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「エ、エスカレーターぷりーず・・・」

階段の一番上でへたばりながら、菫はつぶやいた。

一段一段が高いのだ。小さな身体には、見事に全身運動になってしまった。

「・・・ドア、開けっ放しにしといてもろてよかったわ・・・」

研究室へと続く扉は、菫の元の身体でも重くて開けられなかった、3m程もあるあの(・・)扉なのだ。

エドワードが『菫が出入りしやすいように』『家の中で菫の声が通りやすいように』と玄関以外の扉は、現在開けっ放しになっている。


ゴン・・・。ゴン・・・。

やはり、一定の間隔で玄関のドアを訪問者が叩いているようだ。

「はぁ~い。今、開けます~」

ぴょこん、と跳ねてドアノブにつかまったまま、扉の横の壁を蹴った勢いで内開きのドアを開ける。

キィ~

「わふ」

「え?」

ドアにぷら~ん、とぶら下がりながら垣間見た光景に菫は固まった。

―――・・・めっちゃ、デカイけど・・・柴ワンコ~!!!―――

セントバーナード程の大きさの柴犬が、唐草模様の風呂敷を首に巻きつけて、玄関先にお座りしていた。

大きな身体に違わぬ太い足。くるん、とした巻き尾。ふかふかの毛並みに、黒々とした真ん丸い目。

―――その尻尾!くるんとした巻き尾具合、サイコー!!!―――

内心狂喜乱舞している菫は、目の前のデカ柴ワンコがのそり、と動いて自分に詰め寄ってきたことに気がついていなかった。気がついた時には・・・

「ほぇ?いや、ちょぉ待って。タンマ、タンマーーー!!」


「菫?」

エドワードは、菫の声が遠い所から聞こえた気がして顔を上げた。

周りを見渡してみるが、菫は見当たらない。

「上か?この階段・・・登れたのか?」

キッチンにでも行ったのだろうか?と思いながら階段を登る。

そしてエドワードは、階段を登ってすぐに見えた光景に・・・大爆笑した。


「ぶっ。くっはははははぁ~」

そこにはいつも食料や日用品を購入している店の店主『ロウバイ』の使い魔犬の『トウ』が行儀良くお座りしていた。

注文していた食料品の配達だろう、首に唐草模様の風呂敷を結わえて。そして、口に子犬を運ぶかのように菫の首根っこを咥えて。

菫は『もうどうにでもして』感ありありで、ぷら~んぷら~んと揺られている。

『トウ』はふるりと首を振り、届け物の風呂敷と菫をそっと床に降ろした。

黒い目がわくわくしながら『褒めて。褒めて。』とエドワードを見上げている。

「・・・エドはん。いつまで笑ってはるん・・・」

「くくくくく。・・・すまん。『トウ』いつもの配達だな?ご苦労さん。

ついでに、菫も配達してくれたのか?ありがとうな」

エドワードはそう言って、すばらしく良い笑顔でトウの頭をぐりぐり撫で回した。

「えぇっと・・・。エドはん?配達って?それに・・・どちらさん?」

「ああ、近くの村に『ロウバイ』という男が食料とかを扱う店をやっていてな。1週間に1度、使い魔の『トウ』に食料を配達してもらっているんだ。そのかわり、裏の薬草を使って作った薬を渡す契約になっている。

トウ。出来上がった分の薬を持ってくるから、ここで菫と一緒に少し待っててくれ」

エドワードはそう言うと、研究室に降りて行った。

「わふ」

菫が顔をあげるとトウがお座りをした状態で、黒々とした目でこちらを見ている。

艶やかな毛並みに我慢ができず、ぼふんと抱きついた。

「日なたの匂いがする~。気持ちいぃ~」

エドワードが戻ってくるまで、菫はもふもふの毛皮を堪能しまくった。


トウに薬を持たせて送り出すと、エドワードは配達用の風呂敷と菫を抱えてキッチンに移動した。

「配達って事は、新しい食料?」

今度は菫がエドワードの腕の中で、目をキラキラとさせている。

キッチンのテーブルで風呂敷を開けると、ぽんっという音とともに食料が次々と出てきた。

「お肉にお野菜。卵に牛乳~。硬くないパンもある~。新しいのが来たし、古い方を使ってしもて良い?」

ウキウキと菫が、エドワードにお伺いを立てる。

「ああ。菫にまかせる」

「やったぁ~。ほな、ご飯の支度ができたら呼ぶし」

「なら、俺は邪魔にならないよう研究室に居よう」



―――――硬いパンをすり下ろして、パン粉に。牛乳に浸して柔らかくなれ~。

「やっと硬いパン終了やわ~」

―――――お肉を包丁で叩いて叩いてミンチに。玉ねぎ、人参、茄子、インゲン豆も粗みじん~。

「残り物消費~」

―――――全部ボウルに入れて~、卵を割りいれ~、塩コショウをして混ぜ合わせ~、長方形の型に詰め込む~。

「パウンドケーキの型があればちょうど良いのに~」

――――――200℃ぐらいに予熱したオーブンで30分程焼く~。

「その間にソースの用意~」

――――――ケチャップ:ウスターソースを1:1。ちょっとだけマスタードを入れて大人味に~。

「これに焼き上がった際の肉汁も入れちゃえ~」

――――――串を刺して、澄んだ肉汁なら完成!

「さ!召し上がれ!ミートローフ!!」



「エドはん~。ご飯できたで~」

研究室にいたエドワードは、階上から自分を呼ぶ菫の声に

―――一緒に食事をとるというのは、こんなに心が満たされるものなんだな・・・―――

ふと、そう思った。

ミートローフは、お野菜を玉ねぎとミックスベジタブルにしたら、もっとお手軽にできますよ~。

その際は、玉ねぎと一緒に一度炒めてからにして下さいね~。

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