Ⅰ 1-5
等と考えていたら、玄関の方で何かが動いた。籐で編まれた物っぽかった。貴教の自宅程天井が高い家でなければ、それは引っかかってそもそも入ってこれなかっただろう。其の位の大きさはある。それが肩に担がれて(いるらしい)、ひょこひょことこちらに向かって接近してくる。其の時、貴教の頭に浮かんでいたのは、DI〇に決然として立ち向かう姿勢を示したポル〇レフであった。
階段の上と下で久しぶりに相対したDI〇とポル〇レフの場面――【自身を討つ為にジ〇ースター一行として此処迄やって来たポル〇レフに対し、DI〇は彼なりの人生論を一通り語った後、「ひとつチャンスをやろう。その階段を二段おりろ。再び私の仲間にしてやろう。逆に死にたければ………………。足を上げて階段を登れ」。此れに対してポル〇レフは、確かに一歩階段を登った筈だったのだが…。「そうかそうかポル〇レフ。フフフ。階段を降りたな。このDI〇の仲間になりたいというわけだな」】の場面を、貴教は想い浮かべていた。
『ジ〇ジョの奇妙な冒険』を知らぬ者が聞けば、「それって誰も何も運んでないじゃん」なのであるが、種明かしをしてしまうと、DI〇は自身の能力であるスタンド――ザ・ワ〇ルドを駆使して時間を停止させた上で、階段を上に登ったポル〇レフを寧ろ下に運んで下ろした次第である。ポル〇レフを運んだのはザ・ワ〇ルドであるという解釈が一般的なのではあるが、貴教の解釈は異なる。運んだのはDI〇様だと――彼の方本人様御自らが肩に担いで運んだのだと貴教は露程も疑っていない。「だって、近距離パワー型のザ・ワ〇ルドの射程距離が十メートルって、変じゃん。まるで、この場面を成立させる為だけの設定っぽいじゃん」。まあ、貴教の中では自らの手を患わせてでもこの位の事はやって見せる茶目っ気と遊び心の有るエンターテイナーこそがDI〇様(貴教には「ミュージシャンというものは、アーティストではあるのは勿論、目の前のオーディエンスを楽しませるエンターテイナーでなくてはならない」という信念がある為、エンターテイナーとはリスペクトすべきの対象なのである)なのであり、其れは左耳に三つのホクロを持つ者の定めであり、それでこそ、「そこにシビれる憧れる」なのである。若かりし日の貴教は特に其の想いが強かった。今は寧ろジョ〇サンに憧れているのではあるが。そして臍の横の父親と同じ位置にある、子供の頃は嫌で嫌でシャープペンシルでつついては如何にかして取ってやろうとした黒子も、今では誇らしい。




