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スキュラのニース

海の神ラポトーンの眷属と呼ばれる種族はおおまかに3種に別れる。

魚に手足が生えたようなサハギンに代表される魚人ぎょじん

上半身が人間のマーマンやマーメイドといった人魚にんぎょ

そして、それら以外の魚類そのものもまた眷属である。

だが、弱肉強食の理が存在する以上、同じ眷属であっても食料としたり争う事も多かった。

また魚人も人魚もかなり多様な種族がおり、それぞれ住み分けがなされている。


そんなラポトーン眷属の縄張りである海。

大陸からみて南方に位置するその海を縄張りとしているのは人魚の一種であった。


その一人が海中をすいすいと泳いでいた。

ただし、下半身は魚ではない、どちらかと言えばタコであったろうか。

彼女はスキュラと呼ばれる種族であった。

ただ、スキュラとはかなり範囲の広い言い回しであり下半身も色々であったが。


『今日のごっはんはな~にかな~♪』


海の中でひときわ目立つ赤い髪と下半身の赤さも相まって凄く赤い印象を与える娘だ。

上半身は申し訳程度に胸を覆う布が巻きつけられているが、後は裸である。

珊瑚礁には色々な生き物が集い、食べ物を取るのにも困らない。


『あら、ニースじゃないの。貴方はいつもご機嫌ね♪』

『はい♪ お姉さま方も今日は狩りですか?』

『いいえ、今日はワカメを集める事にしてるの。割りといい稼ぎになるからね』

『ああ、明後日には陸の商人が買い付けに来るんでしたっけ』

『お陰で最近は便利になったんだけどねー、変なのも来るようになって……』


ワカメは、地球において世界の侵略的外来種ワースト100に入るほど繁殖力の大きい海草である。

ご他聞にもれずこの世界でも駆除のめんどくさい草として人魚達には嫌われていた。

しかし、海の中にあるため塩分を多く含み、

癖が強いため出汁を取るには向かないもののスープに入れて食べるのには向く。

そのため、陸ではそれなりに人気な食材らしく、商人が買い付けに来る事があった。

もちろん魚等のほうが高く売れるが、何せワカメは逃げない。

つまり収穫が楽であり、多少安くても量があれば売るに困らない。

そして、繁殖力は旺盛なので勝手に増える。

持ち運びが多少面倒な事を除けば人魚向きの農作物と言える。

駆除にもなって一石二鳥と最近では喜ばれているのだ。


『気をつけて行ってきてくださいね』

『それはこっちの台詞だよ……。

 あんたも若い娘なんだから一人であんまり遠出するんじゃないよ』

『はい、今日は狩りをしに来ただけですから』

『あんたくらいの娘なら男に貢がせればいいだろうに……』

『あはは……、あたしそういうの興味なくて……』

『ほんと、もったいないんだから』

『それじゃ! 行ってきますね!』


女性ひとりで狩りをするというのは確かに、人魚族としても変わり者だった。

彼女らは人間と違い、水中で音を出す事も、臭いを嗅ぐ事もできるため危険の察知も早い。

それに、スキュラはマーメイドと違って下半身も武器になる。

他種族よりは海の狩りに向いているのは事実だ、それでもやはり女一人では危ない。

だがニースはどうしても男と仲良くする気になれなかった。

理由は単純で、この集落の男は魚人だったからだ。

マーメイドはマーマンというつがいの種族がいるからいいが、スキュラは女性だけだ。

そのため、他種族の男と番うしか無いという一面がある。

たまたま、その男がサハギンだったという事だ。

海の神ラポトーンの眷属である魚人、人魚合わせても一番多いのがサハギンなのだから当然だが。

彼らは女性がいない状態が長く続くと一部が女性に変異するほど単純な構造だった。

そのため、里でも忌避感がある者も多少いる。

そういう者は他の里に移ったり、陸の男をさらってきたりして子をなす。

いずれ自分もそうなるのかもしれないとニースは考えていた。


『そんな先の事を考えても仕方ないか、それより今日のゴ・ハ・ンっと』


彼女はいつもと違い遠浅を抜けて少し深いあたりまで行ってみる。

先ほどの話に影響されたわけではないが、やはり番の話は少し堪えたようだった。

だから、無意識に成人し魚人の妻となったご近所の人たちを避けたのだ。


すると、おあつらえ向きにマグロのような魚が泳いできた。

といっても3m近い大物だ、それも集団である。

正面から当たっては先ず間違いなく突撃を食らって倒されるのはニースのほうだ。

ニースは一度深めに潜り集団の先頭をやり過ごす。

そして、集団が通り過ぎるのを待ち、そして遅れ気味な一匹を見つけると急浮上をかけた。

目一杯下半身の8本の触手を伸ばし一匹を抱え込む。

そして、後はそのまま沈めてやるだけでいい。

マグロは泳いでいないと呼吸ができなくなり死ぬ魚だ、なので動きを止めるだけでいい。

もちろん暴れるが、触手により背びれと尾びれ、そしてエラを押さえ込めばどうしようもない。

これがタコやイカなら引き剥がされる可能性もあるが、彼女はスキュラ、その触手だけでも3mはあった。

太さも10cm以上あり、そうそう引きちぎれるものではない。


『マグロさんごめんね、でもニースも食べなくちゃだから……て、キャッ!?』


ニースの背面から浮上してきた何かが体当たりし、ニースの体が吹き飛ばされる。

その巨体を見て一瞬ひっと声を上げそうになるニース。

それは、5m近い大きさのサメ、それもデッドシャークと呼ばれるモンスターだった。

デッドシャークは通常のサメよりも一回り大きく、更に食欲も旺盛である事で有名だ。

デスではなくデッドなのは姿と普段死んだように動かない点による。

その色が紫であり、腐っているかのように見えるのが特徴だった。

それは、3mのマグロをとらえたニースであっても勝つのは難しい相手だった。


『これは……ちょっと不味いかな……』


突っ込んできたデッドシャークを回避し、距離を置くニース。

マグロは落下していく、デッドシャークはそれを見向きもせずニースに迫る。

デッドシャークは、食事を肉質や量ではなく加護のあるなしで選ぶ。

他になければ加護の薄いマグロ等も食べるが、眷属の民であるスキュラがいるなら別だ。

海の神ラポトーンの加護が強いニースは絶好の餌なのだろう。


『ならっ!』


デッドシャークに向かって突撃をしかけるニース。

勝てると思っての行動ではない、すり抜けて逃げれば反転して追ってくるのは難しいと見ての行動だ。

確かに、それが普通の魚ならば上手く行ったかもしれない。

直前での方向微修正についていくのはかなり難しいものだからだ。

しかし、デッドシャークはとっさに尾をおもいっきり振りぬいた。

自分の体勢が崩れるのを厭わず、全力で尾をニースに叩きつける。

いくらニースでも角度が少し変わったくらいではデッドシャークの5mもある全長を回避するのは無理だった。


『カッハッ!?』


顔面をどうにか回避したものの、肩に強烈な一撃をもらい体がくの字になるニース。

そして、その間にデッドシャークは悠然と方向転換をしてきた。


『うう……一か八か……やるしかないよね……』


ニースは武器を持ってこなかったことを後悔した。

スキュラに海で武器を使うという習慣はない、その必要性がないほど水中での戦闘能力が高いからだが、

それでも海洋性の大型モンスターを相手にするには打撃力不足なのは否めない。

その時用に銛等を持ってくるスキュラもいる。

ただ、当然両手が塞がれてしまうため泳ぎにくく不人気である。

だから、あまり遠浅の浜辺から離れないようにするのが普通なのだが……。


『今日はとことんついてないみたい……』


一か八か、相手の胴にまきついて口元から遠ざかれば攻撃されない。

後は疲れさせてから脱出と考えていたが、デッドシャークは正面から口を開けて突進してくる。

回避しようにもさっき受けた打撃で動きの鈍ったニースには無理だといっていい。

この状況では、ジリ貧だった。

それでも生きることを諦めるつもりはないニースは回避をするため力を貯めようとしていたが……。


それは突然だった。

凄まじい轟音と衝撃が走る、隕石でも海面に衝突したのかと思うような衝撃だった。

あまりの衝撃に、攻撃大勢に入っていたデッドシャークの動きも止まる。

もっとも、ニースも動きが取れるような状況ではなかった。

海流がぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、その場で踏ん張るのがやっとだったからだ。


『なっ、何!? 何なの!?』


ニースが混乱している間にも海面から空気が大量に取り込まれ水中が何も見えなくなる。

それからほんの数秒後、ドッゴーンとばかり凄まじい衝突音がした。

何が起こっているのかわからず呆然としていたニースの視界が晴れてきた。

そして、いつの間にか目の前にいる者が2つになっていることにきづいた。

一つは、首の骨が折れたのか、穴が空き40度くらいひん曲がっているデッドシャーク。

もう一つは、陸の種族と思しき何者かが死んだように浮かび上がろうとしている姿。


思わずニースはその陸の種族を捕まえ、一気に浮上した。

陸の種族が水中で息ができず、長い間息を止めていられない事は知っていたから。

抱きかかえ、上昇しながらどうにか心臓が動いている事を確認すると更に速度を上げる。

そして、海面に飛び出しその陸の種族を見る。


「大丈夫? 生きてる!?」


頬をぺしぺしやりながら確認をとるが、心臓は動いているものの、息が止まっているように見える。

仕方ないので、体を触手で固定し、肺のある位置を目算で思いっきり叩く。

最初は動きが悪かったものの、叩いている内にカッハッという声と共に水を吐き出し息を吹き返す。

だが、ニースは勢い余ってもう一撃加えた、しかも腹のほうに。


「ゲボッ!? 殺す気か!?」

「生き返った……」

「え? あ、ああ……なるほど……」


ニースは純粋にそのことを喜んだが、陸の種族は少し呆然としてから気がついたようだ。

命を助けてもらった事に。


「助かったよありがとう、俺の名は広和、ヒロって呼んでくれ」

「ニース・オリファンよこちらこそありがとう」


青年なのだろうと思ったが、

思いの外笑顔が幼いのを感じたニースは思わず自分も笑顔で返していた。

不思議とサハギンらに感じた嫌悪感はない。

陸の種族だからというわけではないのは商人達と接してわかっている。

だから不思議な思いでその陸の青年を見ていた……。



名前 諸屋広和もろやひろかず

種族 人間  クラス ドラゴンスレイヤー

Lv 5   加護  なし

HP 3/64

MP 1/24

筋力  35   耐久  32

魔力  30   器用度 26

素早さ 34   抵抗値 37

スキルポイント 40

スキル

不老不死Lv1(一日に1回数死亡をキャンセルする。(残0)

HP、MPを1分に1回復する。老化停止、毒、病気無効)

飛影剣Lv1(MPを3消費し5m先まで斬撃を飛ばす。威力は通常と同じ)

支配者の威圧Lv1(殺さず倒したモンスターを支配する、Lvで成功率変動)

魔法耐性Lv1(魔法によるダメージを50%の確率で9割にする)

状態異常耐性Lv1(全状態異常を3%の確率で無効化、30%の確率で軽減)

武器  鉄のナイフ[威力7]+[筋力35]=攻撃力42

防具  革の鎧 [強度5]+[耐久32]=防御力37

アイテム 水(500ml)、小粒銀*5、アイテムボックス

お金 7200円

ヒロインの一人にする予定?ではありますが、彼女の現状は海の人Aですw

この先どうなるかはノリと勢いでw

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