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―――――卵を割って、醤油、砂糖、だし汁を入れる。

今日の朝ごはんは、和食で。

―――――熱したフライパンに少し多めの油を入れて、卵を半分ほど入れ大きくかき混ぜる。

ご飯もふっくら炊けたし!

―――――端っこに寄せ、残った卵を入れてくるくると巻く。2~3回繰り返して完成!

ふっくらご飯とお味噌汁、だし巻き卵に青菜のおひたし。だし巻き定食!

「さ!召し上がれ!だし巻き卵!!」


「菫、今日の昼から【呪い】の解除を始めるぞ」

「うん。わかった」

エドワードに返事をして、このだし巻き美味しくできたなぁ。と自画自賛しながらご飯を食べていると

「・・・菫ちゃん。そんなあっさり了承しちゃって、いいのかい?」

ブッドレアが、若干にんまりしながら聞いてきた。

「だって、ウチは何もできひんし。エドはんとロサはん、なんせ『自称天才術師』のブッドレアはんが居てくれてはるから、大丈夫やん」

ピンクの左耳をぴこぴこさせながら、菫が言う。

―――あの耳の反応は内心笑ってるな。しかし、この光景も見納めだな。よくやく、菫の感情が読み取れるようになってきたんだがな。・・・いや、見納めにしないと。菫を、元の身体に戻さないとな―――

エドワードは気合を入れ直した。ついでにエネルギーも満タンにしようと

「菫、おかわり」

「はい。エドはん和食、気に入ってくれはったん?嬉しいわぁ」

菫に勘違いをされたが、あながち間違っていないから、そのままにしておいた。


まずは、菫の元の身体の【呪い】を解く。

この作業はロサが担当。

休止には【活動】剥離には【定着】を。

次に、ぬいぐるみに繋ぎとどめておくための術【固定】と【連結】を解除。

その上で、元の身体に戻すための【回帰】を。

こちらはエドワードが担当する。

で、ブッドレアが総監督。

そう説明をうけて、菫は無言でブッドレアをじ~っと見た。

「いやいや、菫ちゃん。一番大事な役だから、俺。全体の管理だし・・・」

とブッドレアが色々説明をしていたが、3人はさくさくと準備に取り掛かった。


研究室の大きなテーブルの上に横たわる菫の元の身体の側に、うさぎがちょこんと座った。

「はじめるわよ」

【魔女】は【術式】を必要としないため、ロサが自身の身の内の魔力を練り上げ精度を高めだす。

その濃度の高い魔力が真紅の光となってロサを包み込む。

光は凝縮され、一つの真紅の珠となってロサの手のひらに収まった。それを優しく、菫の身体の方へ押やると、珠は大きくうねり、菫の身体を覆いつくす。と、身体に吸収されて消えた。

菫の身体を挟んで、反対側に立っているエドワードに頷く。

「術式【解除】」

菫が常々褒めているエドワードの低い響く声が、しんと静まった研究室を通り抜ける。

その声と共に、文字や数式が小さいピンクのうさぎの周りを高速で周回した。

数回くるくると周った後、ぱぁんと文字や数式が四方八方に弾け飛んだ。

「【回帰】」

そのタイミングを逃さずに、エドワードは次の術を発動させる。

バラバラになって消えかけていた術は、再び収束し一本の連なりとなってぬいぐるみから離れ、菫の身体へと向かっていく。そして、身体の中に消えていった。


ふぅ~。

3人は、詰めていた息を吐き出した。

「ここまでは、成功だな。後は菫ちゃんの意識の回復を待つだけか」

「ああ。2人とも助かった。ありがとう。俺は菫の側にいてるから、上で休んできてくれ」

解除が終わった途端、くたん、とくたびれてしまったうさぎを目を眇めて見ながらエドワードが言った。

「・・・わかったわ。菫が目を覚ましたら教えてちょうだい」

ロサがそう言いながら、何か言いたげなブッドレアの背中をぐいぐい押して研究室を出ていった。

部屋の端によけていた椅子をずるずるひっぱって、横たわる菫の側に座る。

力の抜けてしまったピンクのうさぎの手を握り締めてみる。

―――さっきまでは、この手が握り返してきてくれた。この白くて華奢な手は、同じように握り返してくれるのだろうか?―――

うさぎから手を離して、意識のない菫の暖かい手に触れる。

さすさすさす。

無意識に菫の手をずっと摩っていた事に気がついて、柄にも無くおろおろと動揺して誰にも見られていないかきょろきょろと周囲を確認してしまう。

―――この部屋には、俺1人だから見られているわけなかった・・・―――

そう自嘲して視線を菫に戻した途端、ビシッッッと固まった。

黒い、潤んだ黒曜石の様な2つの瞳がこちらを見ていたのだ。

エドワードの灰褐色の瞳と見つめあう。

と、次の瞬間、ふわりと菫が笑った。

初めて目にした菫の笑顔に、エドワードは言葉もなく見惚れていた。

「・・・エドはん。おおきに・・・ごほっごほっごほっ」

ずっと使っていなかった喉に負担がかかったのか、菫が咳き込んでしまう。

「・・・水っ!水っ!」

大慌てでエドワードが研究室の階段を駆け上がって行く。

その慌てっぷりはキッチンでお茶を飲んで休憩していたブッドレアとロサにも見られてしまい、後々エドワードはこの慌てっぷりを幾度と無くからかわれるのであった。

はやく人間になりた~い(←古っ)。編、しゅ~りょ~。

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