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王妃にはなれませんでしたが、婚約破棄後に街を立て直したら評価が逆転しました  作者: 花守いとは


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第15話 失敗しても、止まらない

 結果が届いたのは、三日後だった。


 交渉団が城に戻ったのは、昼を少し過ぎた頃。先頭に立つ商人の顔色は、決して明るくない。


「……うまくはいかなかったか」


 ガイウスの問いに、バルドが小さく頷いた。


「譲歩案は受け取られたが、制限の解除までは至らなかった」


 ロルフが、腕を組んだまま言う。


「つまり、失敗だな」


「完全な失敗ではない」


 バルドは言い返す。


「向こうも譲らないが、こちらの立場は理解した。だが――」


「時間稼ぎ、か」


「そうなる」


 執務室の空気が、少し重くなった。


 街道は完全に止まってはいない。

 だが、流通は確実に鈍っている。


「損失は?」


 ガイウスが問う。


「短期的には、出る」


 商人の一人が答えた。


「在庫調整で持ちこたえられるが、長引けば厳しい」


 エリアナは、そのやり取りを黙って聞いていた。


 誰も、彼女を見ない。

 誰も、助言を求めない。


 ――それでいい。


「……判断を誤ったか」


 誰かが、ぽつりと呟いた。


「いや」


 ロルフが、低い声で否定する。


「判断は、妥当だった。結果が悪かっただけだ」


 その言葉に、何人かが顔を上げた。


「違いが、分かってきたな」


 ガイウスが、静かに言う。


「判断が間違っていたのか、状況が悪かったのか」


 沈黙。


 それは、王宮ではあまり語られない区別だった。


 エリアナは、ようやく口を開いた。


「致命的ではありません」


 短い言葉だった。


 全員の視線が集まる。


「備蓄はあります。迂回路も、完全には止まっていない」


「だが……」


「失敗は、計画に織り込めます」


 淡々とした声だった。


「問題は、次にどう動くかです」


 誰も、反論しなかった。


 会議は、短時間で終わった。

 追加の対策を決め、各自が動き出す。


 エリアナは、執務室を出て、街を歩いた。


 市場は、少し静かだった。

 だが、閉まっている店はない。


「今日は、品が少ないね」


 ミーナが言う。


「そうね」


「でも、明日は?」


「どうなるかは、まだ分からない」


 ミーナは、少し考えてから言った。


「じゃあ、明日考えればいいね」


 エリアナは、その言葉に足を止めた。


 ――それで、いいのだ。


 完璧な計画など、存在しない。

 重要なのは、修正できること。


 夕方、ロルフが報告に来た。


「兵の巡回を増やした。流通が鈍ると、どうしても揉め事が起きやすい」


「判断は?」


「俺だ」


 迷いのない声だった。


「……問題は?」


「今のところはない」


 エリアナは、静かに頷いた。


「ありがとうございます」


「礼はいらん」


 ロルフは、少しだけ言葉を足す。


「……俺たちの判断で、街が困るかもしれない。それでも」


「それでも、判断しますか」


「する」


 それは、覚悟だった。


 夜。


 執務室で、ガイウスが言った。


「失敗したな」


「はい」


「だが、壊れてはいない」


「はい」


 二人は、しばらく黙っていた。


「……前なら」


 ガイウスが続ける。


「この程度の失敗で、誰かを責めていた」


「そうでしょうね」


「今は、違う」


 それが、何よりの成果だった。


 エリアナは、机の上の記録に目を落とす。


 赤字で、小さく書き加えた。


 ――《今回の判断:妥当。結果:部分失敗。次回修正》


 それだけだ。


 王妃にはなれなかった。

 だが今、自分は“失敗を許す場所”にいる。


 失敗しても、止まらない。

 それが、この街の強さになり始めている。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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