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婚約破棄されたので王都を出ましたが、なぜか辺境都市を立て直し、王都より発展しています。  作者: はねださら


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第39話 決めない仕組み

 六件に増えた分散案件は、七日目を過ぎても致命傷を出さなかった。


 小さな混乱。

 小さな修正。

 小さな合意。


 王都はまだ揺れている。


 だが、止まってはいない。


 会議室に集まった部局長たちの表情は、以前よりも険しさが減っていた。


「本題に入ります」


 エリアナが立つ。


「七日間で分かったことは三つ」


 指を一本立てる。


「失敗は起きる」


 二本目。


「回復は可能」


 三本目。


「責任は消えない」


 視線が一斉に向く。


「では、次に必要なのは」


 静かに言う。


「“決めない仕組み”です」


 ざわめきが走る。


「決めない?」


 補給局長が眉をひそめる。


「王都は決めることで動いてきました」


「ええ」


「だからこそ、止まっています」


 否定ではない。

 構造の指摘だ。


「すべてを最適に決めようとするから、決まらない」


 エリアナは、机上に一枚の図を置く。


 中央に大きな円。

 そこから放射状に伸びる線。


「今の王都は、最終円にすべてが集まる設計です」


 線が太すぎる。


「これを、細くする」


 別の紙を出す。


 円がいくつかに分かれ、緩やかにつながる図。


「暫定権限の常設化」


 セドリックが、低く繰り返す。


「はい」


「期限付きの一次決裁を制度化します」


 部局内で完結する案件を定義する。

 調整局は“後追い確認”に回る。


「暴走したら?」


「止める権限は残します」


「止めなければ?」


「学習します」


 王都は、学習を中央に集約してきた。


 だが、学習は分散した方が速い。


「これは、改革です」


 警備局長が言う。


「革命ではありません」


 エリアナは即答する。


「王都の枠内で可能です」


 沈黙。


 セドリックが、ゆっくり口を開く。


「暫定権限の範囲は?」


「六件の案件で試験運用」


「期間は?」


「二十日」


「評価基準は?」


「停止時間、修正回数、住民苦情件数」


 即答。


 準備は済んでいる。


 セドリックは、静かに机を叩いた。


「……決めない仕組み、か」


「最終決定を減らすだけです」


 エリアナは続ける。


「王都は“正しい決定”を求めすぎています」


「それが中央の責務だ」


「ええ」


「ですが、完璧な決定は存在しません」


 その言葉に、誰も反論しない。


「暫定で動き、修正する」


「それを制度化する」


 部屋は、重い。


 だが、拒絶ではない。


 王太子が、会議室に入ってくる。


「聞かせてもらった」


 全員が立つ。


「殿下」


「決めない仕組みを入れる、と?」


「はい」


 エリアナは、姿勢を崩さない。


「王都は強い」


 王太子は言う。


「だが、重い」


 視線が交わる。


「軽くするには、手放す必要がある」


「はい」


 短い沈黙。


「……導入しよう」


 ざわめきが広がる。


「二十日間の試験運用」


「結果は公開する」


 それは、王都の覚悟だった。


 セドリックは、静かに息を吐いた。


「私が責任を持つ」


「違います」


 エリアナは首を振る。


「王都が持つのです」


 個人ではなく、構造。


 それがこの三十日の目的。


 会議が終わり、廊下に出る。


「あなたは」


 セドリックが隣に並ぶ。


「中央を壊しているのではない」


「ええ」


「中央を、信じているのですね」


 エリアナは少しだけ考えた。


「信じているのではありません」


「では?」


「変われるなら、残る価値があると思っているだけです」


 窓の外、王都の灯りが揺れる。


 決めない仕組みが、静かに組み込まれようとしている。


 それは、王都にとって初めての試みだった。


 止まらないために、

 すべてを決めない。


 王都は、今、ほんの少しだけ軽くなった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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