♪」


ニースは下半身から触手が生えている半タコ人間のスキュラだ。

この世界のスキュラが全てそうなのかは不明だが、

しかし、地上での動きもその割には軽快であまり不便を感じさせない。

まあだからこそ地上に家を持っているんだろうが。

俺は、進められた椅子に座り食事が出来るのを待つ。

昨日はワカメとイセエビのスープという豪勢なものだったが、今日はなんだろう?

南洋で取れるものだろうから目が飛び出してる魚くらいは覚悟しておくべきだろうが。

彼女も気を使ってくれている、俺が食べられないものは出さないだろう。


「お待たせ、ウニとアワビのスープパスタです♪」

「おー」


思わず唸る、スパゲッティとはちょっと違う感じだがパスタ料理が食べられるとは。

というか、スキュラの彼女がここまで陸の料理が出来るのが不思議でもあった。

何せ海中で住んでいればこういう器に盛った料理を作る事はできない。

彼女らは食べる時は地上に出ると言う事だろうか?


「凄く美味そうだ」

「ありがと、遠慮せず食べてね♪」

「でも、スキュラは皆地上で料理をするのか?

 俺が食べられる料理でありがたいが、無理してるんじゃ?」

「無理はしてないよ、元々あたしは料理が好きだからね。

 でも、確かにスキュラでは変わり者かも?

 地上に家を建てて住んでるのは、大抵陸の種族とつがいになった子ばかりだし」

「陸の種族と番?」

「うん、スキュラは女性しかいないから」

「あーなるほど」


元の神話においては、スキュラというのは女性の名前だ。

元々は美女だったが、神の嫉妬を買って呪われたらしい。

まあ、その辺メデユーサやラミアと同じだ。

不幸な彼女らを元とした種族なのか、

たまたま似ている種族だから自動翻訳でそうなったのかは不明だが。

まあ、今は考えても意味が無いことだ。

スープパスタを食べ終えて片付けを手伝い出発の準備をする。

といってもナイフと革の鎧を装備してアイテムボックスを持ってくるくらいだが。


「まだ陸の商人が来るまでは時間があると思うけどちょっと里を見て回る?」

「そうしよう」

(ま、他にする事もないしね)

「あ、ティアちゃん来てたんだ」

(うん、いいよねニース?)

「ええ、じゃ行こっか。

 狭い島だけどね、流石に海中の案内するとなると準備もいるし」


そんな感じで会話をしつつ、島を見て回る。

とはいっても、島に家を構えているのは基本的に、

陸から婿を捕まえてきたスキュラだけなので件数は少ない。

後は、中央部にある山とその周辺にある小さめの森、そして砂浜だけだ。

島の大きさも直線距離で2~3キロといったところ。

無人島でもおかしくない程度の小さな島だ。

ただ、砂浜からの海は遠浅になっているため海中に住むには適しているとの事。


「島はそんな感じ島内に住んでるのはあたしも含めて53人。

 けど海中にスキュラとサハギンで500人くらい住んでる。

 だからそこそこの規模の里なんだよ」

「なるほど、ここの男手はほとんどサハギンっていうことか」

「そうだね」

(あー、魚人ですか。人魚と魚人の集落は珍しいですね)

「そうなのか?」

(昔はマーマンがいろいろな人魚系の種族と番になっていた気がします。

 後は、他種族との番が多かったように思いますね)

「なるほど」


海の神ラボトーンの眷属は多いとはいっていたが、色々あるんだな。

サハギンっていわゆる半魚人ってやつだろう魚に手足が生えたような。

確かに、人に近い感性してたらそんなのと結婚するのは嫌だろうな。

この里の人魚達の心が広いのか、それとも感性が人と違うのか。

そんな事を考えていると……。


「おい、そこのお前!」


突然声をかけられた。

そちらを振り向くと、ギョロっとした出目金のような目をもつ半魚人が俺を見ていた。

青い鱗に覆われた体、魚じみたでかい顔、手のひらには水かきと鋭い爪が備わっている。

そんな奴らが3匹、そう人と数えたくなくなる姿で俺に凄んでいる。


「なんだ?」

「お前、加護なしだろう?」

「加護なし?」

(どこの神の眷属でもないという意味だよ)

「なるほど」

「チビ、お前はどけ」

(凄い失礼だなこいつら……)

「ボナギ、ガドロ、バロド……」

「俺の何が気に食わないのかは知らないが、俺は今日にもこの村から出て行く。

 だから、放っておいてくれないか」

「加護なしのくせに偉そうに!

 何でテメエみてえのがニースの隣にいんだよ!!」


これは……チンピラくさいな……。

俺は砂浜を歩いて近づいてくるサハギン3人組を見てそういう感慨しか浮かばなかった。

現実味がないのかもしれない、以前チンピラに絡まれた時は直に逃げ出した。

今逃げないのは、恐らく彼らに同じだけの危機感を得られないせいだろう。

しかしま、ボナギだっけか彼の言いたいことはよく分かる。

つまり、愛しのニースちゃんの隣にいる俺が気に食わないって事だろう。


「ああん! テメエ、何余裕ぶっこいてんだ?」

「ボナギ! 彼はあたしの命の恩人なのよ!」

「そんな事は聞いてねぇんだよ!

 加護なしが堂々としてんのが気に食わねぇって言ってんだ!」

「キャッ!?」


仲裁に入ろうとしたニースを突き飛ばし、俺に迫ってくる。

レベルだけなら彼らとニースは互角くらいだ。

しかし、止めるべく話しかける者と元から暴力で解決する気の者との差がでていた。

まあ、有り余る嫉妬パワーで回りが見えなくなってるんだろうが、

余計ニースに嫌われるんだろうに……。


「磯臭い顔近づけんな」

「なっ!? 加護なしの分際で偉そうにしやがって!!」

「この里ででかい顔をする奴がどういう目にあうか教えやる!!」

「お前らほど顔はでかくないさ」

「テッ!! テメエーー!!! やっちまえ!!」


挑発してまで戦う意味は無いし、正直ステータス的に1対1でやっとという感じだ。

不思議な共感を覚えるボナギ君には申し訳ないが、

ニースからせっかく得ている信頼を失う気はないし、負けたら金を取られそうだ。

俺なりに真剣に対応させてもらう。


相手は鉤爪持ちだから下手すると大怪我をしかねない。

もっとも不老不死があるから死なない限り1時間ほどで回復するだろうが。

元よりそれを当て込んでいる事は事実ではある。

だが俺は相手に大怪我させるわけに行かない、悪者になりたくはないからな。

そうなると、現状唯一優位である距離をとって飛影剣連打という戦法が使えない。


正直かなり不利ではあるが、

ボナギがLv10、ガドロがLv8、バロドがLv7。

ようはボナギがリーダーということだ。

そして、俺のレベルは5だが、ドラゴンスレイヤーの補正か能力はほぼ互角だ。

それに位置関係上、ガドロとバロドが来るまでに数秒かかる。

ならば……。


「へぇ、ボナギ様は加護なし相手に1対1で戦うのが怖いか」

「なっ!?」

「いいぜ、3人相手になってやるよ。笑いものになりたきゃかかってきな!」

「テメ!! 俺が加護なしごときにビビると思ってんのか!!」

「あーはいはい、出来ないことをいう必要はないだろ?」

「ガドロ! バロド! テメエらは手を出すな!!」

「いいのか? 言い訳出来ないぜ?」

「加護なしなんぞにタイマンで負ける訳ねーだろうが!!」


おーおー引っかかってくれて。

ありがたいな、正直3対1では上手く長期戦に持ち込んで五分五分だろう。

速攻をしかけられると、飛影剣を使っても負ける可能性がある。

もっとも、喧嘩の経験も少ないし、能力サポートも極小になっている。

有利になったなんて思うとやられるな……。


「行くぞ! 加護なし!!」


ボナギは俺に向かって手刀をつきだして攻撃をかける。

普通なら少し痛い程度のものだが、やつの手には鉤爪がある。

刺されば結構な怪我を負うだろう。

もちろん、俺は上体を反らして回避する。

だが、回避した次の瞬間、突き出された手を開き横薙ぎに切り替えてきた。

鉤爪による切り払いのような形となる。

俺は完全には回避できず首筋に怪我をする。

だが、気にするほどでもない。

そうしてボナギの態勢が伸びきった瞬間、俺はカウンターで蹴りを叩き込む。

拳では鱗で逆に怪我をする可能性があるからだが、俺の蹴りはボナギをふっとばす。

偶然か狙ってやったのかは分からないが、

海面近くまで飛んでいったボナギは立ち上がり、口元を歪める。


「喰らえ!!」


その言葉が終わると同時にボナギの口から海水がかなりの水圧で放出される。

俺は転がるように回避したが、完全にとはいかず水圧に飛ばされる。

圧縮水流なんだろう、が、鉄を切り飛ばすとかまでは行かないようで安心した。

しかし、衝撃でそこそこダメージをもらったらしい、足がふらふらする。


「これでトドメだ!!」


俺が口から水ビームのダメージから回復する前にもう一発叩き込む気なのだろう。

だが、俺も同じ手に何度もやられるわけにいかない。

それに、先に相手が使ったのなら構わないだろう。

俺は、ナイフを居合い斬りのように腰から引き抜き大きく振りぬく。


「飛影剣!」


口から水ビーム2発めに飛影剣の斬撃がぶち当たり相殺する。

そして、振りぬいたナイフを返しもう一発逆に振りぬく。


「もう一発喰らえ!」

「なんだと!?」


次の水ビームを発射するために貯めに入っていたボナギに向けて斬撃が迫る。

貯めに入っていて回避出来ないボナギは100%貯める前に水ビームを発射。

相殺しきれずにぶっ飛んだ。


「まだやるか?」


と言ったものの、ボナギは打ちどころが悪かったのか気絶したらしい。

視線を他の2名に向けるとボナギを担ぎ上げ海中に逃げていった。

俺はほっと一息つき、ナイフを収める。


「なんとかなったか……」


正直、どこまで上手く戦闘が出来るのか疑問だったがそれなりに上手くいった。

体が思ったように動く、もちろん高レベルとは比べるべくもないが。

レベル5でも十分元の俺よりも強いらしい。


「ごめんなさい、ヒロくん……」

「ん? まあ気にするな。アレはただの嫉妬だろう」

「嫉妬?」

「バナボとかいったか、彼は君が好きなんだろう」

「んー、そう言えばそんな事を言われた事があったような……」


どこまでも報われないバナボ君……。

まあ、ヤンキーをやめて、真面目になれば話は変わるのかもしれないが。

ともあれ、恋人居ない歴=年齢な俺としては少し同情したくもなった。

ただ、問題は加護なしという俺への侮蔑のほうだ。

今はいい、そもそもそれほど人の多い所ではないしニースは気にしていないようだ。

しかし、大陸ではどうか?

というか、加護のあるなしは簡単にわかるものなのか?


「あ、商人の船が来たみたいよ」

(中規模帆船だねー、あれなら確かに外海でも十分動けるね)

「それは何よりだ」


細かいことはまた誰もいない時にでもティアに聞いてみるか。

大陸に行く理由自体希薄なものではあるが、生活するにもここでは厳しい。

せめて、衣食住に困らない所に行く必要がある。

可能なら元の世界へと帰る手段も探したいが。

そのためにも、持っている物でどうやって船に乗せてもらうかが大事だろう。

俺は、そう決意して船着場へと向かう事にした……。



名前 諸屋広和もろやひろかず

種族 人間  クラス ドラゴンスレイヤー

Lv 6   加護  なし

HP 44/71

MP 22/28

筋力  39   耐久  37

魔力  34   器用度 29

素早さ 38   抵抗値 40

スキルポイント 45

スキル

不老不死Lv1(一日に1回数死亡をキャンセルする。(残1)

HP、MPを1分に1回復する。老化停止、毒、病気無効)

飛影剣Lv1(MPを3消費し5m先まで斬撃を飛ばす。威力は通常と同じ)

支配者の威圧Lv1(殺さず倒したモンスターを支配する、Lvで成功率変動)

魔法耐性Lv1(魔法によるダメージを50%の確率で9割にする)

状態異常耐性Lv1(全状態異常を3%の確率で無効化、30%の確率で軽減)

武器  鉄のナイフ[威力7]+[筋力39]=攻撃力46

防具  革の鎧 [強度5]+[耐久37]=防御力42

アイテム 水(500ml)、小粒銀*5、オカリナ、アイテムボックス

お金 7200円

これにて、南洋の里アルポリから大陸へと渡る事になります。

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