第45話 並び立つという未来
王都を出て三日。
馬車の窓から見える景色は、徐々に整然とした石畳から、緩やかな丘陵へと変わっていった。
背後にあるのは、巨大な中央。
前方にあるのは、自走する街。
どちらも、もう彼女の所有物ではない。
◇
リュネアの城門が見えたとき、胸に浮かんだのは安堵ではなかった。
確認だ。
門番は、いつも通りに敬礼する。
「お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
形式的なやり取り。
それ以上でも、それ以下でもない。
城へ向かう途中、市場を通る。
値は更新されている。
荷は滞っていない。
小さな口論はあるが、すぐに収まる。
誰も、彼女を中心に集まらない。
それでいい。
◇
執務室。
机の上は整っている。
ガイウスが、書類を一束差し出した。
「問題は?」
「小さいのが三つ」
「大きいのは?」
「ない」
短いやり取り。
「王都は」
ガイウスが問う。
「動いている」
エリアナは答える。
「戻らないのだな」
「戻りません」
「向こうは?」
「続けると言っていました」
沈黙。
ガイウスは、窓の外を見る。
「……並んだな」
「何がですか」
「王都とリュネアが」
上と下ではない。
中央と辺境でもない。
並び立つ。
エリアナは、静かに頷く。
「依存しない関係です」
「お前らしい」
ガイウスは、小さく笑う。
◇
夜。
エリアナは、記録帳を開いた。
最後の頁に、短く書く。
――《王都再接続、完了》
そして、少し考え、
その下に続ける。
――《並立》
中央と地方。
所属と独立。
過去と現在。
対立ではなく、並立。
王妃にはなれなかった。
だが、王都と対等に線を引いた。
リュネアもまた、彼女に依存していない。
どこにも縛られず、
どこからも拒絶されない。
それが今の位置だ。
窓の外、街の灯りが揺れる。
遠く、王都の方向にも灯りがあるだろう。
別々の場所で、
それぞれが回っている。
それでいい。
物語は、まだ終わらない。
だが――
もう、戻る場所を探す必要はなかった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




