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婚約破棄されたので王都を出ましたが、なぜか辺境都市を立て直し、王都より発展しています。  作者: はねださら


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第34話 戻らない前提

 三日目の朝。


 エリアナは、執務室の机に白紙を広げた。


 王都への返答。


 だがそれは、復帰の可否を問う書ではない。


 条件提示だ。


 窓の外では、リュネアがいつも通りに動いている。

 荷は流れ、兵は巡回し、人々はそれぞれの判断をしている。


 ――戻る必要はない。


 その確認は、もう済んでいる。


 筆を取る。


 一、滞在は三十日を上限とする。

 一、正式な官位復帰は行わない。

 一、助言は構造設計に限り、個別決裁には関与しない。

 一、最終判断は王都側が負う。

 一、名を前面に出さない。


 書き終えてから、もう一行だけ付け加えた。


 ――依存構造の再生産には協力しない。


 静かな拒絶だった。


 昼前、使者を呼ぶ。


「これを」


 封を渡す。


 使者は中身を確認しない。


「復帰はなさらない、と?」


「しません」


 即答だった。


「助言のみです」


「三十日で足りますか」


「足りなければ、足りないことが問題です」


 使者は、言葉に詰まる。


 エリアナは続ける。


「私は解決者ではありません」


「設計者です」


 違いは、決定的だった。


 使者が去ったあと、ガイウスが椅子にもたれて言う。


「随分と厳しいな」


「甘くすると、戻されます」


「戻る気は?」


「ありません」


 迷いはない。


 だが、感情がゼロというわけでもない。


「王都が変わる可能性は?」


「あります」


「なら?」


「その可能性にだけ、協力します」


 ガイウスは、短く笑った。


「相変わらずだ」


「それしか、できません」


 午後、城門の上から街を眺める。


 ロルフが隣に立つ。


「条件は出したか」


「はい」


「戻らない、と書いたな」


「はい」


 ロルフは、しばらく黙ってから言う。


「……それでいい」


 それ以上は言わない。


 夕方、商人会にも簡潔に伝える。


「三十日、王都へ行く可能性があります」


「可能性、か」


 バルドが確認する。


「受諾されれば」


「受諾されるだろう」


「でしょうね」


 だが、動揺はない。


「三十日なら、回る」


「回します」


 それが答えだ。


 夜。


 エリアナは、記録帳に書く。


 ――《条件提示。復帰なし》


 王妃にはなれなかった。


 だが今、自分は“戻らない前提で呼ばれる側”にいる。


 立場は、完全に入れ替わった。


 三日後。


 王都が、この条件を呑むかどうか。


 試されるのは、中央の方だった。

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