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王妃にはなれませんでしたが、婚約破棄後に街を立て直したら評価が逆転しました  作者: はねださら


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第21話 支える側に立つ

 三日後。


 南区の通行制限が敷かれてから、ちょうど約束の期限だった。


 広場には、前回よりも多くの人が集まっていた。

 商人、住民、兵士――顔ぶれは同じだが、空気は違う。


 騒がしさはなく、代わりに待つ静けさがあった。


 ロルフは、前に立つ。


 兜は外し、武器も持たない。

 ただ、兵士長としてそこにいた。


「……約束どおり、報告する」


 声は低く、だが通った。


「この三日間、南区での盗難・暴力はゼロだ」


 小さなどよめき。


「巡回の増強が効いた」


 数字を示し、簡潔に事実だけを述べる。


「だが」


 ロルフは、少し間を置いた。


「通行制限による損失も、把握している」


 商人たちが、息を詰める。


「全体で、この程度だ」


 具体的な数値が出る。


 隠さない。

 誤魔化さない。


「このまま制限を続ければ、治安は保てる」


「だが、商いは削れる」


 ロルフは、はっきり言った。


「だから、判断を街に返す」


 一瞬、ざわめきが起きる。


「俺は、治安の責任者だ」


「だが、この街は、俺のものじゃない」


 その言葉に、空気が変わった。


「今夜で、制限は解除する」


 驚きの声。


「ただし」


 ロルフは、続ける。


「夜間の搬入については、商人会と兵で新しい手順を作る」


「危険が出れば、即座に再判断する」


 誰かが、手を挙げた。


「それで、また制限するのか」


「する」


 即答だった。


「その時は、理由と期限を先に示す」


 沈黙。


 それは、妥協ではない。

 約束だった。


 バルドが、一歩前に出る。


「商人会として、提案がある」


 彼は、周囲を見渡す。


「夜間搬入の一部を、共同でまとめる」


「個別に動くから、狙われる」


 商人たちが、顔を見合わせる。


「費用は、俺たちで割る」


 短い沈黙のあと、誰かが頷いた。


「……それなら、いける」


「無理ではない」


 合意が、静かに広がる。


 ロルフは、それを見ていた。


 自分が決めたわけではない。

 だが、判断は前に進んでいる。


 広場の端で、エリアナはその光景を眺めていた。


 呼ばれない。

 求められない。


 ――それで、いい。


「兵士長」


 年配の住民が、声をかけた。


「最初は、不満だった」


 正直な言葉だ。


「だが、こうして話してくれるなら、分かる」


「次も、ちゃんと説明してくれ」


 ロルフは、深く頷いた。


「約束する」


 その瞬間だった。


 誰かが、拍手をした。


 一人、また一人。


 大きな歓声ではない。

 だが、確かな支持だった。


 ロルフは、少しだけ目を伏せた。


 ――支えられている。


 それを、初めて実感した。


 集まりが解散した後、ロルフはエリアナの姿を見つけた。


「……聞いてたな」


「はい」


「何か言うことは?」


「ありません」


 エリアナは、穏やかに答える。


「今日の判断は、街のものでした」


 ロルフは、鼻で笑った。


「俺が決めたと思ってたがな」


「最初は」


「今は?」


「共有されました」


 ロルフは、しばらく黙ってから言った。


「……悪くないな」


「はい」


 それだけで、十分だった。


 夜。


 エリアナは、記録に一行だけ書き加えた。


 ――《判断:共有化。支持発生》


 それは、街が一段階進んだ証だった。


 王妃にはなれなかった。

 だが今、自分は“支えられる側を育てる役”になっている。


 前に立たなくても、

 街は、ちゃんと立っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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