レベル2万6千の力技
諸屋広和っす。
最下層で運良くエンシェントカオスドラゴンなるボスをアイテムの効能で撃破した俺は上層へと向かっていく。
魔法やエレベーターによる移動もないので階段で。
ゲームなんかじゃ、最終ボスを倒すと地上へのショートカットが出来るダンジョンも多いのだが。
この世界はそこまでサービス良くないらしい。
しかし、階層をようやく上がった俺は思わず目を疑う。
[失われた迷宮 第199層]
200階建てだとっ!?
東京ドームより大きく、全長80mのドラゴンが飛び跳ねられる高さがある一層だぞ!?
作ったやつはキチガイに違いない……。
正直一気にやる気が低下したのを感じるが、あえて考えないようにしつつ進み始める。
さっさと元の世界に帰りたいという考えもあえて捨てている。
ここがダメな以上、他で可能になる可能性はかなり低いだろうからだ。
不老になったのだから、のんびり構えるしかないだろう。
夢なら何千年だろうと問題ないわけだし。
そんな愚痴くさいことを考えていたら、モンスターが集まってきた。
ステータス表示はデーモンロードと出ている。
それがざっと10匹、蝙蝠の六枚羽と同じ数の腕を持つ10m級の山羊巨人だ。
どうりで通路がやたらでかいと思った、全幅100m近いからどっちに進んでいいやら迷う。
とりあえず俺は、おおきく振りかぶって飛影剣を飛ばしてみた。
すると、思ったより大きく広がって……あれ?
全員が一発で切り裂かれて倒れた。
因みにこいつらの平均レベルは1万くらい。
HPもだいたい俺の半分くらいはある。
攻撃力が19万前後の俺じゃ普通に考えれば3回は斬りつけないと死なないはずなんだが……。
戦闘のバーを見ると全部クリティカルしていた。
それも、倍率がおかしい。
明らかに攻撃力の4倍近いダメージになっている。
もしかして……この世界では器用度の技量差でクリティカルダメージも増えるんじゃ……。
「まあ、楽になるならいいか……」
深く考えるのをやめて、アイテム等を落としてないか確認する。
いろいろ落としてはいたが、実際に必要なものを見つけたのが大きいだろう。
アイテムボックスという名の鞄だ。
それも、収納限界が500トン、亜空間と繋がっているのか無茶な容量をしている。
分かりやすく言うと、ジャンボジェット機が400トンくらいなのでまるまる1機収納できる計算だ。
だから、そのアイテムボックスに片っ端から収納しつつスパスパ切り裂きながら進む。
とにかく広い空間なので何層か上がると一泊という形を繰り返すしかない。
水は一応ところどころで補給できるしファ○タのペットボトルに入れておけば日持ちもする。
しかし、食べ物はモンスターが落としたものを食うしかない。
調理道具もないので、剣で切り裂いて食えそうなものを食う。
最悪腹は減るが、食べなくとも直ぐ様動けなくなることもない、不老不死スキル万歳である。
ただまあ、トイレだけは辛い思いをしている。
時々人型モンスターの着ていた服を失敬して尻ふきする有り様だ……。
ああ、トイレットペーパーが恋しい。
[失われた迷宮 190層]
10層ごとにボスがいるのか、登って行くとそこには大型の悪魔らしき姿がある。
俺が登ってくるのを見つけて、そいつは振り向いた。
姿は30m級の大女、服装が派手でドレスのようなものを着ているが、腕が10本もあり、蝙蝠の翼も8枚ある。
そして下半身は蛇のようになっており、髪は蛇のようにうねっている。
顔だけは美人のようでもあるが、頭の大きさだけでも5m近いし、目を隠しているアイマスクも一つ目の柄できもい。
前回といい今回といいウルトラマンでも来てくれと言いたくなる。
サイズが違いすぎるから戦闘がしづらい。
とりあえず弱点を探る意味でも、ステータスを確認する。
名前 ヴァーディエンテ
種族 大魔王 クラス 守護者
Lv 25744 加護 なし
HP 13443275/13443275
MP 813591/813591
筋力 133404 耐久 138993
魔力 126343 器用度 53912
素早さ48167 抵抗値 105747
スキル 物理耐性Lv90、超回復Lv10、魔法耐性Lv90、状態異常耐性Lv90、闇魔法Lv90
武器 なし
防具 なし
アイテム 天帝の鎧
流石にエンシェントカオスドラゴン程ではないにしろかなりの強敵のようだ。
だが、能力的には俺のほうが上のようだ。
正直お近づきになりたくない気もするが、やるしかないだろう。
階段を上がった瞬間よりひたすら飛影剣を連打してみる。
500m先まで届く技なので、相手の準備前から攻撃できるのが利点だ。
「なっ、キサマッ!? ナニモノだッ!!?」
「ただの通行人Aだ、通りぬけたいだけだよ。邪魔するな」
「ジャマダト!!!? このマオウ ヴァーデェンテをジャマダトッ!!」
「邪魔以外の何物でもないだろう、通り道を塞いでるくせに」
「キッ、キサマー!!!」
怒りに任せて飛び込んでくる巨大悪魔だが、俺の前まで来る間に10発は叩き込む事ができた。
1発の威力は100000平均くらいか、流石に絶対防御だけはある。
全部クリティカルしているんだから、恐らくは9割ダメージカットしているだろう。
どのみち俺はまともな剣技など持っていないし、この方法が一番いい。
接近した、巨大悪魔は俺に直接殴りかかろうとするが、それに向けてもう一発飛影剣を放つ。
攻撃を相殺し、ダメージも与えられた。
俺には戦闘センスなんてないはずだから、こんな事が出来るのはステータスのお陰だろう。
実際俺はあり得ない速度で剣を振り回しているし、相手の攻撃タイミングがなんとなくわかる。
その上どこに攻撃を当てればいいのか、どういう風に振れば当るのかもわかった。
また、身体も動き方を知っているようだ、正直俺の体なのか疑わしくも或る。
深く考えるとドツボにハマりそうなので、その辺を考えるのはやめた。
ともあれ、こちらのMP消費は極小なので回復と合わせ50回くらい撃ち続けられる。
弾幕を張り続ける事で相手の攻撃を阻止するのだ。
こちらもダメージは受けるが、相手の攻撃力や魔法よりも耐久や抵抗が高いためダメージが小さい。
せいぜい10000から20000程度のダメージだ。
普通ならかなり痛いのだろうが幸い俺のHPは九百万を超えているし、回復スピードも相手と変わらない。
巨大悪魔は不利と見て状態異常や即死の魔法で攻撃してきたりするが、
不老不死の効果と抵抗値の差でほとんど効果がなかった。
結果として、俺はひたすら飛影剣を放ち続けるだけで完全に押している状況だ。
「な……ナンダトイウノダ……、何故ニンゲンのソナタが我ヨリモツヨイ……」
「さあ、単に俺のほうが強かったってだけの事だろ?」
「ソレは……」
口から出まかせだ、魔王相手に本当の事を語っても仕方ない。
競り合いのうちに、俺のHPが2割ほど減る頃、相手のHPは5桁にまで落ち込んでいた。
俺はその時、ふと考えた。
この状況でなら可能かもしれない。
俺はもうひとつのスキルを使ってみる事にした。
「お前はもう少しで死ぬ」
「……ソウダナ」
「俺の軍門に降れ、そうすれば命は助けてやるぞ」
「ナニ……キサマ!!」
「それとも逆転の目があるとでも?」
「……アル!」
「いいだろう、やってみろ」
巨大悪魔は俺に向けて口を開くとそこに光が集まり始める。
俺は、防御姿勢でじっと待つ事にした。
相手も俺もやることはただひとつだ、一撃の威力で俺を殺せば奴の勝ち、出来なければ俺の勝ちだ。
チリチリとした緊張感で長く感じたが、3分ほどで充填を終了したらしい、
先程より更に大きく口を開きビームの如き光の奔流が俺に到達する。
流石に全力を込めたビームだけあって、現在の抵抗値でも踏ん張る事も出来ずぶっとばされる。
「ぐっ……」
「キエロォォォォ!!!!」
そのまま、壁にたたきつけられそのままめり込んでいく。
それでも油断せずに巨大悪魔はビームを放ち続ける。
ビームが途切れた時、俺は立つ事もできないほどに消耗していた。
だが、それでもHPで見れば2万ほどのダメージに過ぎない。
そう、俺はどうにか耐え切る事ができたようだ。
「さあ、まだ手はあるか?」
「……我のマケダ……」
相手もどうやら全ての力を攻撃に振り分けていたらしく、身動きすら取れないようだ。
俺はスキルの発動を確認し、そして……。
さっきまで30mはあった巨体が一気に縮み150cmほどの小柄な女性になってしまった。
……あれ?
「まさか人間に倒されちゃうなんて、ボクもまだまだだね」
「え? さっきの……あれ?」
「魔王ヴァーディエンテ、これよりマスターの下僕として仕えさせて頂きます」
ピンクの髪をした、中学生にしか見えない華奢な子があの魔神?
瞳までピンク色になってしまって……。
なにその萌えキャラ……。
とにかく、ついでなので鎧を頂くことにした。
今のままでも、恐らく不都合はないと思うが、やはりある方がいい。
装備後、スキルのほうを確認して笑った。
状態異常耐性と魔法耐性か……ボス専門と思っていたが、ありがたい。
しかし、流石にこれは覚えきるのが大変だった。
雑魚でかなりスキルポイントを稼いだはずだが、高レベルになってくるとポイントが増えてギリギリになった。
1レベルの時は10でいいのだが、99に上げるには1万ポイント使うという二乗倍方式だったようだ。
だが99に上げた事で凄まじい状態になった。
物理ダメージと魔法ダメージが99%カットになったのだ……。
凄まじすぎて、もう笑うしかないレベルだ。
名前 諸屋広和
種族 人間 クラス ドラゴンスレイヤー
Lv 26829 加護 なし
HP 9542213/9542213
MP 1281351/1813591
筋力 193404 耐久 198993
魔力 186343 器用度 173912
素早さ188167 抵抗値 185747
スキルポイント 445
スキル
不老不死Lv99(一日に5回数死亡をキャンセルする。(残5)
HP、MPを1分に99回復する。老化停止、毒、病気無効)
飛影剣Lv99(MPを40消費し500m先まで斬撃を飛ばす。威力は通常)
支配者の威圧Lv99(殺さず倒したモンスターを支配する、Lvで成功率変動)
魔法耐性Lv99(魔法によるダメージを99%の確率で1割にする)
状態異常耐性Lv99(全状態異常を無効化、任意に反射できる)
武器 支配者の剣(万能)[威力27200]+[筋力193404]=攻撃力220704
防具 天帝の鎧 [強度25600]+[耐久198993]=防御力244593
アイテム 水(500ml)、アイテムボックス
お金 7200円
名前 ヴァーディエンテ
種族 大魔王 クラス 使徒
Lv 25744 加護 なし
HP 8443275/8443275
MP 1333322/1333322
筋力 133404 耐久 138993
魔力 126343 器用度 103912
素早さ108167 抵抗値 105747
スキル 物理耐性Lv90、超回復Lv10、魔法耐性Lv90、状態異常耐性Lv90、闇魔法Lv90
武器 なし
防具 ゴスロリドレス
アイテム アイテムボックス
ヴィークエンテの能力も下僕になった割には下がっていない。
HPやMPの低下は恐らく人間大に縮んだせいだろう。
魔王という話なので、油断する訳にはいかないが、俺は話し相手が出来たことが嬉しいと考えていた……。
日付が変わったので、投稿いたします。
一応、今回はヒロイン登場回という事になりますw
これを見てそう思う人はあんまりいないかもですがw