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「エドはん!エドはん!!エドはん!!!

おかしいって。アレ絶対おかしい!」

ぷるぷると震える手で、菫が指差す方向には悠然と歩いている・・・薬草。


見た目は正しく『にら』。

青々とした細い葉が幾重にも折り重なって、わさわさと茂っている。

が、自力(・・)で土の中から根っこを『どっこいしょ』と引っ張り出し、『よいせこらせ』と日当たりの良い場所に自力(・・)で移動しているのだ。

しかも、10束ほどが一斉に。それはもぅ、わっさわっさと。


「菫、アレはああいった生態なんだ。

案外、貴重な薬草なんだぞ。活血作用があって、使い勝手のいい薬草なんだ。

ただ栽培しようにも、勝手に移動するから一定の場所で育てる事ができなくてな。

ここは風土が合っているのかもしれん。この薬草園の中でぐるぐる場所を変えるだけで、違う場所に移動する気配はないようだ」

エドワードが未だまだぷるぷるしながら薬草を凝視している菫の頭を、ぽふぽふと宥めながら言った。


菫が『薬草園の手入れを手伝いたい』と言い出したのは、昨日の夕食の時だった。

取り扱いの難しい薬草もある為、『自分と一緒なら』とエドワードは了承した。

小さい身体で、アッチにぱたぱたと駆けていき雑草を抜いて、コッチにころころと転がりそうになりながら水を撒く。実に楽しそうに。

「エドはん。このハーブ、摘んでも良い(えぇ)?」

かと思えば、料理に使えそうなハーブを見つけて期待に満ち溢れた雰囲気でエドワードに訴えかけてくる。

「その辺りのは構わない。あ、菫、足元に気をつけろ。罠があるぞ」

「へ?罠?」


どべしっ。

注意を受けた途端、足元にあった草と草を結んで仕掛けられてあった罠(草結び)に足をとられ、おもいっきり転んでしまった。

「な、何で罠なんかが仕掛けてあるねん!」

「菫のすぐ側に花が咲いているだろう?その花を摘まれない為の自衛手段の一つなんだ」

エドワードは笑いを押し殺し、菫を抱え起しながら説明する。

「・・・あなどりがたし、異世界・・・」

そうつぶやくとエドワードに抱きかかえられたまま、菫はガックリと肩を落とした。



―――――魚は皮目に切り目を入れて塩・こしょうをし、薄力粉をまぶす。皮目からパリっと両面焼き、取り出しておく。

前は、鯛で作ってんな~。アレは美味しかった~。

―――――薄切りにした、玉ねぎとセロリを炒め、魚を戻し入れる。

結局、今日はハーブは収穫できひんかった。

―――――牛乳、コンソメスープ、パセリの茎やセロリ葉っぱを入れて弱火で15分ほど煮る。

タイムにローズマリー、バジルにレモングラスもあったし、次は採るで~!

―――――仕上げにバターを加え塩コショウで味を調え、パセリを散らす。

「さ!召し上がれ!白身魚のミルク煮!!」


二人で夕食を食べながら、エドワードはふと思いついた事を聞いた。

「菫。『薬草園の手伝い』というより『新しい食材の発掘』の方が正しくないか?」

「・・・今日も美味しく出来上がったわ!エドはん。ウチは食後にエドはんの淹れてくれた珈琲が飲みたいです!」

菫の、かなりの力技な話のそらし方に笑いがこみ上げる。

「くくく。了解した」

―――菫といると、いつも笑っている気がするな・・・―――

エドワードは、そんな日常がとても好ましく思えた。

ある日の出来事。薬草園にて。でした~。

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